冒険者ギルド品質管理部 ~生まれ変わっても品管だけは嫌だと言ったのに~

犬野純

文字の大きさ
214 / 439

第213話 設計は最終工程迄を考慮して欲しい

しおりを挟む
世界的大流行のあれによる工場稼働停止が拡大し、益々株取引の利益が増えていく。
政府からの10万円の支給もあるとかで、完全に焼け太りですね。
少しどこかの募金に協力してこようかな。
とはいえ、少ない日数ですが出社しており、社内でPCR検査対象者が出ると戦慄が走ります。
手を洗いすぎて、お肌がガサガサになってしまいましたが、罹患の恐怖に比べたら肌荒れなんて許容できる。
トリクレンとかIPA扱ったときみたいに、お手手が脱脂されちゃったとか、業界関係者にしかわからない冗談を言っております。
そんな感じで、ネタになるような出来事はあまり無いのですが、昔の事を少し書きましょうかね。
関係者はみんな定年若しくはリストラされ、不良の現場となった子会社はもう無いので、多分書いても怒られないはず。
それでは本編いってみましょう。

 俺は今ホーマーに呼ばれて工房に来ていた。
 用件と言うのは、客から受注した溶接で繋げた金属製のドラゴンだ。
 新進気鋭の若手芸術家が思い付いたらしく、ホーマーの溶接技術があれば、金属同士の接合も実現できると製作に踏みきったのだと謂う。
 俺はその外観検査というわけだ。

 工房内には全高3000ミリ、全長5000ミリ程度のドラゴンの形をした金属の塊があった。

「で、俺は溶接部の出来映えと、全体のキズの検査でいいんだよな」

 と、ホーマーに確認をした。

「はい。溶接強度については特に指示も無く、ビード幅にも公差は設定されていません」

 そう答えが返ってきた。

「大きいから時間がかかるが、いつまでに終わらせばいい?」

「二時間後にコンパーノが取りに来ますんで、それまでに終わらせてもらえますか」

「わかったよ」

 そう返事をした。
 確かに大きいが、寸法を測定するわけではないので、二時間もあれば全部の箇所を確認することはできる。
 ああ、そういえばいまはスキルで測定が出来るから、測定の時間も殆どかからないのか。
 などと心のうちで思いながら、外観検査を進めていく。
 問題になるような傷は見当たらず、溶接不良もなかった。
 物が物だけに、無理な溶接姿勢で不具合箇所が有るかもしれないと思ったが、どうやらそれもなかったな。

「問題ないな」

 そう検査結果をホーマーに伝えると、彼は安堵の表情を浮かべた。

「よかった」

 肩の荷が降りたと言わんばかりだ。
 俺は今日は特に用事もなかったので、コンパーノが受け取りに来るまで、工房に居ることにした。
 エッセの仕事振りを見て時間を潰していると、コンパーノがやってくる。

「こんにちは、ドラゴンの引き取りに来ました」

 挨拶をしたコンパーノを工房の中に案内し、ドラゴンの前につれてくる。
 そしてドラゴンをみたコンパーノが

「いやー、聞いてはいましたが大きいですね。これじゃドアから出せないし、馬車にも乗らないでしょう」

 と言った。
 それを聞いて、俺とホーマーは顔が青ざめる。
 そうだ、これをどうやって運ぶか迄は考えていなかった。
 前世でも組立て設備を受注したのだが、設計が何も考えずに設計したものだから、工場から出せなかったのだ。
 仕方なく、壁を壊して外に出したら、今度はトラックに積んでみたものの、車体から大きく横にはみ出してしまい、道路を走ることが出来ないのがわかったのである。
 結局設備をばらして、客先で組み立てる事にしたのだ。
 壁を壊した意味がなかったね。
 結局、対策としてトラックで運搬できる幅迄に収めることってなった。
 それを越えるものについては、客先での組立てとなるとも。

 さて、今回はどうしたものか。
 出すのは壁を壊せばいいが、運搬は無理そうだな。
 あれ、そういえばコンパーノはどうやってこれを運ぶつもりだったのだろうか。
 聞いていたと言ってるから、依頼内容は詳しく知っていたはずだ。
 外に出せたとしても、馬車では運べないだろう。
 運搬のスキルでも、こいつを一人で担ぐのは無理だし。

「どうやって運ぶつもりなのか?っておもってますよね」

 俺の考えを見透かしたようにコンパーノが言う。

「その通りだ。これだけのサイズともなると、運搬手段が無いだろ」

「いえいえ、自分のジョブは運搬人ですよ。収納魔法で異空間に入れてしまえばいいだけです」

「あっ!」

 そうか、そうだよな。
 運搬人のスキルでそういうのがあったよな。
 俺も使えるのをすっかり忘れていたよ。
 コンパーノは俺達の見ている前で収納魔法を使い、ドラゴンを異空間に収納した。
 これがあの時あれば、工場の壁を壊す必要はなかったな。


※作者の独り言
建屋からでないとか割りとよくある話ですね。
その逆も。
入らなかった話だと、1000トンの成型機を購入した会社が、成型機の納入後に壁を作ったというのがあります。
成型機が大きすぎて、工場の入り口から入らなかったのだそうです。
何せ、繊維工場を居抜きで買ったので、そんな設備を搬入させる作りにはなっていなかった。
なので、工場増築して壁を作る前に成型機を納入としたわけです。
ところがその会社が倒産してしまい、リース会社が大変困ったことになってしまいました。
成型機は自分の所有ですが、工場は裁判所に差し押さえされてしまい、壁を壊して取り出すわけにもいかなくなったと。
その後どうなったかは知りません。
ま、忘れがちですが、工場の出入り口の大きさは確認しておきましょうってことですね。
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

爺さんの異世界建国記 〜荒廃した異世界を農業で立て直していきます。いきなりの土作りはうまくいかない。

秋田ノ介
ファンタジー
  88歳の爺さんが、異世界に転生して農業の知識を駆使して建国をする話。  異世界では、戦乱が絶えず、土地が荒廃し、人心は乱れ、国家が崩壊している。そんな世界を司る女神から、世界を救うように懇願される。爺は、耳が遠いせいで、村長になって村人が飢えないようにしてほしいと頼まれたと勘違いする。  その願いを叶えるために、農業で村人の飢えをなくすことを目標にして、生活していく。それが、次第に輪が広がり世界の人々に希望を与え始める。戦争で成人男性が極端に少ない世界で、13歳のロッシュという若者に転生した爺の周りには、ハーレムが出来上がっていく。徐々にその地に、流浪をしている者たちや様々な種族の者たちが様々な思惑で集まり、国家が出来上がっていく。  飢えを乗り越えた『村』は、王国から狙われることとなる。強大な軍事力を誇る王国に対して、ロッシュは知恵と知識、そして魔法や仲間たちと協力して、その脅威を乗り越えていくオリジナル戦記。  完結済み。全400話、150万字程度程度になります。元は他のサイトで掲載していたものを加筆修正して、掲載します。一日、少なくとも二話は更新します。  

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

転生社畜、転生先でも社畜ジョブ「書記」でブラック労働し、20年。前人未到のジョブレベルカンストからの大覚醒成り上がり!

nineyu
ファンタジー
 男は絶望していた。  使い潰され、いびられ、社畜生活に疲れ、気がつけば死に場所を求めて樹海を歩いていた。  しかし、樹海の先は異世界で、転生の影響か体も若返っていた!  リスタートと思い、自由に暮らしたいと思うも、手に入れていたスキルは前世の影響らしく、気がつけば変わらない社畜生活に、、  そんな不幸な男の転機はそこから20年。  累計四十年の社畜ジョブが、遂に覚醒する!!

転生幼女のチートな悠々自適生活〜伝統魔法を使い続けていたら気づけば賢者になっていた〜

犬社護
ファンタジー
ユミル(4歳)は気がついたら、崖下にある森の中に呆然と佇んでいた。 馬車が崖下に落下した影響で、前世の記憶を思い出したのだ。前世、日本伝統が子供の頃から大好きで、小中高大共に伝統に関わるクラブや学部に入り、卒業後はお世話になった大学教授の秘書となり、伝統のために毎日走り回っていたが、旅先の講演の合間、教授と2人で歩道を歩いていると、暴走車が突っ込んできたので、彼女は教授を助けるも、そのまま跳ね飛ばされてしまい、死を迎えてしまう。 享年は25歳。 周囲には散乱した荷物だけでなく、さっきまで会話していた家族が横たわっている。 25歳の精神だからこそ、これが何を意味しているのかに気づき、ショックを受ける。 大雨の中を泣き叫んでいる時、1体の小さな精霊カーバンクルが現れる。前世もふもふ好きだったユミルは、もふもふ精霊と会話することで悲しみも和らぎ、互いに打ち解けることに成功する。 精霊カーバンクルと仲良くなったことで、彼女は日本古来の伝統に関わる魔法を習得するのだが、チート魔法のせいで色々やらかしていく。まわりの精霊や街に住む平民や貴族達もそれに振り回されるものの、愛くるしく天真爛漫な彼女を見ることで、皆がほっこり心を癒されていく。 人々や精霊に愛されていくユミルは、伝統魔法で仲間たちと悠々自適な生活を目指します。

異世界でぼっち生活をしてたら幼女×2を拾ったので養うことにした【改稿版】

きたーの(旧名:せんせい)
ファンタジー
【毎週火木土更新】 自身のクラスが勇者召喚として呼ばれたのに乗り遅れてお亡くなりになってしまった主人公。 その瞬間を偶然にも神が見ていたことでほぼ不老不死に近い能力を貰い異世界へ! 約2万年の時を、ぼっちで過ごしていたある日、いつも通り森を闊歩していると2人の子供(幼女)に遭遇し、そこから主人公の物語が始まって行く……。 ――― 当作品は過去作品の改稿版です。情景描写等を厚くしております。 なお、投稿規約に基づき既存作品に関しては非公開としておりますためご理解のほどよろしくお願いいたします。

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

処理中です...