冒険者ギルド品質管理部 ~生まれ変わっても品管だけは嫌だと言ったのに~

犬野純

文字の大きさ
257 / 439

第256話 無理な事はしないで

しおりを挟む
 今日はオーリスと一緒にお皿を買いに出掛けている。
 俺はドワーフの陶工が作った皿は小砂焼のような瀟洒な出来がいいなと思ったが、オーリスはもっと派手なものがよいというので、九谷焼のような絵皿をいくつか購入することとなった。
 皿が割れるといけないので、収納魔法でしまいこみ、店の外に出るとシルビアが歩いていた。
 手には花束を持っている。

「まさか、告白されましたの?」

 オーリスは俺に小声で耳打ちする。

「どうかな?ドラゴンスレイヤーの騒ぎが落ち着いてからは、告白されることも無くなったみたいだけど」

 告白されるのではなく、告白するのであれば花束を持っていくのはおかしいよね。

「尾行してみましょう。アルトならシルビアが気がつかない距離で尾行できますかしら?」 

 オーリスの野次馬欲求に俺も乗った。
 ちょっと気になるからな。

「街の外れまで行きそうですわね」

 尾行をしていくと、シルビアはどんどん街の中心部から遠ざかって行く。

「あっちは墓地くらいしかないぞ」

「お墓参りかしら?」

「墓地で決闘ってこともあるかもしれないけど……」

 シルビアはそのまま墓地へと入っていく。
 俺とオーリスは無言で見つめ合うと、黙って頷いた。
 墓地の中に入って尾行を続ける。
 シルビアはとある墓地の前で止まると、花束を備えて祈りを捧げた。

「こっちー」

 運悪く、後ろから来た子供が大声で親を呼んだ。
 シルビアはその声に反応してこちらを見る。

「気づかれたな」

「ええ」

 シルビアと目があったので、今から隠れるのは悪手だ。
 ここは誤魔化すしかないな。
 祈りを終えたシルビアがこっちにやってきた。

「二人でこんなところで何しているのよ?」

 シルビアが訝しげな視線を投げてくる。

「オーリスと一緒に入るお墓を見に来てね。まさかシルビアがいるとは思わなかったよ」

 俺の話にオーリスが頷く。

「そう。まあいいわ」

 シルビアは納得いかなそうな口吻だが、それ以上は訊いてこなかった。

「シルビアこそ何でこんなところに?」

 そう訊ねると、彼女は空を仰いで深く息をはいた。

「ガゼール兄さんの命日なのよ」

「「兄さん……」」

 俺とオーリスがハモる。
 しまった、重たい話になりそうだ。

「あたしが冒険者になりたてのころ、ガゼール兄さんと一緒にパーティーを組んでいたわ。ある時、迷宮で全然モンスターに遭遇しなかったから、もっと下の階層に行ってみようってあたしが提案したの。兄さんは反対したけど、他の仲間も下の階層に行くことに賛成してくれたわ。結局多数決で押しきって、下の階層に行ったのよね」

 シルビアは再び大きく息を吐いた。

「結果、自分達の実力じゃどうにもならないモンスターに囲まれて死を覚悟したわ。その時ガゼール兄さんが『俺が囮になる』って言ってモンスターの注意を引いてくれたわ。仲間と一緒にモンスターの気が逸れた隙に逃げ出したけど、それが兄さんとの最期の別れになっちゃったのよね。死体は見つからなくって、遺品は冒険者登録証のみだったわ。このお墓にも兄さんはいないんだけど、花を手向ける場所くらい欲しいじゃない」

 話の内容に、俺とオーリスは言葉が出なかった。
 彼女に何と言葉をかけていいのかわからなかったのだ。

「やっぱり身の丈にあった事からはみ出しちゃ駄目よね。あの時アルトがいてくれたら、きっと下の階層に行くのを止めてくれていたと思うの。自分の無知と慢心が――」

 そこでシルビアは堪えきれず泣き出した。
 オーリスがシルビアを優しく抱き締める。
 俺?
 オーリスにつけられた指輪の効果で何も出来ませんよ。

 シルビアは落ち着いたところで、恥ずかしくなったのか、顔が真っ赤になっている。

「私達もお兄様のために祈らせて下さい」

 オーリスはシルビアを促し、ガゼールの墓石の前に移動する。
 今度は三人で祈りを捧げ、彼の冥福を願った。


※作者の独り言
やったことない工法の量産を受注するのは止めよう。
会社のリソースを大量につぎ込んでの敗戦処理。
弊社のインパール作戦。
止まらない不良と縮まらないサイクルタイム。
これが戦場や冒険だったら間違いなく死んでる。
残業時間見ると過労死出るかも知れないけど。
っていうことありますよね。
不良に対してなぜなぜ分析をすると、ノウハウも無いのに受注に前のめりって出てきます。
ふざけた話のひとつも入れようかと思ったけど、思いの外、重たい感じになったので、そのまま終わりました。

そうそう、ガゼールといえば西武警察!
当時の日産良かったなー。
決算が大赤字ですが、立ち直って欲しい。
シルビアは双子の妹180SXもいる設定です。
もはや人名じゃないけど。
真子と沙雪のどっちかです、多分。
こんな話をどこにいれていいのかわかりませんでした。

最終回迎えた後に毎日更新してますね。
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

爺さんの異世界建国記 〜荒廃した異世界を農業で立て直していきます。いきなりの土作りはうまくいかない。

秋田ノ介
ファンタジー
  88歳の爺さんが、異世界に転生して農業の知識を駆使して建国をする話。  異世界では、戦乱が絶えず、土地が荒廃し、人心は乱れ、国家が崩壊している。そんな世界を司る女神から、世界を救うように懇願される。爺は、耳が遠いせいで、村長になって村人が飢えないようにしてほしいと頼まれたと勘違いする。  その願いを叶えるために、農業で村人の飢えをなくすことを目標にして、生活していく。それが、次第に輪が広がり世界の人々に希望を与え始める。戦争で成人男性が極端に少ない世界で、13歳のロッシュという若者に転生した爺の周りには、ハーレムが出来上がっていく。徐々にその地に、流浪をしている者たちや様々な種族の者たちが様々な思惑で集まり、国家が出来上がっていく。  飢えを乗り越えた『村』は、王国から狙われることとなる。強大な軍事力を誇る王国に対して、ロッシュは知恵と知識、そして魔法や仲間たちと協力して、その脅威を乗り越えていくオリジナル戦記。  完結済み。全400話、150万字程度程度になります。元は他のサイトで掲載していたものを加筆修正して、掲載します。一日、少なくとも二話は更新します。  

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

転生社畜、転生先でも社畜ジョブ「書記」でブラック労働し、20年。前人未到のジョブレベルカンストからの大覚醒成り上がり!

nineyu
ファンタジー
 男は絶望していた。  使い潰され、いびられ、社畜生活に疲れ、気がつけば死に場所を求めて樹海を歩いていた。  しかし、樹海の先は異世界で、転生の影響か体も若返っていた!  リスタートと思い、自由に暮らしたいと思うも、手に入れていたスキルは前世の影響らしく、気がつけば変わらない社畜生活に、、  そんな不幸な男の転機はそこから20年。  累計四十年の社畜ジョブが、遂に覚醒する!!

転生幼女のチートな悠々自適生活〜伝統魔法を使い続けていたら気づけば賢者になっていた〜

犬社護
ファンタジー
ユミル(4歳)は気がついたら、崖下にある森の中に呆然と佇んでいた。 馬車が崖下に落下した影響で、前世の記憶を思い出したのだ。前世、日本伝統が子供の頃から大好きで、小中高大共に伝統に関わるクラブや学部に入り、卒業後はお世話になった大学教授の秘書となり、伝統のために毎日走り回っていたが、旅先の講演の合間、教授と2人で歩道を歩いていると、暴走車が突っ込んできたので、彼女は教授を助けるも、そのまま跳ね飛ばされてしまい、死を迎えてしまう。 享年は25歳。 周囲には散乱した荷物だけでなく、さっきまで会話していた家族が横たわっている。 25歳の精神だからこそ、これが何を意味しているのかに気づき、ショックを受ける。 大雨の中を泣き叫んでいる時、1体の小さな精霊カーバンクルが現れる。前世もふもふ好きだったユミルは、もふもふ精霊と会話することで悲しみも和らぎ、互いに打ち解けることに成功する。 精霊カーバンクルと仲良くなったことで、彼女は日本古来の伝統に関わる魔法を習得するのだが、チート魔法のせいで色々やらかしていく。まわりの精霊や街に住む平民や貴族達もそれに振り回されるものの、愛くるしく天真爛漫な彼女を見ることで、皆がほっこり心を癒されていく。 人々や精霊に愛されていくユミルは、伝統魔法で仲間たちと悠々自適な生活を目指します。

異世界でぼっち生活をしてたら幼女×2を拾ったので養うことにした【改稿版】

きたーの(旧名:せんせい)
ファンタジー
【毎週火木土更新】 自身のクラスが勇者召喚として呼ばれたのに乗り遅れてお亡くなりになってしまった主人公。 その瞬間を偶然にも神が見ていたことでほぼ不老不死に近い能力を貰い異世界へ! 約2万年の時を、ぼっちで過ごしていたある日、いつも通り森を闊歩していると2人の子供(幼女)に遭遇し、そこから主人公の物語が始まって行く……。 ――― 当作品は過去作品の改稿版です。情景描写等を厚くしております。 なお、投稿規約に基づき既存作品に関しては非公開としておりますためご理解のほどよろしくお願いいたします。

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

処理中です...