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第186話 増える数字となんとか団
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「エレメントは地水火風で四大エレメントとされていましたが、10年前に光と闇が追加されました。そして、今回は金属を入れるべきかと云う事を議論します」
そんな会議に俺は呼ばれていた。
王都にある賢者の学院で行われているエレメント会議(仮称)には他の冒険者ギルドからの参加者と、学院側の関係者が出席していた。
なので、人数はかなりの数になる。
発言するのは殆んどが賢者の学院の学者で、増やすことに賛成派、反対派の双方が譲らず、会議は膠着状態に陥っていた。
そこになぜかオッティも賢者の学院側の関係者として参加している。
席は俺の隣だ。
俺は前世を思い出して、オッティに話しかける。
「四大エレメントが六大エレメントになって、今度は七大エレメントか。5Sを思い出すな」
「最初は3Sだったのに、いつの間にか7Sになっていたな。それに、4Mもいつの間にか5M1Eに増えていた」
オッティもISOやTSの監査を受けた経験があるので、その変遷は知っている。
3Sとは整理・整頓・清掃のことだ。
頭文字のSからそう呼ばれている。
5Sはそれに清潔・躾が加わる。
7Sになると、作法・安全が加わる。
安全はセイフティーのSだ。
こじつけにも程がある。
食品会社だと、洗浄・殺菌になるんだとか。
そんな感じで、時代と共にやることが増えていく。
やっと3Sが定着したというのに、世間はもう7Sだと云うのだ。
更に、4M変化点管理についても、今は5M1Eになっている。
人・材料・機械・方法に加えて、測定と環境が入ってきた。
環境の変化は温度や湿度、天候などだと云うのだが、そんなもん毎日変わるので、それを全て納入メーカーに三ヶ月前に報告となると、気象予報士が必要になるぞ。
「環境って云えば、修羅の国工場の隣にあった、特定危険なんとか団の構成員の住居が無くなって、不良が増えたんだよな」
オッティはニヤついた顔をする。
「あー、午後六時以降に工場を稼働すると因縁をつけられるから自粛していたけど、そいつが逮捕されて、家が撤去されたときの事か。あれって、夜勤出来るようになったから、新人作業者大量に雇ったら、不具合が一気に増えたんだよな。環境の変化じゃなくて、人の変化だろ」
そう答える俺は、当時を思い出して渋い顔をする。
「人の変化の裏には環境の変化があるんだろ。メーカーには報告できないけど」
「だから対策書が大変だったんだよ。品管の担当が泣いていたぞ。なぜなぜ分析していくと、犯罪組織の構成員が近所にいないか確認するって対策が必要になるとか言ってて」
それが真因かと言われると微妙だが、一因ではあるよな。
「そういえば、あの会社の『取引先のための品質マニュアル』は5M1Eの説明間違っていたよな」
ふと、オッティが外部文章の話をした。
残念ながら、俺はそれだけでは思い出せなかったのだが、オッティが詳しく説明してくれたので思い出した。
残念ながら、詳しくはお伝えできないが、ヒントだけ書いておく。
「それは環境の変化ではなく、設備の変化だ」
かなり大きな会社なのだが、何故か5M1Eの説明が俺でもわかるくらいに間違っていた。
次の見直しで、改定されると思う。
「そうだ、定期的な見直しが必要なんだよ」
オッティとの会話が、今回の会議にも繋がった。
俺は挙手して発言をした。
エレメントの定義をした規格を定めて、定期的に見直しをすればいいのだ。
7大エレメントが増えるかもしれないし、減るかもしれない。
だが、それは時代の要求だ。
増えると、実務担当者は大変になるが、それも仕方がない。
その提案に、反対派も見直しの時までに、研究論文を用意すればいいかと納得してくれた。
「今回の決定により、エレメントは陰陽木火土金水になったか」
五行思想の完成だな。
今後は四元素説の学者と揉めるのが目に見えているぞ。
※作者の独り言
就職した会社が実はフロント企業だったり、納入先がフロント企業だったり、仕入れ先がフロント企業だったり、色々とありますよね。
社長に刺青と真珠が入っている事実とか、知って誰が幸せになるというのか。
弊社のことではありませんよ。
それはそうと、7Sだの5M1Eだのと、やたらと数字が増えていきますが、現場が追い付かないので、移行期間は十分に欲しいですね。
今はまだ不具合の原因を4M変化を5W1Hで説明するように対策書で要求されていますが、そのうち5M1Eの5W2Hになるはずですよ。
そんな言葉遊びよりも、真因を掴むことが大切だと思うのですが、どうもそういったテクニックが喜ばれる風潮がありますよね。
真因書いても、「上司が喜ぶ書き方じゃないので」って突き返されるこちらの身にもなって欲しい。
いや、不具合流出させた弊社が悪いんですけど。
そんな会議に俺は呼ばれていた。
王都にある賢者の学院で行われているエレメント会議(仮称)には他の冒険者ギルドからの参加者と、学院側の関係者が出席していた。
なので、人数はかなりの数になる。
発言するのは殆んどが賢者の学院の学者で、増やすことに賛成派、反対派の双方が譲らず、会議は膠着状態に陥っていた。
そこになぜかオッティも賢者の学院側の関係者として参加している。
席は俺の隣だ。
俺は前世を思い出して、オッティに話しかける。
「四大エレメントが六大エレメントになって、今度は七大エレメントか。5Sを思い出すな」
「最初は3Sだったのに、いつの間にか7Sになっていたな。それに、4Mもいつの間にか5M1Eに増えていた」
オッティもISOやTSの監査を受けた経験があるので、その変遷は知っている。
3Sとは整理・整頓・清掃のことだ。
頭文字のSからそう呼ばれている。
5Sはそれに清潔・躾が加わる。
7Sになると、作法・安全が加わる。
安全はセイフティーのSだ。
こじつけにも程がある。
食品会社だと、洗浄・殺菌になるんだとか。
そんな感じで、時代と共にやることが増えていく。
やっと3Sが定着したというのに、世間はもう7Sだと云うのだ。
更に、4M変化点管理についても、今は5M1Eになっている。
人・材料・機械・方法に加えて、測定と環境が入ってきた。
環境の変化は温度や湿度、天候などだと云うのだが、そんなもん毎日変わるので、それを全て納入メーカーに三ヶ月前に報告となると、気象予報士が必要になるぞ。
「環境って云えば、修羅の国工場の隣にあった、特定危険なんとか団の構成員の住居が無くなって、不良が増えたんだよな」
オッティはニヤついた顔をする。
「あー、午後六時以降に工場を稼働すると因縁をつけられるから自粛していたけど、そいつが逮捕されて、家が撤去されたときの事か。あれって、夜勤出来るようになったから、新人作業者大量に雇ったら、不具合が一気に増えたんだよな。環境の変化じゃなくて、人の変化だろ」
そう答える俺は、当時を思い出して渋い顔をする。
「人の変化の裏には環境の変化があるんだろ。メーカーには報告できないけど」
「だから対策書が大変だったんだよ。品管の担当が泣いていたぞ。なぜなぜ分析していくと、犯罪組織の構成員が近所にいないか確認するって対策が必要になるとか言ってて」
それが真因かと言われると微妙だが、一因ではあるよな。
「そういえば、あの会社の『取引先のための品質マニュアル』は5M1Eの説明間違っていたよな」
ふと、オッティが外部文章の話をした。
残念ながら、俺はそれだけでは思い出せなかったのだが、オッティが詳しく説明してくれたので思い出した。
残念ながら、詳しくはお伝えできないが、ヒントだけ書いておく。
「それは環境の変化ではなく、設備の変化だ」
かなり大きな会社なのだが、何故か5M1Eの説明が俺でもわかるくらいに間違っていた。
次の見直しで、改定されると思う。
「そうだ、定期的な見直しが必要なんだよ」
オッティとの会話が、今回の会議にも繋がった。
俺は挙手して発言をした。
エレメントの定義をした規格を定めて、定期的に見直しをすればいいのだ。
7大エレメントが増えるかもしれないし、減るかもしれない。
だが、それは時代の要求だ。
増えると、実務担当者は大変になるが、それも仕方がない。
その提案に、反対派も見直しの時までに、研究論文を用意すればいいかと納得してくれた。
「今回の決定により、エレメントは陰陽木火土金水になったか」
五行思想の完成だな。
今後は四元素説の学者と揉めるのが目に見えているぞ。
※作者の独り言
就職した会社が実はフロント企業だったり、納入先がフロント企業だったり、仕入れ先がフロント企業だったり、色々とありますよね。
社長に刺青と真珠が入っている事実とか、知って誰が幸せになるというのか。
弊社のことではありませんよ。
それはそうと、7Sだの5M1Eだのと、やたらと数字が増えていきますが、現場が追い付かないので、移行期間は十分に欲しいですね。
今はまだ不具合の原因を4M変化を5W1Hで説明するように対策書で要求されていますが、そのうち5M1Eの5W2Hになるはずですよ。
そんな言葉遊びよりも、真因を掴むことが大切だと思うのですが、どうもそういったテクニックが喜ばれる風潮がありますよね。
真因書いても、「上司が喜ぶ書き方じゃないので」って突き返されるこちらの身にもなって欲しい。
いや、不具合流出させた弊社が悪いんですけど。
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