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第293話 エルフと鯛
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いやー、自動車業界とそれに関係する業界の決算も散々ですね。
それでは本編いってみましょう。
「アルト、ギルド長からの呼び出しよ」
俺が来月の工程巡回計画を立てていると、シルビアがやって来て、一緒にギルド長のところに行くように言ってきた。
二人を呼び出すということは、また何らかの特命だろうか。
いつものことだな。
それなら特命係長にして欲しい。
品質管理部長とどっちが上なのかわからないけど。
「よく来てくれたね」
執務室に入ると、ギルド長は書類に目を通していた。
それを止めて、俺達の方を見る。
「実はジェミニから相談にのって欲しいと手紙が来てね。君達をご指名だ」
ジェミニとはエルフの研究者だ。
格助詞って曖昧になる時あるよね。
本人がエルフで、研究内容がエルフだ。
のが示す意味が二つ。
文章を書くときは気を付けよう。
対策書なんかだと、わざと相手が勘違いするように書いたりするけどね。
具体的な書き方はここでは披露出来ませんが。
「指名なの?」
シルビアがギルド長に聞き返す。
「そう。エルフは隠れ里にいることが殆どだから、簡単には冒険者を招き入れることはしない。君達は一度あそこに行っているだろ。だから適任なんだよ」
そういわれるとそうだな。
村長の話を聞いた辺りで、消したい過去になってはいるが。
なので、今回も嫌な予感しかしない。
とはいえ、仕事なら断るわけにもいかないな。
「わかりました。具体的な内容はジェミニに訊くまでわからないという事ですね」
「そうだね。旅費は前払いで貰っているから、一先ず行くだけ行って貰えると助かるよ。内容によっては断っても構わないからね」
断ってもいいなら気がらくだな。
俺はそう思ったら、それが顔に出ていたらしい。
「アルト、何安心した顔をしているのよ。これからあたしと旅に出るのをオーリスに伝えなきゃならないんでしょ」
シルビアに言われて気がついた。
オーリスにシルビアとの二人旅を伝えなければならないのだ。
途端に顔が険しくなったのが、自分でもわかった。
「一緒に説得してくれる?」
「何情けない顔しているのよ。わかったわ、オーリスが聞き分けの無い事をいったら、二・三発ひっぱたいてやるわ!」
余計にややこしくなるのでやめてください。
結局独りでオーリスに事情を説明することになった。
オーリスとの話し合いの詳しいことは割愛するが、左の頬が痛いのでお察しください。
左の頬をぶたれたら右の頬も差し出す人、本気か?
いやー、選別で泊まりって嘘をついて、夜の街で遊んでいたのがばれてからというもの、選別で泊まりになったことを証明するのが大変なんだよね。
自業自得ですか……
おっと、今のは誰の記憶だ?
オーリスの説得を終えて、冒険者ギルドでシルビアとおちあい、さあ出発だと思ったら、目の前にジェミニがいるではないか。
前に会ったときは、白髪が肩程度までの長さだったけど、今は肩甲骨辺りまで伸びている。
「本物?」
思わず口をついてしまった。
なにせ、呼び出している本人がここにいるのなら、呼び出す必要はないからな。
よく似た別人の可能性が高いぞ。
前世でショッピングセンターで見かけた女性を、工場の事務員の女性だと思って声を掛けたら、実は妹だったという恥ずかしい過去があるからな。
双子だともっと見分けがつかないぞ。
エルフが多産なのかは知らないが、双子がいないわけではないだろう。
「本物さね。呼びつけようと思ったけど、ご時世がら経費節減のために、こうしてこちらから出向いてきたというわけさ。それにこちらからなら、入り口はどこにでも開けられるし」
自称本人。
いや、間違いなく本人登場だな。
そして、指定の場所に呼び出した意味が全く失くなるほどの設定。
更には本人が来るなら、俺がオーリスにひっぱたかれたのは、全くの無駄であったということか。
納得がいかん。
「叩かれ損ね」
シルビアが肘で俺の脇腹を小突きながら、ニヤニヤと笑う。
ぐぬぬ。
「で、なんの用があって隠れ里から出てきたんだ?」
ちょっと不機嫌になったので、ぶっきらぼうにジェミニに訊いた。
「実は鯛が不漁で困っているのさ」
「タイが不良?」
「多分、頭に浮かべている文字が同音異義語よ」
シルビアが横からツッコミをいれてきた。
エルフだけに、そんな同音異義語があっても違和感が無い。
いや、なんの事だかわからないけど。
「エルフっていうのは森の種族じゃないのか?鯛は海で獲れるんだろ」
なんで森で暮らすエルフが海で獲れる鯛の不漁でこまるんだ?
とある回転寿司の代用魚のテラピアじゃないよな?
というか、代用魚って品質偽装じゃないの?
シメジもシメジじゃないし。
山岡さんが言ってた。
「神話の時代からエルフの好物は鯛さね。特に頬の部分の肉は美味しくて、家族で取り合いになったりもする。頬の部分の骨は小さな鯛の形をしているから、鯛の鯛って呼ばれてるのさ。火の一族も鯛が好物なもんで、漁場でよく衝突もしとるよ」
タイでエルフとポリコレ的に火の一族としかいえなくなった、色ちがいのエルフがシェアを争っているのか。
タイでねえ……
「で、火の一族に漁場をとられでもしたの?それを取り返して欲しいとか?」
俺の質問にジェミニは首を横に振った。
そして続けて言う。
「魔王の瘴気の影響で、不漁になっていてねえ。魔王を倒してくれるのが一番いいんじゃが、それは流石に酷ってもんだとわかっている。鯛をどこからか調達するルートが確保できないかと思ってね」
「それなら俺達じゃなくて、商人ギルドにでも行けばいいんじゃないか」
「そんなことをしたら、隠れ里の意味が失くなるじゃないか。単に調達するだけじゃなく、里の秘密を守る事も出来ないと駄目さね」
そうか。
前世なら守秘義務契約を結べばいいのだが、ここではそんな概念が無いか。
「ギアスの魔法で縛ってもいいけど、商売は信頼関係が大切じゃろ?」
あ、手段はあるのか。
「というわけで、鯛を調達して欲しい」
ジェミニが頭を下げる。
「しかしなあ、魔王の瘴気というなら、この世界のどこでも一緒じゃないのかな。無理だと思うけど」
これはおいそれと安請け合いは出来ない。
そもそも、品質管理のジョブで鯛をどうこう出来るものでもないし。
「ほれ、仲間で便利なスキルを持ったのがおったじゃろ」
「ああ、オティえもんか……」
確かに、オッティならプラント生成スキルで、鯛の養殖プラントを作り出せるだろうな。
「養殖でもいいかな?」
「養殖でもかまわんよ」
そんなわけで話は纏まり、俺がオッティに鯛の養殖を頼むことになった。
グレイス領までの移動時間を短縮するため、ジェミニによって移動の扉を出してもらう。
どこでも扉だな。
これで行き先が湯浴みをしているグレイスのところなら完璧なんだが。
「お願いします、F先生!」
俺は天国のF先生にお願いして、移動の扉を潜る。
「アルト、何を言っているの?」
後ろからシルビアの怪訝そうな声が聞こえた。
「しずかに!」
そう言い返す。
そうだ、しずかなのだ。
国境の長い扉を抜けるとグレイス領だった。
なお、お風呂では無い。
ついでに、雪国でもない。
無念……
気を取り直して、ジェミニとシルビアと三人でオッティのところに向かう。
いつものように、賢者の学院で何やら研究をしていた。
「ここでは環境問題なんて存在しないから」との言葉に、こんな奴に鯛の養殖を任せてもよいのかと思ったが、多分異世界だから大丈夫。
ここに来た目的を話すと、オッティが嫌そうな顔をした。
「嫌なのか?」
そう訊ねると、オッティは首を横に振った。
「エルフ、鯛、不漁の単語で嫌なことを思い出しただけだ。キーワードはクーデター」
「あー」
思わず俺も同意した。
まあ、同音異義語だから気にしたら負けだ。
鯛の養殖は無事に引き受けてもらえました。
※作者の独り言
クーデターあった時は大変でしたね。
連絡つかずに生死不明とか。
生きていましたけど、隠れていたんだとか。
個人的な理由ですが、暫くエルフが嫌いになりそうです。
それでは本編いってみましょう。
「アルト、ギルド長からの呼び出しよ」
俺が来月の工程巡回計画を立てていると、シルビアがやって来て、一緒にギルド長のところに行くように言ってきた。
二人を呼び出すということは、また何らかの特命だろうか。
いつものことだな。
それなら特命係長にして欲しい。
品質管理部長とどっちが上なのかわからないけど。
「よく来てくれたね」
執務室に入ると、ギルド長は書類に目を通していた。
それを止めて、俺達の方を見る。
「実はジェミニから相談にのって欲しいと手紙が来てね。君達をご指名だ」
ジェミニとはエルフの研究者だ。
格助詞って曖昧になる時あるよね。
本人がエルフで、研究内容がエルフだ。
のが示す意味が二つ。
文章を書くときは気を付けよう。
対策書なんかだと、わざと相手が勘違いするように書いたりするけどね。
具体的な書き方はここでは披露出来ませんが。
「指名なの?」
シルビアがギルド長に聞き返す。
「そう。エルフは隠れ里にいることが殆どだから、簡単には冒険者を招き入れることはしない。君達は一度あそこに行っているだろ。だから適任なんだよ」
そういわれるとそうだな。
村長の話を聞いた辺りで、消したい過去になってはいるが。
なので、今回も嫌な予感しかしない。
とはいえ、仕事なら断るわけにもいかないな。
「わかりました。具体的な内容はジェミニに訊くまでわからないという事ですね」
「そうだね。旅費は前払いで貰っているから、一先ず行くだけ行って貰えると助かるよ。内容によっては断っても構わないからね」
断ってもいいなら気がらくだな。
俺はそう思ったら、それが顔に出ていたらしい。
「アルト、何安心した顔をしているのよ。これからあたしと旅に出るのをオーリスに伝えなきゃならないんでしょ」
シルビアに言われて気がついた。
オーリスにシルビアとの二人旅を伝えなければならないのだ。
途端に顔が険しくなったのが、自分でもわかった。
「一緒に説得してくれる?」
「何情けない顔しているのよ。わかったわ、オーリスが聞き分けの無い事をいったら、二・三発ひっぱたいてやるわ!」
余計にややこしくなるのでやめてください。
結局独りでオーリスに事情を説明することになった。
オーリスとの話し合いの詳しいことは割愛するが、左の頬が痛いのでお察しください。
左の頬をぶたれたら右の頬も差し出す人、本気か?
いやー、選別で泊まりって嘘をついて、夜の街で遊んでいたのがばれてからというもの、選別で泊まりになったことを証明するのが大変なんだよね。
自業自得ですか……
おっと、今のは誰の記憶だ?
オーリスの説得を終えて、冒険者ギルドでシルビアとおちあい、さあ出発だと思ったら、目の前にジェミニがいるではないか。
前に会ったときは、白髪が肩程度までの長さだったけど、今は肩甲骨辺りまで伸びている。
「本物?」
思わず口をついてしまった。
なにせ、呼び出している本人がここにいるのなら、呼び出す必要はないからな。
よく似た別人の可能性が高いぞ。
前世でショッピングセンターで見かけた女性を、工場の事務員の女性だと思って声を掛けたら、実は妹だったという恥ずかしい過去があるからな。
双子だともっと見分けがつかないぞ。
エルフが多産なのかは知らないが、双子がいないわけではないだろう。
「本物さね。呼びつけようと思ったけど、ご時世がら経費節減のために、こうしてこちらから出向いてきたというわけさ。それにこちらからなら、入り口はどこにでも開けられるし」
自称本人。
いや、間違いなく本人登場だな。
そして、指定の場所に呼び出した意味が全く失くなるほどの設定。
更には本人が来るなら、俺がオーリスにひっぱたかれたのは、全くの無駄であったということか。
納得がいかん。
「叩かれ損ね」
シルビアが肘で俺の脇腹を小突きながら、ニヤニヤと笑う。
ぐぬぬ。
「で、なんの用があって隠れ里から出てきたんだ?」
ちょっと不機嫌になったので、ぶっきらぼうにジェミニに訊いた。
「実は鯛が不漁で困っているのさ」
「タイが不良?」
「多分、頭に浮かべている文字が同音異義語よ」
シルビアが横からツッコミをいれてきた。
エルフだけに、そんな同音異義語があっても違和感が無い。
いや、なんの事だかわからないけど。
「エルフっていうのは森の種族じゃないのか?鯛は海で獲れるんだろ」
なんで森で暮らすエルフが海で獲れる鯛の不漁でこまるんだ?
とある回転寿司の代用魚のテラピアじゃないよな?
というか、代用魚って品質偽装じゃないの?
シメジもシメジじゃないし。
山岡さんが言ってた。
「神話の時代からエルフの好物は鯛さね。特に頬の部分の肉は美味しくて、家族で取り合いになったりもする。頬の部分の骨は小さな鯛の形をしているから、鯛の鯛って呼ばれてるのさ。火の一族も鯛が好物なもんで、漁場でよく衝突もしとるよ」
タイでエルフとポリコレ的に火の一族としかいえなくなった、色ちがいのエルフがシェアを争っているのか。
タイでねえ……
「で、火の一族に漁場をとられでもしたの?それを取り返して欲しいとか?」
俺の質問にジェミニは首を横に振った。
そして続けて言う。
「魔王の瘴気の影響で、不漁になっていてねえ。魔王を倒してくれるのが一番いいんじゃが、それは流石に酷ってもんだとわかっている。鯛をどこからか調達するルートが確保できないかと思ってね」
「それなら俺達じゃなくて、商人ギルドにでも行けばいいんじゃないか」
「そんなことをしたら、隠れ里の意味が失くなるじゃないか。単に調達するだけじゃなく、里の秘密を守る事も出来ないと駄目さね」
そうか。
前世なら守秘義務契約を結べばいいのだが、ここではそんな概念が無いか。
「ギアスの魔法で縛ってもいいけど、商売は信頼関係が大切じゃろ?」
あ、手段はあるのか。
「というわけで、鯛を調達して欲しい」
ジェミニが頭を下げる。
「しかしなあ、魔王の瘴気というなら、この世界のどこでも一緒じゃないのかな。無理だと思うけど」
これはおいそれと安請け合いは出来ない。
そもそも、品質管理のジョブで鯛をどうこう出来るものでもないし。
「ほれ、仲間で便利なスキルを持ったのがおったじゃろ」
「ああ、オティえもんか……」
確かに、オッティならプラント生成スキルで、鯛の養殖プラントを作り出せるだろうな。
「養殖でもいいかな?」
「養殖でもかまわんよ」
そんなわけで話は纏まり、俺がオッティに鯛の養殖を頼むことになった。
グレイス領までの移動時間を短縮するため、ジェミニによって移動の扉を出してもらう。
どこでも扉だな。
これで行き先が湯浴みをしているグレイスのところなら完璧なんだが。
「お願いします、F先生!」
俺は天国のF先生にお願いして、移動の扉を潜る。
「アルト、何を言っているの?」
後ろからシルビアの怪訝そうな声が聞こえた。
「しずかに!」
そう言い返す。
そうだ、しずかなのだ。
国境の長い扉を抜けるとグレイス領だった。
なお、お風呂では無い。
ついでに、雪国でもない。
無念……
気を取り直して、ジェミニとシルビアと三人でオッティのところに向かう。
いつものように、賢者の学院で何やら研究をしていた。
「ここでは環境問題なんて存在しないから」との言葉に、こんな奴に鯛の養殖を任せてもよいのかと思ったが、多分異世界だから大丈夫。
ここに来た目的を話すと、オッティが嫌そうな顔をした。
「嫌なのか?」
そう訊ねると、オッティは首を横に振った。
「エルフ、鯛、不漁の単語で嫌なことを思い出しただけだ。キーワードはクーデター」
「あー」
思わず俺も同意した。
まあ、同音異義語だから気にしたら負けだ。
鯛の養殖は無事に引き受けてもらえました。
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連絡つかずに生死不明とか。
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