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第181話 別工場
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本日は短期の出向という形で他のギルドから職員を迎える日であった。
この国の冒険者ギルドはフランチャイズなので、転勤ということはない。
稀に、本部に引き抜かれることはあるようだが。
そんなわけで、あまり他の冒険者ギルドとの交流がないので、こうして偶に他の冒険者ギルドに出向して、そこのやり方を学ぶという事があるようだ。
「来たようね」
俺の所にいて、油を売っているシルビアが、トミーカイラ副部長と一緒に室内に入ってきた男を指す。
俺もそちらに目線を移す。
あ、トミーカイラは副部長じゃないのだが、俺の中ではそう呼んでいる。
男は20歳くらいだろうか。
結構若く見える。
だが、わざわざ他の冒険者ギルドに出向させられて、そこでのノウハウを吸収させるのが目的なので、無能であるはずがない。
あの若さでその役を任されるのだから優秀なのだろう。
などと思っていたら、トミーカイラ副部長がこちらにやってきた。
「アルト、こちらはメキシコにある冒険者ギルドから来たターセルだ」
副部長から紹介されたのだが、その街の名前はちょっとびっくりだ。
なんとなく、サボテンとテキーラ、それにポンチョをイメージしてしまう。
勿論全く違うのだろうけど。
「はじめまして、この冒険者ギルドで相談係をしているアルトです」
「ターセルです」
そう言って握手をした。
「彼にここを案内させるよ」
副部長はそう言って、俺を指名する。
初耳なんですけど!
そういうのは前もって言っておいて欲しいぞ。
営業が対応するはずだった来客を、いきなりこちらに投げられた時の気分だ。
暇なので引き受けるけど。
俺が首肯すると、副部長は立ち去っていった。
シルビアも暇なので一緒に案内をするそうだ。
「まず、相談窓口というのは何ですか?メキシコの冒険者ギルドにはこういう部署がないのですが」
「えっとですね、俺のジョブが品質管理っていうものでして、これはミスを未然に防止することや、やってしまったミスを再発させないことを目的としています。なので、冒険者の人たちの困っている事や、失敗の相談に乗って対策を立てているんですよ」
なぜなぜ分析やFTA、それにパレート図などの手法を簡単に説明する。
全部だと彼の出向している間、ずっと品質管理の話になってしまうので、本当に手短であったので、どこまで理解してもらえたのかわからない。
「新しい道具が時々こちらにも流れてくるのはこの部署が原因だったんですね」
ターセルは感心してくれた。
採取したものを数える治具やスタンフラッシュは、他の冒険者ギルドでも販売しているようだ。
便利だし、金額もそんなにしないので、冒険者なら買うだろうな。
相談窓口の説明が終わったので、次は受付カウンターを案内する。
「こちらが受付カウンターです」
「受付カウンター?」
ターセルは鸚鵡返ししてきた。
しかも不思議そうな顔で。
何か不満でもあるのかな?
「ええ。こちらでクエストの受付や結果の報告を受けています」
「ああ、うちの報告カウンターのことか」
「そちらでは報告カウンターというのですね」
「ええ。だって、受付といってしまったら、それは受付業務しかできないでしょう。報告カウンターならば、どのクエストを受けるのか報告でもいいし、クエストの結果の報告でもいいでしょう」
成程と思ってしまった。
異世界の冒険者ギルドは美人の受付嬢がいると思っていたが、受付という名前である必要性はないのか。
感心している俺とは対称的に、シルビアは不機嫌だった。
「報告を受け付けるから受付でいいんじゃない」
言い方に棘があるな。
自分達のやり方にケチをつけられたと思って機嫌が悪いのだろう。
前にもどこかでこんなことあったな。
どこだったろう?
俺は既視感があった。
そうか、前世で別工場から交流目的でやってきた奴を案内したときだった。
相手も日本国内の工場だったのだが、距離が遠いため普段は全く情報が来ない。
そして、取引先も全く別なので、監査を受けたときの取引先が使う単語も別なのだ。
例をあげるなら量産品を号口とSOPという別々の呼び方で管理文書に落とし込みしていることがあった。
同じ企業なのに、管理方法が独自の発展を遂げていたんだよな。
勿論、ISOの監査で何度も指摘を受けましたよ。
それと同じだ。
しかも、ここでは通信手段が手紙くらいなので、フランチャイズの冒険者ギルドは、地元の冒険者からの要求で独自の発展をしても、それをリアルタイムで水平展開できない。
必要は発明の母というが、冒険者は地元だけで冒険をするわけではないので、カウンターの名前が違うと戸惑うだろうな。
俺の相談窓口ってのも、他所から来た冒険者にはなじみがないので、初めて見ると何だろうと思うだろう。
シルビアがいると喧嘩になりそうなので、今回は俺だけで案内することにした。
クエストの貼りだされる掲示板を見せて、混雑対策を見てもらった。
受付カウンターの混雑対策と併せて、彼の冒険者ギルドでも取り入れてみたいという。
そして次に向かったのは食堂だ。
「こちらが食堂になります」
「ああ、ギルメシね」
「ギルメシ?」
今度は俺が鸚鵡返しに訊いた。
「ギルドのメシ場でギルメシ。言わない?」
「言わない」
どうやらメキシコの冒険者ギルドはステラとはかなり違う言葉で溢れているようだな。
前世を思い出したらお腹が痛くなってきた。
※作者の独り言
他社に電話するときに、工場が違うと「品質管理課」「品質保証課」「検査課」など呼び方が変わるのは何とかしてほしいですね。
向こうも慣れているので、普通に取次ぎしてくれますが。
品質管理課と品質保証課で役割が違うならまだいいのですが、同じ業務だったりするともう意味が分かりません。
ついでに言うと、検査課といいながら検査以外も仕事になっているのはどうかと思います。
いや、別にいいんですけどね……
この国の冒険者ギルドはフランチャイズなので、転勤ということはない。
稀に、本部に引き抜かれることはあるようだが。
そんなわけで、あまり他の冒険者ギルドとの交流がないので、こうして偶に他の冒険者ギルドに出向して、そこのやり方を学ぶという事があるようだ。
「来たようね」
俺の所にいて、油を売っているシルビアが、トミーカイラ副部長と一緒に室内に入ってきた男を指す。
俺もそちらに目線を移す。
あ、トミーカイラは副部長じゃないのだが、俺の中ではそう呼んでいる。
男は20歳くらいだろうか。
結構若く見える。
だが、わざわざ他の冒険者ギルドに出向させられて、そこでのノウハウを吸収させるのが目的なので、無能であるはずがない。
あの若さでその役を任されるのだから優秀なのだろう。
などと思っていたら、トミーカイラ副部長がこちらにやってきた。
「アルト、こちらはメキシコにある冒険者ギルドから来たターセルだ」
副部長から紹介されたのだが、その街の名前はちょっとびっくりだ。
なんとなく、サボテンとテキーラ、それにポンチョをイメージしてしまう。
勿論全く違うのだろうけど。
「はじめまして、この冒険者ギルドで相談係をしているアルトです」
「ターセルです」
そう言って握手をした。
「彼にここを案内させるよ」
副部長はそう言って、俺を指名する。
初耳なんですけど!
そういうのは前もって言っておいて欲しいぞ。
営業が対応するはずだった来客を、いきなりこちらに投げられた時の気分だ。
暇なので引き受けるけど。
俺が首肯すると、副部長は立ち去っていった。
シルビアも暇なので一緒に案内をするそうだ。
「まず、相談窓口というのは何ですか?メキシコの冒険者ギルドにはこういう部署がないのですが」
「えっとですね、俺のジョブが品質管理っていうものでして、これはミスを未然に防止することや、やってしまったミスを再発させないことを目的としています。なので、冒険者の人たちの困っている事や、失敗の相談に乗って対策を立てているんですよ」
なぜなぜ分析やFTA、それにパレート図などの手法を簡単に説明する。
全部だと彼の出向している間、ずっと品質管理の話になってしまうので、本当に手短であったので、どこまで理解してもらえたのかわからない。
「新しい道具が時々こちらにも流れてくるのはこの部署が原因だったんですね」
ターセルは感心してくれた。
採取したものを数える治具やスタンフラッシュは、他の冒険者ギルドでも販売しているようだ。
便利だし、金額もそんなにしないので、冒険者なら買うだろうな。
相談窓口の説明が終わったので、次は受付カウンターを案内する。
「こちらが受付カウンターです」
「受付カウンター?」
ターセルは鸚鵡返ししてきた。
しかも不思議そうな顔で。
何か不満でもあるのかな?
「ええ。こちらでクエストの受付や結果の報告を受けています」
「ああ、うちの報告カウンターのことか」
「そちらでは報告カウンターというのですね」
「ええ。だって、受付といってしまったら、それは受付業務しかできないでしょう。報告カウンターならば、どのクエストを受けるのか報告でもいいし、クエストの結果の報告でもいいでしょう」
成程と思ってしまった。
異世界の冒険者ギルドは美人の受付嬢がいると思っていたが、受付という名前である必要性はないのか。
感心している俺とは対称的に、シルビアは不機嫌だった。
「報告を受け付けるから受付でいいんじゃない」
言い方に棘があるな。
自分達のやり方にケチをつけられたと思って機嫌が悪いのだろう。
前にもどこかでこんなことあったな。
どこだったろう?
俺は既視感があった。
そうか、前世で別工場から交流目的でやってきた奴を案内したときだった。
相手も日本国内の工場だったのだが、距離が遠いため普段は全く情報が来ない。
そして、取引先も全く別なので、監査を受けたときの取引先が使う単語も別なのだ。
例をあげるなら量産品を号口とSOPという別々の呼び方で管理文書に落とし込みしていることがあった。
同じ企業なのに、管理方法が独自の発展を遂げていたんだよな。
勿論、ISOの監査で何度も指摘を受けましたよ。
それと同じだ。
しかも、ここでは通信手段が手紙くらいなので、フランチャイズの冒険者ギルドは、地元の冒険者からの要求で独自の発展をしても、それをリアルタイムで水平展開できない。
必要は発明の母というが、冒険者は地元だけで冒険をするわけではないので、カウンターの名前が違うと戸惑うだろうな。
俺の相談窓口ってのも、他所から来た冒険者にはなじみがないので、初めて見ると何だろうと思うだろう。
シルビアがいると喧嘩になりそうなので、今回は俺だけで案内することにした。
クエストの貼りだされる掲示板を見せて、混雑対策を見てもらった。
受付カウンターの混雑対策と併せて、彼の冒険者ギルドでも取り入れてみたいという。
そして次に向かったのは食堂だ。
「こちらが食堂になります」
「ああ、ギルメシね」
「ギルメシ?」
今度は俺が鸚鵡返しに訊いた。
「ギルドのメシ場でギルメシ。言わない?」
「言わない」
どうやらメキシコの冒険者ギルドはステラとはかなり違う言葉で溢れているようだな。
前世を思い出したらお腹が痛くなってきた。
※作者の独り言
他社に電話するときに、工場が違うと「品質管理課」「品質保証課」「検査課」など呼び方が変わるのは何とかしてほしいですね。
向こうも慣れているので、普通に取次ぎしてくれますが。
品質管理課と品質保証課で役割が違うならまだいいのですが、同じ業務だったりするともう意味が分かりません。
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いや、別にいいんですけどね……
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