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第299話 特採申請
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※ここに出てくる自動車の部品で特採申請を行った訳ではありません。
流石というか、冒険者ギルドに出されたアウトレット品販売組織摘発の依頼を受けた冒険者達は次々と組織の人間を捕まえていった。
それにしても、一大流通システムが構築されていたとは驚きだ。
売り手も買い手も需要があったということかな。
前世のアウトレットなどは、最初からそれ狙いで生産していた会社もあったくらいだから、わからなくもないな。
「これでサファリパークもお仕舞いね。ボスのサファリは捕まってないけど、一人じゃ仕入れと販売なんて無理だわ」
俺のところにシルビアが油を売りに来た。
そう、組織の名前はサファリパーク。
そして、ボスの名前はサファリ。
捕まえた組織の人間から仕入れた情報だ。
どうやら人間の男らしいのだが、年齢や顔立ちはまだわかっていない。
相当用心深いな。
寸法不良の製品をそのまま流すときに、データロガーのデータを消去する現場の班長のようだ。
勿論、弊社の事ではありませんよ。
「どうも、街の人たちが捜査を邪魔するみたいなのよね」
シルビアはそう言うと、俺の真似をしてコーヒーを飲んだ。
苦そうな顔をして、舌を口から出す。
コーヒーの苦さがうまいと感じられないとは、まだまだお子ちゃまだな。
俺がそう思ってニヤリとしたら、キッと睨まれた。
昔ならそのまま飲み残したコーヒーを顔にかけられていただろう。
「邪魔をするって、捜査情報を組織に流したりとか?」
「そうなのよ。おとり捜査が空振りに終わるのもそのせいじゃないかっていわれているわ」
なんかスペースノイドが赤い人を匿った話みたいね。
我々は地球連邦政府ではなくて、単なる冒険者ギルドと冒険者だけど。
「でも、それだけ市井の人々には好かれているってことだよね」
「そうね。いうなれば義賊ね。きっちり利益を出しているから正義感からって事でもないでしょうけど。それもわからずにもてはやす輩もいるからたちが悪いわね」
不良品を使えればいいというニーズとマッチさせるのは悪い事なのだろうか?
「やっぱりそれって悪い事じゃないよね?」
どうにも考えれば考えるほど心苦しくなり、シルビアに同意を求めた。
気が付けば額にうっすらと汗が浮かんでいるのがわかった。
「法律違反なんだから悪い事でしょ。どんなに理不尽な法律だったとしても、違反すれば処罰されるのはわかっていることじゃない。使えるからいいって考えだったら、良品と不良品の線引きが曖昧になるわ。人の見方によってどちらにでもなるでしょ。今回とは逆に、使えるのに使えないって判断されたら不良になっちゃうわよ。曖昧な判断にならないためにも規格は必要だわ」
正論で返されてぐうの音も出なかったので、シルビアの同意を得るのは諦めた。
その日はずっとサファリの事を考えて一日が終わった。
気分的には岡星でお酒を飲みたいが、真っすぐに帰る。
というか、岡星はここにはない。
異世界居酒屋として、店ごと転移してこないものか。
「っていうことがあってね、なんとかならないかな?」
オーリスにサファリパークの摘発の話をして、解決策が無いかを訊ねる。
「確かに使えるものを捨てちゃうのはもったいないですわね。こちらの冒険者ギルドにも国からの依頼が出ているから、話は聞いてましたけど」
オーリスは使えるなら使おうという意見に賛同してくれた。
「それにしても、アルトが不良品を使いたいなんて珍しいですわね。てっきり『不良は廃棄だ!』って言うのかと思ってましたわ」
「そうでもないさ。作ったからには出来る限り使いたいからね」
「でも、規格を満たしていなければ、納品は出来ないのですわよね?」
「前世じゃ特別採用申請、特採っていう制度があったんだよ。不良の内容によっては本来の価格から値引きして購入してもいいよってね」
そう、特別採用の仕組みがあったのだ。
いうなれば訳あり品の先駆けだな。
大抵半額くらいに買い叩かれるのだが、廃棄するよりはましなので、特採申請をだして使ってもらうのだ。
偉い人には受けが悪く、「そんなの黙って出荷しろ」とか言われることがあるらしい。
噂話を聞いただけなので、やったことはありません。
本当だよ。
でも、特採が一切認められないとしたら、廃却出来ないと判断したら、出荷してしまうだろうな。
使えないわけじゃないくらいだから、客に気づかれない可能性だってあるし。
そんな事を防止するためにも、特採は極力認めてください。
誰に言っているんだか……
「あら、じゃあそれを使えば違法じゃなくなるかしら」
オーリスが意外な一言を言った。
暗闇の中で一筋の光明が見えた気がした。
「そんなことが可能なの?」
「んー、そのままだと不良品の販売で違法だけど、申請を出してもらって暫定合格品にすれば合法になるんじゃないかしら」
確かにそうかもしれないな。
しかも、一般の住民がやっていればどうなるかはわからないが、オーリスの許可ともなればおいそれと横やりを入れてくることもないだろう。
「早速明日にでも御触れを出して、公式に特別採用を認めてみますわ」
オーリスはその言葉の通り、翌日特採申請を制度として発表した。
これによりサファリパークの仕事は公に取られてしまい、自然と消滅してしまった。
終ぞサファリの正体はつかめないままだったが、俺は彼が捕まらなかったことにホッとした。
なにせ気持ちがよくわかるからだ。
使えるものなら売りたいよな。
※作者の独り言
特採申請を書く時にはいつも悩みますね。
作り直すべきかどうかを。
規格を外れるものを作るなよって話ですけどね。
それにしても、特採した部品を使っているのに、完成車両の販売価格が安くならないのは納得いかない。
流石というか、冒険者ギルドに出されたアウトレット品販売組織摘発の依頼を受けた冒険者達は次々と組織の人間を捕まえていった。
それにしても、一大流通システムが構築されていたとは驚きだ。
売り手も買い手も需要があったということかな。
前世のアウトレットなどは、最初からそれ狙いで生産していた会社もあったくらいだから、わからなくもないな。
「これでサファリパークもお仕舞いね。ボスのサファリは捕まってないけど、一人じゃ仕入れと販売なんて無理だわ」
俺のところにシルビアが油を売りに来た。
そう、組織の名前はサファリパーク。
そして、ボスの名前はサファリ。
捕まえた組織の人間から仕入れた情報だ。
どうやら人間の男らしいのだが、年齢や顔立ちはまだわかっていない。
相当用心深いな。
寸法不良の製品をそのまま流すときに、データロガーのデータを消去する現場の班長のようだ。
勿論、弊社の事ではありませんよ。
「どうも、街の人たちが捜査を邪魔するみたいなのよね」
シルビアはそう言うと、俺の真似をしてコーヒーを飲んだ。
苦そうな顔をして、舌を口から出す。
コーヒーの苦さがうまいと感じられないとは、まだまだお子ちゃまだな。
俺がそう思ってニヤリとしたら、キッと睨まれた。
昔ならそのまま飲み残したコーヒーを顔にかけられていただろう。
「邪魔をするって、捜査情報を組織に流したりとか?」
「そうなのよ。おとり捜査が空振りに終わるのもそのせいじゃないかっていわれているわ」
なんかスペースノイドが赤い人を匿った話みたいね。
我々は地球連邦政府ではなくて、単なる冒険者ギルドと冒険者だけど。
「でも、それだけ市井の人々には好かれているってことだよね」
「そうね。いうなれば義賊ね。きっちり利益を出しているから正義感からって事でもないでしょうけど。それもわからずにもてはやす輩もいるからたちが悪いわね」
不良品を使えればいいというニーズとマッチさせるのは悪い事なのだろうか?
「やっぱりそれって悪い事じゃないよね?」
どうにも考えれば考えるほど心苦しくなり、シルビアに同意を求めた。
気が付けば額にうっすらと汗が浮かんでいるのがわかった。
「法律違反なんだから悪い事でしょ。どんなに理不尽な法律だったとしても、違反すれば処罰されるのはわかっていることじゃない。使えるからいいって考えだったら、良品と不良品の線引きが曖昧になるわ。人の見方によってどちらにでもなるでしょ。今回とは逆に、使えるのに使えないって判断されたら不良になっちゃうわよ。曖昧な判断にならないためにも規格は必要だわ」
正論で返されてぐうの音も出なかったので、シルビアの同意を得るのは諦めた。
その日はずっとサファリの事を考えて一日が終わった。
気分的には岡星でお酒を飲みたいが、真っすぐに帰る。
というか、岡星はここにはない。
異世界居酒屋として、店ごと転移してこないものか。
「っていうことがあってね、なんとかならないかな?」
オーリスにサファリパークの摘発の話をして、解決策が無いかを訊ねる。
「確かに使えるものを捨てちゃうのはもったいないですわね。こちらの冒険者ギルドにも国からの依頼が出ているから、話は聞いてましたけど」
オーリスは使えるなら使おうという意見に賛同してくれた。
「それにしても、アルトが不良品を使いたいなんて珍しいですわね。てっきり『不良は廃棄だ!』って言うのかと思ってましたわ」
「そうでもないさ。作ったからには出来る限り使いたいからね」
「でも、規格を満たしていなければ、納品は出来ないのですわよね?」
「前世じゃ特別採用申請、特採っていう制度があったんだよ。不良の内容によっては本来の価格から値引きして購入してもいいよってね」
そう、特別採用の仕組みがあったのだ。
いうなれば訳あり品の先駆けだな。
大抵半額くらいに買い叩かれるのだが、廃棄するよりはましなので、特採申請をだして使ってもらうのだ。
偉い人には受けが悪く、「そんなの黙って出荷しろ」とか言われることがあるらしい。
噂話を聞いただけなので、やったことはありません。
本当だよ。
でも、特採が一切認められないとしたら、廃却出来ないと判断したら、出荷してしまうだろうな。
使えないわけじゃないくらいだから、客に気づかれない可能性だってあるし。
そんな事を防止するためにも、特採は極力認めてください。
誰に言っているんだか……
「あら、じゃあそれを使えば違法じゃなくなるかしら」
オーリスが意外な一言を言った。
暗闇の中で一筋の光明が見えた気がした。
「そんなことが可能なの?」
「んー、そのままだと不良品の販売で違法だけど、申請を出してもらって暫定合格品にすれば合法になるんじゃないかしら」
確かにそうかもしれないな。
しかも、一般の住民がやっていればどうなるかはわからないが、オーリスの許可ともなればおいそれと横やりを入れてくることもないだろう。
「早速明日にでも御触れを出して、公式に特別採用を認めてみますわ」
オーリスはその言葉の通り、翌日特採申請を制度として発表した。
これによりサファリパークの仕事は公に取られてしまい、自然と消滅してしまった。
終ぞサファリの正体はつかめないままだったが、俺は彼が捕まらなかったことにホッとした。
なにせ気持ちがよくわかるからだ。
使えるものなら売りたいよな。
※作者の独り言
特採申請を書く時にはいつも悩みますね。
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