冒険者ギルド品質管理部 ~生まれ変わっても品管だけは嫌だと言ったのに~

犬野純

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第132話 ガバリ検査

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限度見本を作っても、見ただけでは判断が難しいことってありますよね。
本日そのため出た不具合の選別と対策を行っておりました。
投稿小説サイトはお前の日報じゃねーぞと言われそうですね。
それでは本編いってみましょう。

 久しぶりの出勤で溜まった仕事を片付けることにした。
 まず手始めに、スターレットの失敗からだな。
 というか、俺の失敗でもあるのだが。
 たまたま冒険者ギルドのロビーにいたスターレットに声をかける。

「アルト、帰ってきたんだ」
「暫く休んでいてごめんね。相談に来てくれていたのに」
「いいわ。ティーノの店一回分で許してあげる」

 ティーノの店で一回おごることになった。
 これからは休む時にペナルティーは受け付けませんと書いておかないとな。
 俺はカイロン伯爵と国から報奨金が出ているので、お金には困っていないから、早速スターレットと一緒にティーノの店に行くことになった。
 出勤していきなり食事というのも問題ありそうだが、これは仕事の一環だ。
 そう自分に言い聞かせる。
 ティーノの店につくと中は空いていた。
 朝食組が出ていき、昼食にはまだ早いから当然だな。

「いらっしゃい、ってアルトか」

 テーブルを片付けていたメガーヌが俺に気づいた。

「やあ。マヨネーズと醤油はどうだい?」
「評判いいわね。マヨネーズはうちでも作ることができるけど、醤油はアルトから仕入れるしかないから、一か月もいないと困るわよ」
「出発前に渡した分は?」
「全部使い切っちう寸前よ」
「じゃあ、今度また持ってくるよ」
「できれば作り方を教えてほしいんだけど」
「教えてもいいけど、作るのはかなり手間だよ」

 俺も面倒なのでゴーレムを使ってオートメーション化してある。
 いっそこのと会社を立ち上げて、社員に作らせようかな。

「っと、食事に来たんだった」
「じゃあ、決まったら呼んでね」
「うん」

 スターレットと一緒にメニューを見ながら何を食べようか考える。

「仔牛のステーキがいいわ」
「じゃあ俺もそれにする」

 注文が決まり、メガーヌに伝えたところで、本来の目的である相談開始だ。

「で、相談って?」
「ああ、前に刃こぼれの限度見本作ってもらったじゃない。あれを見てデボネアに研磨をお願いしたんだけど、『まだ早い』って怒られちゃったのよね。私が見ると限度見本と同じくらいだと思ったんだけど、デボネアはまだだって」
「見ただけじゃわからなかったのか。ソードは刃こぼれしたまま残っている?」
「いいえ。その後冒険で使ってさらに刃こぼれしたから、研磨に出してしまったの。もう少し早く帰ってきてくれたらその状態を見せてあげられたんだけど」
「それなら仕方ないか」

 できれば現物があるほうがよかったのだが、無いのであれば仕方がない。
 刃こぼれの状態を誤判定した原因を推定すると、デボネアが間違った可能性は低いだろう。
 なにせスターレットとデボネアでは刃こぼれを見てきた年季が違う。
 それに、目視による判断というのは保証度が低い。
 スターレットが誤判定した確率のほうがはるかに高いのだ。
 限度見本を用意しておいて、それ以上を求めなかった俺にも問題があるな。
 もっとわかりやすい検査治具を作ろう。

「お待ちどうさま」

 考えがまとまったところで丁度ステーキが来た。

「これが今ステラの肉食女子の間で大人気なのよね」
「肉食女子?」

 スターレットの肉食女子っていうのはそのままの意味なんだろうな。
 ステーキは美味しかったです。
 ここでは検査治具を作ることができないので、食べ終わったら冒険者ギルドに帰った。
 そして、限度見本の前にいる。

「これからガバリを作ります」
「ガバリ?」

 聞きなれない単語にスターレットが聞き返してきた。
 検査治具っていってね、まあ見ればわかるよ。
 俺はまず刃こぼれの限度見本を測定する。
 そしてその刃こぼれの大きさを反転したガバリを作成した。
 今回作成したガバリは薄いステンレスの板に刃こぼれを反転した突起をつけたものだ。
 ガバリというのは治具の一種である。
 検査治具として使用したり、加工治具として位置決めなどに使用したりする。
 試作時には、検査用のガバリも製品と一緒に納品して、客先で立会検査をしたこともあった。
 製品は自動車の座席だ。
 座席の膨らみを確認するのに、座席の形状を反転させたABS樹脂の板を用意し、検査治具の上に座席を置いて、そこにガバリを当てていくのだ。
 三次元測定ができない場合は、こうした検査方法になるのだ。
 で、今回はというと、刃こぼれの限度と同じ大きさの突起があるガバリを、自分のソードの刃こぼれに当てて、刃こぼれがガバリに対して大きいか小さいかを確認するようにした。
 刃こぼれの奥までガバリが入ってしまうのであれば、それは研磨の必要があるということだ。
 こうすれば見た目よりも正確な判断ができる。
 摩耗に注意する必要があるのは一緒だけどな。

「こいつを限度見本と一緒においておくよ」
「ガバリだけあれば十分じゃないの?」
「いや、このガバリを限度見本に当てて、刃こぼれの確認の訓練をしないとだめだよ。当て方が悪ければ誤判定するからね」
「言われてみれば。斜めに当てればどんなに刃こぼれしていても、奥まで入ることはないわね」

 ガバリを色々な姿勢で限度見本に当てながら、スターレットがそういう。
 そこまでわかっていれば十分だな。
 今後誤判定をすることもないだろう。

「このガバリって他にもチェックできるものはあるの?」
「あー、例えば肉を食い過ぎて太ったときに、鎧が着られなくなるかどうか、ウェストに当ててみるとかかな」
「それはいらないわ」
「何で?」
「美味しいものを食べるのに、そんな無粋なことは考えないの。見れば太ったかどうかなんてわかるわ」
「はい……」

 いや、だから目視じゃダメだって……
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