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第213話 設計は最終工程迄を考慮して欲しい
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世界的大流行のあれによる工場稼働停止が拡大し、益々株取引の利益が増えていく。
政府からの10万円の支給もあるとかで、完全に焼け太りですね。
少しどこかの募金に協力してこようかな。
とはいえ、少ない日数ですが出社しており、社内でPCR検査対象者が出ると戦慄が走ります。
手を洗いすぎて、お肌がガサガサになってしまいましたが、罹患の恐怖に比べたら肌荒れなんて許容できる。
トリクレンとかIPA扱ったときみたいに、お手手が脱脂されちゃったとか、業界関係者にしかわからない冗談を言っております。
そんな感じで、ネタになるような出来事はあまり無いのですが、昔の事を少し書きましょうかね。
関係者はみんな定年若しくはリストラされ、不良の現場となった子会社はもう無いので、多分書いても怒られないはず。
それでは本編いってみましょう。
俺は今ホーマーに呼ばれて工房に来ていた。
用件と言うのは、客から受注した溶接で繋げた金属製のドラゴンだ。
新進気鋭の若手芸術家が思い付いたらしく、ホーマーの溶接技術があれば、金属同士の接合も実現できると製作に踏みきったのだと謂う。
俺はその外観検査というわけだ。
工房内には全高3000ミリ、全長5000ミリ程度のドラゴンの形をした金属の塊があった。
「で、俺は溶接部の出来映えと、全体のキズの検査でいいんだよな」
と、ホーマーに確認をした。
「はい。溶接強度については特に指示も無く、ビード幅にも公差は設定されていません」
そう答えが返ってきた。
「大きいから時間がかかるが、いつまでに終わらせばいい?」
「二時間後にコンパーノが取りに来ますんで、それまでに終わらせてもらえますか」
「わかったよ」
そう返事をした。
確かに大きいが、寸法を測定するわけではないので、二時間もあれば全部の箇所を確認することはできる。
ああ、そういえばいまはスキルで測定が出来るから、測定の時間も殆どかからないのか。
などと心のうちで思いながら、外観検査を進めていく。
問題になるような傷は見当たらず、溶接不良もなかった。
物が物だけに、無理な溶接姿勢で不具合箇所が有るかもしれないと思ったが、どうやらそれもなかったな。
「問題ないな」
そう検査結果をホーマーに伝えると、彼は安堵の表情を浮かべた。
「よかった」
肩の荷が降りたと言わんばかりだ。
俺は今日は特に用事もなかったので、コンパーノが受け取りに来るまで、工房に居ることにした。
エッセの仕事振りを見て時間を潰していると、コンパーノがやってくる。
「こんにちは、ドラゴンの引き取りに来ました」
挨拶をしたコンパーノを工房の中に案内し、ドラゴンの前につれてくる。
そしてドラゴンをみたコンパーノが
「いやー、聞いてはいましたが大きいですね。これじゃドアから出せないし、馬車にも乗らないでしょう」
と言った。
それを聞いて、俺とホーマーは顔が青ざめる。
そうだ、これをどうやって運ぶか迄は考えていなかった。
前世でも組立て設備を受注したのだが、設計が何も考えずに設計したものだから、工場から出せなかったのだ。
仕方なく、壁を壊して外に出したら、今度はトラックに積んでみたものの、車体から大きく横にはみ出してしまい、道路を走ることが出来ないのがわかったのである。
結局設備をばらして、客先で組み立てる事にしたのだ。
壁を壊した意味がなかったね。
結局、対策としてトラックで運搬できる幅迄に収めることってなった。
それを越えるものについては、客先での組立てとなるとも。
さて、今回はどうしたものか。
出すのは壁を壊せばいいが、運搬は無理そうだな。
あれ、そういえばコンパーノはどうやってこれを運ぶつもりだったのだろうか。
聞いていたと言ってるから、依頼内容は詳しく知っていたはずだ。
外に出せたとしても、馬車では運べないだろう。
運搬のスキルでも、こいつを一人で担ぐのは無理だし。
「どうやって運ぶつもりなのか?っておもってますよね」
俺の考えを見透かしたようにコンパーノが言う。
「その通りだ。これだけのサイズともなると、運搬手段が無いだろ」
「いえいえ、自分のジョブは運搬人ですよ。収納魔法で異空間に入れてしまえばいいだけです」
「あっ!」
そうか、そうだよな。
運搬人のスキルでそういうのがあったよな。
俺も使えるのをすっかり忘れていたよ。
コンパーノは俺達の見ている前で収納魔法を使い、ドラゴンを異空間に収納した。
これがあの時あれば、工場の壁を壊す必要はなかったな。
※作者の独り言
建屋からでないとか割りとよくある話ですね。
その逆も。
入らなかった話だと、1000トンの成型機を購入した会社が、成型機の納入後に壁を作ったというのがあります。
成型機が大きすぎて、工場の入り口から入らなかったのだそうです。
何せ、繊維工場を居抜きで買ったので、そんな設備を搬入させる作りにはなっていなかった。
なので、工場増築して壁を作る前に成型機を納入としたわけです。
ところがその会社が倒産してしまい、リース会社が大変困ったことになってしまいました。
成型機は自分の所有ですが、工場は裁判所に差し押さえされてしまい、壁を壊して取り出すわけにもいかなくなったと。
その後どうなったかは知りません。
ま、忘れがちですが、工場の出入り口の大きさは確認しておきましょうってことですね。
政府からの10万円の支給もあるとかで、完全に焼け太りですね。
少しどこかの募金に協力してこようかな。
とはいえ、少ない日数ですが出社しており、社内でPCR検査対象者が出ると戦慄が走ります。
手を洗いすぎて、お肌がガサガサになってしまいましたが、罹患の恐怖に比べたら肌荒れなんて許容できる。
トリクレンとかIPA扱ったときみたいに、お手手が脱脂されちゃったとか、業界関係者にしかわからない冗談を言っております。
そんな感じで、ネタになるような出来事はあまり無いのですが、昔の事を少し書きましょうかね。
関係者はみんな定年若しくはリストラされ、不良の現場となった子会社はもう無いので、多分書いても怒られないはず。
それでは本編いってみましょう。
俺は今ホーマーに呼ばれて工房に来ていた。
用件と言うのは、客から受注した溶接で繋げた金属製のドラゴンだ。
新進気鋭の若手芸術家が思い付いたらしく、ホーマーの溶接技術があれば、金属同士の接合も実現できると製作に踏みきったのだと謂う。
俺はその外観検査というわけだ。
工房内には全高3000ミリ、全長5000ミリ程度のドラゴンの形をした金属の塊があった。
「で、俺は溶接部の出来映えと、全体のキズの検査でいいんだよな」
と、ホーマーに確認をした。
「はい。溶接強度については特に指示も無く、ビード幅にも公差は設定されていません」
そう答えが返ってきた。
「大きいから時間がかかるが、いつまでに終わらせばいい?」
「二時間後にコンパーノが取りに来ますんで、それまでに終わらせてもらえますか」
「わかったよ」
そう返事をした。
確かに大きいが、寸法を測定するわけではないので、二時間もあれば全部の箇所を確認することはできる。
ああ、そういえばいまはスキルで測定が出来るから、測定の時間も殆どかからないのか。
などと心のうちで思いながら、外観検査を進めていく。
問題になるような傷は見当たらず、溶接不良もなかった。
物が物だけに、無理な溶接姿勢で不具合箇所が有るかもしれないと思ったが、どうやらそれもなかったな。
「問題ないな」
そう検査結果をホーマーに伝えると、彼は安堵の表情を浮かべた。
「よかった」
肩の荷が降りたと言わんばかりだ。
俺は今日は特に用事もなかったので、コンパーノが受け取りに来るまで、工房に居ることにした。
エッセの仕事振りを見て時間を潰していると、コンパーノがやってくる。
「こんにちは、ドラゴンの引き取りに来ました」
挨拶をしたコンパーノを工房の中に案内し、ドラゴンの前につれてくる。
そしてドラゴンをみたコンパーノが
「いやー、聞いてはいましたが大きいですね。これじゃドアから出せないし、馬車にも乗らないでしょう」
と言った。
それを聞いて、俺とホーマーは顔が青ざめる。
そうだ、これをどうやって運ぶか迄は考えていなかった。
前世でも組立て設備を受注したのだが、設計が何も考えずに設計したものだから、工場から出せなかったのだ。
仕方なく、壁を壊して外に出したら、今度はトラックに積んでみたものの、車体から大きく横にはみ出してしまい、道路を走ることが出来ないのがわかったのである。
結局設備をばらして、客先で組み立てる事にしたのだ。
壁を壊した意味がなかったね。
結局、対策としてトラックで運搬できる幅迄に収めることってなった。
それを越えるものについては、客先での組立てとなるとも。
さて、今回はどうしたものか。
出すのは壁を壊せばいいが、運搬は無理そうだな。
あれ、そういえばコンパーノはどうやってこれを運ぶつもりだったのだろうか。
聞いていたと言ってるから、依頼内容は詳しく知っていたはずだ。
外に出せたとしても、馬車では運べないだろう。
運搬のスキルでも、こいつを一人で担ぐのは無理だし。
「どうやって運ぶつもりなのか?っておもってますよね」
俺の考えを見透かしたようにコンパーノが言う。
「その通りだ。これだけのサイズともなると、運搬手段が無いだろ」
「いえいえ、自分のジョブは運搬人ですよ。収納魔法で異空間に入れてしまえばいいだけです」
「あっ!」
そうか、そうだよな。
運搬人のスキルでそういうのがあったよな。
俺も使えるのをすっかり忘れていたよ。
コンパーノは俺達の見ている前で収納魔法を使い、ドラゴンを異空間に収納した。
これがあの時あれば、工場の壁を壊す必要はなかったな。
※作者の独り言
建屋からでないとか割りとよくある話ですね。
その逆も。
入らなかった話だと、1000トンの成型機を購入した会社が、成型機の納入後に壁を作ったというのがあります。
成型機が大きすぎて、工場の入り口から入らなかったのだそうです。
何せ、繊維工場を居抜きで買ったので、そんな設備を搬入させる作りにはなっていなかった。
なので、工場増築して壁を作る前に成型機を納入としたわけです。
ところがその会社が倒産してしまい、リース会社が大変困ったことになってしまいました。
成型機は自分の所有ですが、工場は裁判所に差し押さえされてしまい、壁を壊して取り出すわけにもいかなくなったと。
その後どうなったかは知りません。
ま、忘れがちですが、工場の出入り口の大きさは確認しておきましょうってことですね。
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(※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。
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