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第206話 ミルクラン
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「リバーシのヒットに続く商品が欲しい……か」
オッティとグレイスは久しぶりにステラの街に来ており、俺達はティーノの店で食事をしていた。
現在は食事も終わってオッティから次の商品の開発を持ち掛けられているのだ。
俺の言葉にワイングラスを口につけて傾けているグレイスが頷く。
リバーシができたとなると、次に来るのはあれだな。
「将棋かチェスが定番だな。チェスの方が駒の見た目が美しいから、チェスでいいんじゃないかな」
「そう来ると思ったよ」
オッティは俺の答えを予想していたようだ。
異世界転生の定番だからな。
だったら聞くなよ。
っという思いが顔に出ていたのだろうか、オッティがなだめるような口調に変わる。
「まあまあ、そう来るのは予想の範囲内だが、問題はそれをつくるとして品質管理をどうするかってことさ。駒の材料は魔法樹脂でも、木材でも、金属でも、宝石でもいいとおもっている。大量生産の廉価版なら運搬中のキズなんて気にしないが、金持ち向けの高級品ともなると、そんなことはいってられないだろ。どうせ運搬中に傷がついたとかで、冒険者がアルトのところに相談に来るのがおちだ。そうなる前に何か手を打つべきだと思うんだよ」
結局のところFMEAの実施をしたいということか。
というか、工程が決まっていないから、FMEAの前段階だな。
高級品の外観傷については、へら絞りのグラスでも経験しているから、事前に防ぐ方策を考えたほうがいいな。
特に、貴族ともなると自分の非を認めずに、こちらの責任にしてくるからな。
「まずは高級品と廉価版で分けて考えたほうがいいな。廉価版は遊ぶことができればいいってくらいの緩い品質管理でいいだろう。そのかわり歩留まりがよくなるから安く売る。自動車だって外観不良の基準を緩くすれば、もっと安く販売できるんだよな。ボンネットの塗装工程とか、ヘッドライトの塗装工程を見ると、性能は問題ないのに、外観不良ということでNG品になっているものが多い。しかも、手直しが効かないから廃却になっているわけだ。その廃却費用だって部品単価に乗っかっている訳だからな」
そう、廃棄ロスを考慮するのは当然であり、歩留まりによって製品の単価は決まってくる。
●〇のように、廃棄を計算しない会社もあるが、そんな会社は数年後に無くなるから考慮しない。
廉価版チェスの商品価値はチェスが遊べることなので、駒の識別が出来ないほどの傷でもなければ問題ないだろう。
百均の製品について、傷だなんだと文句をいう奴はいないだろう。
しかし、これが高級品ともなると違ってくる。
チェスの駒をクリスタルや黄金で作る場合、傷が原因で光の反射が乱れると、その価値は失われる。
ゲームの駒ではなく、美術品としての扱いになるからだ。
「廉価版についてはそれでいいか。どうせ商人が荷馬車で運べば傷がつくからな。基準を緩くして、これは良品ですと言い切ってしまえばいい。高級品はどうする?傷なんてどの工程でも発生する可能性があるし、工場出荷時に良品でも運搬までは保証できないぞ。その時に傷の発生工程で揉めるだろう」
俺はオッティのその言葉で閃いた。
「そうか、運搬時の責任を負わなければいいんだ」
俺の閃きにオッティが目を丸くした。
「責任を負わないって、それは無理だろう」
「いいや、それがあるんだよ。ミルクランって覚えているか?」
「ああ」
ミルクランとは牛乳業者が酪農家の間を回って牛乳を引き取っていく様になぞらえた物流用語である。
製造業においては、客先が手配したトラックが自社までやってきて、そこで集荷して次の仕入れ先へとトラックが向かうやり方の事である。
こうすることで輸送効率を上げることができるのだが、他にもメリットがある。
それは運搬中のトラブルの責任が客先に行く事である。
納入時間の遅れの責任も、運搬中の落下等の責任も全て客先になるので、品質管理としてもありがたい。
因みに、ミルクラン方式で助かった事例は、納入伝票の貼り間違いと、製品の落下が多い。
これを自社で手配した便で行っていれば、対策書の提出を要求されていただろう。
そう、輸送の責任を顧客におわせてしまえばいいのだ。
「高級品については引き取り限定にして、その場で品質確認してもらって引き渡しにしよう。どうせ数は作れないから、この条件を受けてくれる客だけ相手にすればいい」
「ふむ」
「いいわね」
オッティとグレイスも賛成のようだ。
しかし、傷のつきやすい素材って何を使うのだろうか?
「金、若しくは銀を使って、手加工で仕上げようと思う」
オッティが素材を教えてくれた。
そうなると、やはり傷は大敵だな。
「ガラスで成形してもよかったんだが……」
「それは勘弁してください」
流石にガラスとなると、扱いが難しい。
運搬中にどうしても割れたりするだろう。
エアサスの馬車があるなら別だが。
その後チェスを売りだしたが、リバーシに比べるとルールが難しく、廉価版はさほど売れなかった。
高級品を買う貴族が、普段使い用として一緒に買ってはくれているみたいだが。
尚、王家に献上したクリスタルのチェスは、近衛騎兵が運搬にあたったとか。
傷つけたら首が飛ぶわ。
※作者の独り言
ミルクラン方式って、サプライヤーの責任が少なくなるからお得ですよね。
って思いますが、どうなんでしょうか。
運送業者は物流監査が増えるので大変でしょうけどね。
オッティとグレイスは久しぶりにステラの街に来ており、俺達はティーノの店で食事をしていた。
現在は食事も終わってオッティから次の商品の開発を持ち掛けられているのだ。
俺の言葉にワイングラスを口につけて傾けているグレイスが頷く。
リバーシができたとなると、次に来るのはあれだな。
「将棋かチェスが定番だな。チェスの方が駒の見た目が美しいから、チェスでいいんじゃないかな」
「そう来ると思ったよ」
オッティは俺の答えを予想していたようだ。
異世界転生の定番だからな。
だったら聞くなよ。
っという思いが顔に出ていたのだろうか、オッティがなだめるような口調に変わる。
「まあまあ、そう来るのは予想の範囲内だが、問題はそれをつくるとして品質管理をどうするかってことさ。駒の材料は魔法樹脂でも、木材でも、金属でも、宝石でもいいとおもっている。大量生産の廉価版なら運搬中のキズなんて気にしないが、金持ち向けの高級品ともなると、そんなことはいってられないだろ。どうせ運搬中に傷がついたとかで、冒険者がアルトのところに相談に来るのがおちだ。そうなる前に何か手を打つべきだと思うんだよ」
結局のところFMEAの実施をしたいということか。
というか、工程が決まっていないから、FMEAの前段階だな。
高級品の外観傷については、へら絞りのグラスでも経験しているから、事前に防ぐ方策を考えたほうがいいな。
特に、貴族ともなると自分の非を認めずに、こちらの責任にしてくるからな。
「まずは高級品と廉価版で分けて考えたほうがいいな。廉価版は遊ぶことができればいいってくらいの緩い品質管理でいいだろう。そのかわり歩留まりがよくなるから安く売る。自動車だって外観不良の基準を緩くすれば、もっと安く販売できるんだよな。ボンネットの塗装工程とか、ヘッドライトの塗装工程を見ると、性能は問題ないのに、外観不良ということでNG品になっているものが多い。しかも、手直しが効かないから廃却になっているわけだ。その廃却費用だって部品単価に乗っかっている訳だからな」
そう、廃棄ロスを考慮するのは当然であり、歩留まりによって製品の単価は決まってくる。
●〇のように、廃棄を計算しない会社もあるが、そんな会社は数年後に無くなるから考慮しない。
廉価版チェスの商品価値はチェスが遊べることなので、駒の識別が出来ないほどの傷でもなければ問題ないだろう。
百均の製品について、傷だなんだと文句をいう奴はいないだろう。
しかし、これが高級品ともなると違ってくる。
チェスの駒をクリスタルや黄金で作る場合、傷が原因で光の反射が乱れると、その価値は失われる。
ゲームの駒ではなく、美術品としての扱いになるからだ。
「廉価版についてはそれでいいか。どうせ商人が荷馬車で運べば傷がつくからな。基準を緩くして、これは良品ですと言い切ってしまえばいい。高級品はどうする?傷なんてどの工程でも発生する可能性があるし、工場出荷時に良品でも運搬までは保証できないぞ。その時に傷の発生工程で揉めるだろう」
俺はオッティのその言葉で閃いた。
「そうか、運搬時の責任を負わなければいいんだ」
俺の閃きにオッティが目を丸くした。
「責任を負わないって、それは無理だろう」
「いいや、それがあるんだよ。ミルクランって覚えているか?」
「ああ」
ミルクランとは牛乳業者が酪農家の間を回って牛乳を引き取っていく様になぞらえた物流用語である。
製造業においては、客先が手配したトラックが自社までやってきて、そこで集荷して次の仕入れ先へとトラックが向かうやり方の事である。
こうすることで輸送効率を上げることができるのだが、他にもメリットがある。
それは運搬中のトラブルの責任が客先に行く事である。
納入時間の遅れの責任も、運搬中の落下等の責任も全て客先になるので、品質管理としてもありがたい。
因みに、ミルクラン方式で助かった事例は、納入伝票の貼り間違いと、製品の落下が多い。
これを自社で手配した便で行っていれば、対策書の提出を要求されていただろう。
そう、輸送の責任を顧客におわせてしまえばいいのだ。
「高級品については引き取り限定にして、その場で品質確認してもらって引き渡しにしよう。どうせ数は作れないから、この条件を受けてくれる客だけ相手にすればいい」
「ふむ」
「いいわね」
オッティとグレイスも賛成のようだ。
しかし、傷のつきやすい素材って何を使うのだろうか?
「金、若しくは銀を使って、手加工で仕上げようと思う」
オッティが素材を教えてくれた。
そうなると、やはり傷は大敵だな。
「ガラスで成形してもよかったんだが……」
「それは勘弁してください」
流石にガラスとなると、扱いが難しい。
運搬中にどうしても割れたりするだろう。
エアサスの馬車があるなら別だが。
その後チェスを売りだしたが、リバーシに比べるとルールが難しく、廉価版はさほど売れなかった。
高級品を買う貴族が、普段使い用として一緒に買ってはくれているみたいだが。
尚、王家に献上したクリスタルのチェスは、近衛騎兵が運搬にあたったとか。
傷つけたら首が飛ぶわ。
※作者の独り言
ミルクラン方式って、サプライヤーの責任が少なくなるからお得ですよね。
って思いますが、どうなんでしょうか。
運送業者は物流監査が増えるので大変でしょうけどね。
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