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第245話 バリ無きこと
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「アルト、これなんかどうかしら?」
シルビアが俺に訊いてくる。
「似合うと思うよ。試着してみようか」
「わかったわ。覗かないでよね」
「しないよ。命がおしいからね」
俺が軽口を叩くと、シルビアはべーっと舌を出して試着室に消えていった。
手がでなくなって大人しくなっただけじゃなくて、なんか仕草が可愛くなったな。
暫くして試着を終えたシルビアが出てくる。
「どう?」
そう訊かれたので
「似合っているよ」
そう答えた。
ビキニアーマーを着た彼女は嬉しそうに微笑む。
そう、ここはデボネアの店である。
いつの間に試着室が出来たのかっていう不具合対策書は受け付けません。
せめて調査報告にしてください。
今日はシルビアが鎧を新調したいというので、デボネアのところに来ているのだ。
「ちょっと露出が高いかなって思うんだけど」
「じゃあスーツアーマーも見てみようか」
確かにビキニアーマーは露出が高い。
肌を見せる以外の使い道がない。
鎧としてどうなのか。
俺はシルビアがもう一度試着室に戻ったときにそんな事を考えていた。
「デボネア、それを見せて欲しいの」
試着室から再び出てきたシルビアがデボネアにスーツアーマーを見せて欲しいとお願いした。
デボネアはカウンターの後ろに飾ってあるスーツアーマーを持ち出す。
「痛いっ」
それを受け取った時に、シルビアは苦痛で顔をゆがめた。
デボネアが慌てて渡したスーツアーマーを持ち上げると、シルビアの指から血が流れているのが見えた。
「すまん、バリが残っていたようじゃ」
デボネアが謝る。
バリっていうのは金属などの加工部位の尖ったものをいう。
俺はシルビアの手を取ると、血の出ている指をぺろりと舐めた。
「何するのよ!」
シルビアが慌てて手を引っ込める。
「唾でもつけときゃ治るよ」
俺は笑いながらそう言った。
そう、前世ではバリで怪我した時はよく舐めていたな。
加工油の味がしたけど。
今回ももっと酷い怪我ならヒールを使ったけど、これくらいなら舐めとけばいいだろ。
そんなやり取りをしている脇で、デボネアがスーツアーマーのバリ取りを始める。
やすりでゴリゴリとバリを削っているのだ。
ああ、こんな光景よく見たな。
「バリの見逃しってよくあるの?」
俺は気になってデボネアに訊いた。
「どうしても見逃しはあるのう。頻度は感覚的なもんじゃが、まあ半年に一回はあるわい」
対策しろよ!って心の中でつっこんだ。
「バリの見逃しの対策か」
俺はどうしようかと考えていると、シルビアが
「あら、見逃しの対策じゃなくて、発生源の対策をするんじゃないの?」
と訊いてきた。
ああ、シルビアは発生源対策をしなければならないっていうのを理解してくれているんだ。
俺はその言葉を聞いて嬉しくなった。
「本来ならそうなんだけど、バリは加工をすれば必ず出るから、発生対策は出来ないんだよ。流出で止めるしかないんだ」
バリの出ない加工ってのもあるんだけど、この世界じゃ無理だな。
いや、オッティがいるから出来なくはないんだが、そうするとデボネアの仕事が無くなる。
それと、こういうのは対策書は悩んだよな。
発生源対策は出来ないとするべきなのか、それとも見逃しの発生を発生源とするべきなのか。
死ぬまでとうとうわからなかった。
提出先でも意見がわかれていたくらいだし。
「そうじゃのう。金属を加工すれば必ずバリは出る。バリを無くすのは不可能じゃな」
デボネアもうんうんと頷く。
切削でも抜きでもバリは出るよね。
小さくは出来るけど、無くすのは無理だ。
仕上げ工程でバリを除去するしかない。
そうか、仕上げ工程か。
「デボネア、バリの確認ってどうやっているの?」
「製品を手で触って確認しておるわい」
手感か。
「例えば今回のスーツアーマーだけど、どこから触ってどの順序でパーツを確認するとか決まっている?」
「それはないのう」
検査の標準作業がないのか。
とはいえ、一品ものの鎧で標準作業もないよな。
どうすれば見逃さない検査ができるのだろう。
対策として、合格基準を緩くするってのがあるな。
プレス部品のバリ合格基準なんてすごくラフだ。
製品のバリが手に刺さって血が出たが、それでもバリ高さを測定したら基準値に収まっていた。
しかし、今回はそれは駄目だな。
鎧を着て、バリで怪我していたら防具の意味がない。
「検査を手でやるからいけないのよ。実際に着てみたらいいんじゃない」
シルビアの思いつきがとても良かった。
確かに、自分で着てみればわかるか。
「それでいこうか」
「じゃあ、早速デボネアにビキニアーマーを着て貰わないとね」
シルビアがデボネアをギロリと睨む。
これは怪我をさせられた仕返しかな?
シルビアに睨まれてはデボネアも拒否できない。
渋々と店の奥で着替えを始める。
「これでどうじゃ?」
ドワーフの男のビキニアーマーに俺とシルビアは大爆笑。
デボネアはしばらく不機嫌な日々が続いたが、その後バリの見逃しはなくなった。
やっぱり、嫌な思いをすると不良を流出させなくなるよね。
※作者の独り言
金属に限らず、樹脂でもバリの問題はありますよね。
怪我、嵌合不良、コンタミと悪いことばかり。
流石に製造業もバリの出ない加工方法を編み出してきてはおりますが、全部に対応は出来ていないのが現状です。
小さなプレスメーカーなんて「怪我したらバリの対応します」とか平気で言ってくるからね。
バリが嫌なら部品単価上げろって事なんですけどね。
この辺は用語解説で。
シルビアが俺に訊いてくる。
「似合うと思うよ。試着してみようか」
「わかったわ。覗かないでよね」
「しないよ。命がおしいからね」
俺が軽口を叩くと、シルビアはべーっと舌を出して試着室に消えていった。
手がでなくなって大人しくなっただけじゃなくて、なんか仕草が可愛くなったな。
暫くして試着を終えたシルビアが出てくる。
「どう?」
そう訊かれたので
「似合っているよ」
そう答えた。
ビキニアーマーを着た彼女は嬉しそうに微笑む。
そう、ここはデボネアの店である。
いつの間に試着室が出来たのかっていう不具合対策書は受け付けません。
せめて調査報告にしてください。
今日はシルビアが鎧を新調したいというので、デボネアのところに来ているのだ。
「ちょっと露出が高いかなって思うんだけど」
「じゃあスーツアーマーも見てみようか」
確かにビキニアーマーは露出が高い。
肌を見せる以外の使い道がない。
鎧としてどうなのか。
俺はシルビアがもう一度試着室に戻ったときにそんな事を考えていた。
「デボネア、それを見せて欲しいの」
試着室から再び出てきたシルビアがデボネアにスーツアーマーを見せて欲しいとお願いした。
デボネアはカウンターの後ろに飾ってあるスーツアーマーを持ち出す。
「痛いっ」
それを受け取った時に、シルビアは苦痛で顔をゆがめた。
デボネアが慌てて渡したスーツアーマーを持ち上げると、シルビアの指から血が流れているのが見えた。
「すまん、バリが残っていたようじゃ」
デボネアが謝る。
バリっていうのは金属などの加工部位の尖ったものをいう。
俺はシルビアの手を取ると、血の出ている指をぺろりと舐めた。
「何するのよ!」
シルビアが慌てて手を引っ込める。
「唾でもつけときゃ治るよ」
俺は笑いながらそう言った。
そう、前世ではバリで怪我した時はよく舐めていたな。
加工油の味がしたけど。
今回ももっと酷い怪我ならヒールを使ったけど、これくらいなら舐めとけばいいだろ。
そんなやり取りをしている脇で、デボネアがスーツアーマーのバリ取りを始める。
やすりでゴリゴリとバリを削っているのだ。
ああ、こんな光景よく見たな。
「バリの見逃しってよくあるの?」
俺は気になってデボネアに訊いた。
「どうしても見逃しはあるのう。頻度は感覚的なもんじゃが、まあ半年に一回はあるわい」
対策しろよ!って心の中でつっこんだ。
「バリの見逃しの対策か」
俺はどうしようかと考えていると、シルビアが
「あら、見逃しの対策じゃなくて、発生源の対策をするんじゃないの?」
と訊いてきた。
ああ、シルビアは発生源対策をしなければならないっていうのを理解してくれているんだ。
俺はその言葉を聞いて嬉しくなった。
「本来ならそうなんだけど、バリは加工をすれば必ず出るから、発生対策は出来ないんだよ。流出で止めるしかないんだ」
バリの出ない加工ってのもあるんだけど、この世界じゃ無理だな。
いや、オッティがいるから出来なくはないんだが、そうするとデボネアの仕事が無くなる。
それと、こういうのは対策書は悩んだよな。
発生源対策は出来ないとするべきなのか、それとも見逃しの発生を発生源とするべきなのか。
死ぬまでとうとうわからなかった。
提出先でも意見がわかれていたくらいだし。
「そうじゃのう。金属を加工すれば必ずバリは出る。バリを無くすのは不可能じゃな」
デボネアもうんうんと頷く。
切削でも抜きでもバリは出るよね。
小さくは出来るけど、無くすのは無理だ。
仕上げ工程でバリを除去するしかない。
そうか、仕上げ工程か。
「デボネア、バリの確認ってどうやっているの?」
「製品を手で触って確認しておるわい」
手感か。
「例えば今回のスーツアーマーだけど、どこから触ってどの順序でパーツを確認するとか決まっている?」
「それはないのう」
検査の標準作業がないのか。
とはいえ、一品ものの鎧で標準作業もないよな。
どうすれば見逃さない検査ができるのだろう。
対策として、合格基準を緩くするってのがあるな。
プレス部品のバリ合格基準なんてすごくラフだ。
製品のバリが手に刺さって血が出たが、それでもバリ高さを測定したら基準値に収まっていた。
しかし、今回はそれは駄目だな。
鎧を着て、バリで怪我していたら防具の意味がない。
「検査を手でやるからいけないのよ。実際に着てみたらいいんじゃない」
シルビアの思いつきがとても良かった。
確かに、自分で着てみればわかるか。
「それでいこうか」
「じゃあ、早速デボネアにビキニアーマーを着て貰わないとね」
シルビアがデボネアをギロリと睨む。
これは怪我をさせられた仕返しかな?
シルビアに睨まれてはデボネアも拒否できない。
渋々と店の奥で着替えを始める。
「これでどうじゃ?」
ドワーフの男のビキニアーマーに俺とシルビアは大爆笑。
デボネアはしばらく不機嫌な日々が続いたが、その後バリの見逃しはなくなった。
やっぱり、嫌な思いをすると不良を流出させなくなるよね。
※作者の独り言
金属に限らず、樹脂でもバリの問題はありますよね。
怪我、嵌合不良、コンタミと悪いことばかり。
流石に製造業もバリの出ない加工方法を編み出してきてはおりますが、全部に対応は出来ていないのが現状です。
小さなプレスメーカーなんて「怪我したらバリの対応します」とか平気で言ってくるからね。
バリが嫌なら部品単価上げろって事なんですけどね。
この辺は用語解説で。
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