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第232話 頼むから対策しやすい不具合にしてくれ
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今日はあり得ないミスが出て、冒険者ギルドの食堂で緊急の会議をしている。
何故食堂かといえば、ここが現場だからだ。
不具合の内容は工程飛び。
ステーキを生肉のまま提供してしまったのだ。
客が生だと指摘して、そこで初めて焼いていない事に気がついたという大失態である。
焼く前に皿に乗せた料理人。
焼いてないのを気がつかずに運んだウエイトレス。
普通に考えたらあり得ないのだが、それは現実に起こってしまった。
料理人とウエイトレスに聞き取りをしても、どうしてそうしたのか全くわからないのだ。
勘違い、見間違いなのだろうけど、なぜなぜ分析が全然進まないのだ。
前世でもこんなことがあったな。
未加工品が流出したのだが、それが材料の金属の塊そのもの。
素材をそのままの鮮度でお届け。
お客様も吃驚。
勿論悪い意味で。
FTAでもFMEAでも出てこなかった、まさかの不具合。
出てこなかったというのは、参加者もまさか金属のブロックそのまま箱に積めて出荷しねーよという思い込みがあったからなのは否定できない。
寿司屋で中トロ頼んだらマグロが一匹出てくるレベル。
シャリは稲。
こうなるとポカヨケなんて全くの無意味。
出荷検査も見逃しているし、対策書をどうしようと悩んだものだ。
もう、嘘でもいいからなんとか対策まで漕ぎ着けないと、提出期限に間に合わなくなると焦ったのだ。
ラリっていたということにしようかとも思った。
実際、ラインの近くでシンナー扱ってて、作業者全員がラリってしまい、歌い出したり、踊り出したりしたことも前にはあった。
だが、そんな真因を用意したら、色々と面倒になるので却下だ。
発生源も流出源も勘違いなんだけど、じゃあ良品だったときだけ、箱の蓋を開けて中に入れられる仕組みをつくればいいのか?
助けてキー◯ンス。
いや、助けてもらうと費用が嵩む。
水平展開要求されたら会社が傾くから、蓋の開閉の自動化は駄目だ。
じゃあ、変化点は作業者の心にしてしまおうか?
失恋した直後だったから、なにも考えられない状態で作業していた。
それだと、対策は朝礼で班長が失恋してないか確認することになる。
コンプライアンス的に大問題だ。
しかも記録を残すんだぞ。
こんな対策だせるか!
「アルト、今日はやけに真剣に考え込んでいるな」
俺の意識はブレイドの言葉で異世界に引き戻された。
じゃあ今までどこに行ってたんだよって言われそうだけど。
「ごめんごめん、ちょっと考え込みすぎていたな。もう一度確認するが、料理人もウ工イトレスも新人ではない。今までこんなミスはなかった。それでいいよな」
俺の確認にブレイドが首肯する。
新人のミスではないのは間違いない。
となると、当日特に料理人に何かしらの変化点があったはずた。
ウェイトレスは普段から皿の上の肉の焼け具合を見ていなかった可能性があるので、変化点がかなずしもあるわけではない。
勿論、コンロと皿の位置にも変化は無いのを確認している。
料理人の心の変化はあったはずなのだ。
俺が悩んでいると、ブレイドが暗い顔して話しかけてきた。
「なあ、アルト。俺もティーノみたいに、自分の店を持とうかと思うんだ」
ここに来てまさかの転職希望カミングアウト。
どうしたというのだろうか?
「不具合の対策を考えてもらっているアルトには悪いんだが、俺はもう疲れたよ。料理人だから料理をつくるのが仕事のはずなのに、最近は部下の管理ばかりだ。俺のジョブは料理人であって、マネージャーじゃない。このまま年をとっていくのも堪えられないんだ。俺はこの不具合の対策が出来たら、田舎に帰ってレストランをひらこうと思うんだ」
あー、なんか聞いてて重くなる奴だわ。
それに最後の台詞はフラグたっちゃうやつだぞ。
気持ちはわからなくもないが。
「そうか、それなら引き留めもしないし、なんなら今すぐでもいいんじゃないか?」
俺の言葉にブレイドは驚いて目を丸くする。
「それはいくらなんでも無責任だろ」
「そうでもないさ。不具合の対策は俺の仕事だから、ブレイドが辞めても対策は出来る。それに、人生は一度きりなんだから、立ち止まっている時間なんて無いぞ」
二度目の人生を送っている俺の言う台詞じゃないが。
逃げる奴は逃げない奴よりもいい。
何せうつ病にはならないからな。
毎回逃げてばかりでは駄目だが、適度に逃げ出すのはいいんじゃないかな。
品質管理も逃げない奴は、我慢の限界が来ると、最後は人生から逃げるからな。
そんなもんは二度と見たくないので、早めに逃げてくれた方がいいぞ。
「いい考えも浮かばないから、酒でも飲むか?」
俺の提案に再びブレイドが目を丸くする。
「いいのか、まだ昼間で勤務中だぞ」
辞める奴が何を心配しているのだ。
「不具合の対策は仕事だ。その打ち合わせをしながら飲むんだから、立派な仕事だよ。厨房に売るほどあるだろ。持ってきてやるよ」
俺は席を立ち、厨房にあるエールをジョッキに入れて持ってきた。
本当はトリアエズナマが良かったのだが、残念ながら居酒屋がここには無いので我慢だ。
「ほら」
ジョッキを差し出すと、ブレイドはそれを受け取り、観念したのか一気に口にした。
いい飲みっぷりだ。
俺も自分のジョッキを傾ける。
口一杯に広がるアルコールは、今までの悩みを包み込んで喉から下に落ちていく。
うん、もう不具合対策なんでどうでもいいや。
そこからは、ブレイドが考える店のレイアウトやら、創作料理の話やらで盛り上がった。
対策?
指差し確認ですよ、ヨシッ!
異世界で良かった。
前世ならこんな対策通るわけがないから。
異世界で良かった……
尚、ブレイドはもう少しここで頑張ってみるとの事。
仕事なんて頑張らなくていいのにね。
※作者の独り言
加工業者なのに素材のままの鮮度でお届け。
第一次産業じゃないんだから。
対策として「私が作ってます」って作業者の写真付きで納品するぞ( ;∀;)
お願いだから、もう少し対策書を書きやすい不具合にしてください。
それと、ウエイトレスの「エ」が違う文字だったりするんですけど、気がつきましたかね?
これがいじわるテストだぞ。
工業の「工」にしてあったり。
見つけられた人は是非とも弊社の検査員に。
何故食堂かといえば、ここが現場だからだ。
不具合の内容は工程飛び。
ステーキを生肉のまま提供してしまったのだ。
客が生だと指摘して、そこで初めて焼いていない事に気がついたという大失態である。
焼く前に皿に乗せた料理人。
焼いてないのを気がつかずに運んだウエイトレス。
普通に考えたらあり得ないのだが、それは現実に起こってしまった。
料理人とウエイトレスに聞き取りをしても、どうしてそうしたのか全くわからないのだ。
勘違い、見間違いなのだろうけど、なぜなぜ分析が全然進まないのだ。
前世でもこんなことがあったな。
未加工品が流出したのだが、それが材料の金属の塊そのもの。
素材をそのままの鮮度でお届け。
お客様も吃驚。
勿論悪い意味で。
FTAでもFMEAでも出てこなかった、まさかの不具合。
出てこなかったというのは、参加者もまさか金属のブロックそのまま箱に積めて出荷しねーよという思い込みがあったからなのは否定できない。
寿司屋で中トロ頼んだらマグロが一匹出てくるレベル。
シャリは稲。
こうなるとポカヨケなんて全くの無意味。
出荷検査も見逃しているし、対策書をどうしようと悩んだものだ。
もう、嘘でもいいからなんとか対策まで漕ぎ着けないと、提出期限に間に合わなくなると焦ったのだ。
ラリっていたということにしようかとも思った。
実際、ラインの近くでシンナー扱ってて、作業者全員がラリってしまい、歌い出したり、踊り出したりしたことも前にはあった。
だが、そんな真因を用意したら、色々と面倒になるので却下だ。
発生源も流出源も勘違いなんだけど、じゃあ良品だったときだけ、箱の蓋を開けて中に入れられる仕組みをつくればいいのか?
助けてキー◯ンス。
いや、助けてもらうと費用が嵩む。
水平展開要求されたら会社が傾くから、蓋の開閉の自動化は駄目だ。
じゃあ、変化点は作業者の心にしてしまおうか?
失恋した直後だったから、なにも考えられない状態で作業していた。
それだと、対策は朝礼で班長が失恋してないか確認することになる。
コンプライアンス的に大問題だ。
しかも記録を残すんだぞ。
こんな対策だせるか!
「アルト、今日はやけに真剣に考え込んでいるな」
俺の意識はブレイドの言葉で異世界に引き戻された。
じゃあ今までどこに行ってたんだよって言われそうだけど。
「ごめんごめん、ちょっと考え込みすぎていたな。もう一度確認するが、料理人もウ工イトレスも新人ではない。今までこんなミスはなかった。それでいいよな」
俺の確認にブレイドが首肯する。
新人のミスではないのは間違いない。
となると、当日特に料理人に何かしらの変化点があったはずた。
ウェイトレスは普段から皿の上の肉の焼け具合を見ていなかった可能性があるので、変化点がかなずしもあるわけではない。
勿論、コンロと皿の位置にも変化は無いのを確認している。
料理人の心の変化はあったはずなのだ。
俺が悩んでいると、ブレイドが暗い顔して話しかけてきた。
「なあ、アルト。俺もティーノみたいに、自分の店を持とうかと思うんだ」
ここに来てまさかの転職希望カミングアウト。
どうしたというのだろうか?
「不具合の対策を考えてもらっているアルトには悪いんだが、俺はもう疲れたよ。料理人だから料理をつくるのが仕事のはずなのに、最近は部下の管理ばかりだ。俺のジョブは料理人であって、マネージャーじゃない。このまま年をとっていくのも堪えられないんだ。俺はこの不具合の対策が出来たら、田舎に帰ってレストランをひらこうと思うんだ」
あー、なんか聞いてて重くなる奴だわ。
それに最後の台詞はフラグたっちゃうやつだぞ。
気持ちはわからなくもないが。
「そうか、それなら引き留めもしないし、なんなら今すぐでもいいんじゃないか?」
俺の言葉にブレイドは驚いて目を丸くする。
「それはいくらなんでも無責任だろ」
「そうでもないさ。不具合の対策は俺の仕事だから、ブレイドが辞めても対策は出来る。それに、人生は一度きりなんだから、立ち止まっている時間なんて無いぞ」
二度目の人生を送っている俺の言う台詞じゃないが。
逃げる奴は逃げない奴よりもいい。
何せうつ病にはならないからな。
毎回逃げてばかりでは駄目だが、適度に逃げ出すのはいいんじゃないかな。
品質管理も逃げない奴は、我慢の限界が来ると、最後は人生から逃げるからな。
そんなもんは二度と見たくないので、早めに逃げてくれた方がいいぞ。
「いい考えも浮かばないから、酒でも飲むか?」
俺の提案に再びブレイドが目を丸くする。
「いいのか、まだ昼間で勤務中だぞ」
辞める奴が何を心配しているのだ。
「不具合の対策は仕事だ。その打ち合わせをしながら飲むんだから、立派な仕事だよ。厨房に売るほどあるだろ。持ってきてやるよ」
俺は席を立ち、厨房にあるエールをジョッキに入れて持ってきた。
本当はトリアエズナマが良かったのだが、残念ながら居酒屋がここには無いので我慢だ。
「ほら」
ジョッキを差し出すと、ブレイドはそれを受け取り、観念したのか一気に口にした。
いい飲みっぷりだ。
俺も自分のジョッキを傾ける。
口一杯に広がるアルコールは、今までの悩みを包み込んで喉から下に落ちていく。
うん、もう不具合対策なんでどうでもいいや。
そこからは、ブレイドが考える店のレイアウトやら、創作料理の話やらで盛り上がった。
対策?
指差し確認ですよ、ヨシッ!
異世界で良かった。
前世ならこんな対策通るわけがないから。
異世界で良かった……
尚、ブレイドはもう少しここで頑張ってみるとの事。
仕事なんて頑張らなくていいのにね。
※作者の独り言
加工業者なのに素材のままの鮮度でお届け。
第一次産業じゃないんだから。
対策として「私が作ってます」って作業者の写真付きで納品するぞ( ;∀;)
お願いだから、もう少し対策書を書きやすい不具合にしてください。
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