冒険者ギルド品質管理部 ~生まれ変わっても品管だけは嫌だと言ったのに~

犬野純

文字の大きさ
131 / 439

第130話 ライセンス生産とOEM

しおりを挟む
「アルト、私と一緒にお父様の領地へ行ってほしいの」
「ちょっとコーヒー飲み終わるまで待ってもらえるかな」

 俺が冒険者ギルドの自分の席でコーヒーを飲んでいると、そこに焦った顔のオーリスがやってきた。
 お父様の領地というのは、旧フォルテ公爵領であり、現在のカイロン侯爵領のことだ。
 引き抜きにしては堂々とし過ぎているな。
 そんな話はコーヒーを飲むのよりも優先度が低い。

「さて、コーヒーも飲み終わったし話だけは聞いてもいいけど」
「実はここだけの話ですけど、隣国がお父様の領地に攻め込む気配を見せていますわ」
「どうして」

 俺の疑問はオーリスが説明してくれた。
 元々フォルテ公爵は国家に弓を引こうと軍備に力を入れていた。
 隣国のカジャールはまさかフォルテ公爵がクーデターを狙っているとは思わずに、自国に攻めてくる準備だと思って、それに対抗すべく軍備増強をはかっていたのである。
 ところが、フォルテ公爵の反乱がおこり、それが鎮圧されたことで、初めてその目的に気が付いたのだった。
 そして、暫くじっくりと観察していたところ、新しく侯爵が赴任して領地経営をすることになったようであるが、領軍の配備が遅れており、攻め込んで領土を奪う絶好の機会であると考えたのだ。
 それでも軍を動かすというのは直ぐにできるようなものではなく、傭兵の募集や物資をかき集めるといった行動をこちらから送り込んだ草が察知し、本国に情報をもたらしてきたと。

「それで、なんで俺が呼ばれるんだ?」
「お父様の参謀であるオッティが、アルトを呼ぶように言ったそうですわ」
「あいつめ」

 はっきりいて戦争なんて俺の出番はないだろう。
 品質管理が必要になってくる戦争なんて、もっと時代が進んでからじゃないのか。
 国民総動員による大量生産の総力戦。
 遠方での兵器の部品の調達のための共通規格の整備。
 ライセンス生産による物資の調達が可能になってこそ、戦闘が継続できるというものだ。
 つまり、戦国時代に自衛隊がタイムスリップしても、イージス艦が第二次世界大戦の真っただ中にタイムスリップしても、補給ができないから結局は勝てないっていうことだ。
 ライセンス生産っていうのはライセンス料、ロイヤリティを支払って製造させてもらうことだ。
 これなら一つの工場が爆撃されて破壊されても、別の工場で同じものを生産することができる。
 破壊されなくても、需要が旺盛な場合、それに応えるためのライン増設をしなくてすむ。
 ダイハツのハイゼットは、イタリアや韓国でライセンス生産されてた。

 それに対して、同じものを生産するのではなく、一つの会社で生産したものを、別の会社の名前で販売するのがOEMだ。
 original equipment manufacturerの略で、読み方は「おーいーえむ」である。
 水島のこちらの名前でもあるオッティは日産の名前であり、製造元の三菱自動車ではekワゴンであった。
 また、日産のセレナはスズキにOEM供給されランディとして販売されている。

 話を元に戻すと、ライセンス生産が必要ならば、俺の品質管理のジョブは有効だろう。
 だが、剣も槍も盾も規格の特に決まっていないこの時代で、品質管理をする必要なんてないだろう。
 三八式歩兵中みたいに、同じ銃なのに弾によっては撃てたり撃てなかったりというのはないぞ。
 相手にダメージを与えられたらそれでいいんだから。
 ファランクスにはある程度同じ長さの槍が必要なのかもしれないが、そんなもんの公差なんて有って無いようなもんだ。
 CIWSのM61とかだったら俺の出番かもしれないけどな。
 MIL規格とか暫く見てないから、うろ覚えなんだけどさ。
 MIL規格っていうのはアメリカ軍の規格のことね。
 って、また話がそれているか。
 とにかく、俺が行ったところで、この時代では武器の優劣なんて殆どないから役に立たないぞ。

「お願い、お父様を助けて。このままじゃ国軍の準備が整うまでに、敵国の侵略を受けて殺されてしまいますわ」

 涙目のオーリスに見つめられると断りにくい。
 オッティとグレイスのことも気になるし、一度顔を出してみるくらいならいいか。

「わかった。侯爵領にすぐに向かおう」

 俺はギルド長に訳を話して長期休暇をもらった。
 今回ばかりはシルビアを巻き込むわけにはいかないので、俺とオーリスだけで侯爵領に向かう。
 まあ、オーリスには当然使用人とか護衛がつくんだけどさ。
 馬車に同乗させてもらったが、サスペンションがないのでお尻がいたい。
 あとで板バネをプレゼントしてあげよう。

 カイロン侯爵領の領都へは予定通り到着。
 領都は戦争に備えて騒然としているかと思ったが、見た限りではそうでもない。
 そのまま居城へと入り、直ぐに謁見となった。
 カイロン侯爵、オッティ、グレイスと揃っており、そこに俺とオーリスが加わる。

「よく来てくれた」
「オーリスに泣かれましたので」

 カイロン侯爵は疲れ切った顔で俺に礼を言う。
 心底疲れているんだろうな。
 泣いた事を俺が言ったら、オーリスに足を踏まれた。
 安全靴だから痛くないけど。
 みんなも履こう安全靴。
 安全靴っていうのは、靴の中に鉄板とか強化樹脂が入っていて、靴の上に物を落としても怪我をしない靴のことだ。
 会社によっては着用が義務付けられている。

「では状況の説明をお願い致します」

 俺の一言から作戦会議が始まった。
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

爺さんの異世界建国記 〜荒廃した異世界を農業で立て直していきます。いきなりの土作りはうまくいかない。

秋田ノ介
ファンタジー
  88歳の爺さんが、異世界に転生して農業の知識を駆使して建国をする話。  異世界では、戦乱が絶えず、土地が荒廃し、人心は乱れ、国家が崩壊している。そんな世界を司る女神から、世界を救うように懇願される。爺は、耳が遠いせいで、村長になって村人が飢えないようにしてほしいと頼まれたと勘違いする。  その願いを叶えるために、農業で村人の飢えをなくすことを目標にして、生活していく。それが、次第に輪が広がり世界の人々に希望を与え始める。戦争で成人男性が極端に少ない世界で、13歳のロッシュという若者に転生した爺の周りには、ハーレムが出来上がっていく。徐々にその地に、流浪をしている者たちや様々な種族の者たちが様々な思惑で集まり、国家が出来上がっていく。  飢えを乗り越えた『村』は、王国から狙われることとなる。強大な軍事力を誇る王国に対して、ロッシュは知恵と知識、そして魔法や仲間たちと協力して、その脅威を乗り越えていくオリジナル戦記。  完結済み。全400話、150万字程度程度になります。元は他のサイトで掲載していたものを加筆修正して、掲載します。一日、少なくとも二話は更新します。  

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

転生社畜、転生先でも社畜ジョブ「書記」でブラック労働し、20年。前人未到のジョブレベルカンストからの大覚醒成り上がり!

nineyu
ファンタジー
 男は絶望していた。  使い潰され、いびられ、社畜生活に疲れ、気がつけば死に場所を求めて樹海を歩いていた。  しかし、樹海の先は異世界で、転生の影響か体も若返っていた!  リスタートと思い、自由に暮らしたいと思うも、手に入れていたスキルは前世の影響らしく、気がつけば変わらない社畜生活に、、  そんな不幸な男の転機はそこから20年。  累計四十年の社畜ジョブが、遂に覚醒する!!

転生幼女のチートな悠々自適生活〜伝統魔法を使い続けていたら気づけば賢者になっていた〜

犬社護
ファンタジー
ユミル(4歳)は気がついたら、崖下にある森の中に呆然と佇んでいた。 馬車が崖下に落下した影響で、前世の記憶を思い出したのだ。前世、日本伝統が子供の頃から大好きで、小中高大共に伝統に関わるクラブや学部に入り、卒業後はお世話になった大学教授の秘書となり、伝統のために毎日走り回っていたが、旅先の講演の合間、教授と2人で歩道を歩いていると、暴走車が突っ込んできたので、彼女は教授を助けるも、そのまま跳ね飛ばされてしまい、死を迎えてしまう。 享年は25歳。 周囲には散乱した荷物だけでなく、さっきまで会話していた家族が横たわっている。 25歳の精神だからこそ、これが何を意味しているのかに気づき、ショックを受ける。 大雨の中を泣き叫んでいる時、1体の小さな精霊カーバンクルが現れる。前世もふもふ好きだったユミルは、もふもふ精霊と会話することで悲しみも和らぎ、互いに打ち解けることに成功する。 精霊カーバンクルと仲良くなったことで、彼女は日本古来の伝統に関わる魔法を習得するのだが、チート魔法のせいで色々やらかしていく。まわりの精霊や街に住む平民や貴族達もそれに振り回されるものの、愛くるしく天真爛漫な彼女を見ることで、皆がほっこり心を癒されていく。 人々や精霊に愛されていくユミルは、伝統魔法で仲間たちと悠々自適な生活を目指します。

異世界でぼっち生活をしてたら幼女×2を拾ったので養うことにした【改稿版】

きたーの(旧名:せんせい)
ファンタジー
【毎週火木土更新】 自身のクラスが勇者召喚として呼ばれたのに乗り遅れてお亡くなりになってしまった主人公。 その瞬間を偶然にも神が見ていたことでほぼ不老不死に近い能力を貰い異世界へ! 約2万年の時を、ぼっちで過ごしていたある日、いつも通り森を闊歩していると2人の子供(幼女)に遭遇し、そこから主人公の物語が始まって行く……。 ――― 当作品は過去作品の改稿版です。情景描写等を厚くしております。 なお、投稿規約に基づき既存作品に関しては非公開としておりますためご理解のほどよろしくお願いいたします。

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

処理中です...