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第301話 汎用ライン
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「アルト、エランがまたやらかしちゃったの!」
ミゼットが小泉局長よろしく、品質管理部に乗り込んできた。
それにしても、またもエランの失敗か。
今度は何をやらかしたというのだろうか。
不謹慎なワクワクが心の内から湧き出してくるのを悟られないように、カップに残っていたコーヒーを飲んで、にやついた顔の中心をミゼットから見えないようにした。
「また?」
落ち着いた顔に戻り、カップを机に置くとミゼットにそう訊いた。
「笑ってる?」
ミゼットが少しムッとした表情を見せた。
ばれたか。
婀娜めくとまではいかないが、大人びてきたななどと考えていたら、追加で怒られた。
さて、真面目に話を訊くか。
「それで、どんな失敗があったんだ?」
「えっとね、赤マンドラゴラのポーションを作るときに、普通のマンドラゴラを煮る鍋をよく洗わなかったから、煮汁が混ざっちゃったの。異物混入?」
「段取り替えの失敗か」
聞いた話だと、段取り替え時のミスだな。
鍋をよく洗うというのが、感覚でしかないような気がする。
ここはやはり、三現主義に従って、現場を見に行かないとだな。
「あれ、そういえばミゼットはこの前まで俺より品質管理に詳しかったよね?」
そんなことを思い出した。
俺なんか呼ばなくても、自分で対策を考えられるだろうに。
「あれは悪霊に取り憑かれていたから」
品質管理は悪霊!
そんな悪霊なら、前世でお会いしたかった。
それはそうと、現場にレッツラゴー。
勝手知ったるポーション製造部。
エランが親方に怒鳴られている現場に到着だ。
鍋を囲んで親方とエランという立ち位置になっている。
鍋を囲むというと和やかな雰囲気に聞こえるな。
実際にはピリピリした雰囲気だぞ。
今にもエランは逃げ出しそうだ。
まあ、この世界線では追いかけるのに使えるスキルを覚えているからいいけど。
これがSTEINS;GATEの選択ですよ。
誰向けの説明なんだか。
「おかりん、じゃなかった。親方、ミゼットから話は聞きました。ここからは自分に任せてください」
「頼んだぜ」
親方はそういうと、何処かへと行ってしまった。
エランが話しやすいように、彼なりに気を遣ってくれているのだ。
ま、前世じゃ班長や係長がいなくなると、作業者はなんとか品管を騙して、自責を誤魔化そうとしていたけどな。
さて、エランの聞き取りを始めるとするか。
「話はミゼットから聞いたよ。鍋をよく洗わなかったのが原因で赤マンドラゴラのポーションに普通のマンドラゴラが混ざったんだって」
俺がそういうと、エランは頷いた。
「よく洗うっていうのが曖昧でわからないんだけど、どうすればいいのか説明してもらえますかね?」
俺はエランに説明をお願いした。
まあ、この手の作業指示なんて部外者には全くわからないからな。
前世でも「よく見る」と作業標準書に書いてあったが、何をもってよくなのかがわからない。
普通に見るのとどう違うというのだ。
とまあ、品管目線だとそうなるのだが、班長は当然ながら作業者までそれで納得しているのだ。
困ったものですね。
「うーん、よく洗うってのは納得がいくまで洗うことかな」
エランの回答も非常に曖昧だ。
本人が納得いけばどんな状態でもよく洗った状態だというのだ。
だからこそ、今回のような煮汁残りが発生したんじゃないだろうか。
そういえば、どうして煮汁が残っていたなんてわかったのだろうか。
「よく洗ったはずの鍋に煮汁が残っていた。間違いないですね」
「はい」
「じゃあ、どうして煮汁が残っているのがわかったのですか?」
「親方が出来を確認したから」
エランの答えは親方の確認があったからだという。
なんでエランはわからなかったのか。
そして、全部作ってからわかったのはどうしてなのか。
そこを確認すると
「親方はポーションソムリエの資格を持っているから。確か黒帯って言っていたかな」
「そんな資格があるのも初耳だけど、階級が帯の色っていうのもびっくりだ。普通は数字とかじゃないのか?」
「そうなんだけど、ポーション検定協会を立ち上げた人が、『階級は帯の色で表現する』って言ったらしいよ」
そいつは多分転生してきた日本人じゃないかな。
それか柔道経験者のどちらかだな。
話が逸れた。
「全部作ってから確認じゃなくて、最初に少しだけ作って確認するわけにはいかないかな?」
俺はエランに提案してみた。
初品チェックをしないと、今回みたいにロットアウトになっちゃうからな。
「それが、赤マンドラゴラの量が少ないから一度に全部つくるしかないんだ。何度も作るほどラインに余裕がないからね」
エランが申し訳なさそうに言う。
流出はしていないが、流出対策としてはチェックのタイミングをもっと前にしたいところだが難しそうだな。
まずは発生原因からつぶしていこうか。
そういえば、発生原因はよく洗うっていうのが出来ていなかったからなんだが、そもそも別の鍋にしてみたらどうなのだろうか。
別々の鍋にすれば段取り替えでの煮汁残りをチェックしなくても済むしな。
「たまにしか作らない赤マンドラゴラのポーションのために、もう一個鍋を用意するのは難しいんじゃないかな」
エランは言う。
確かにそうだよな。
プラスチック成形だってクリア成形専用ラインが作れずに、異物が混入する不具合が後を絶たないのだからな。
そうか、クリア成形か。
「赤マンドラゴラのポーション製造を他所に頼もう」
俺の提案にエランとミゼットが驚く。
前世じゃこれもよくあった事だが、こちらでは外注という考えはないのかな。
クリア成形なんて不良の出やすい製品なんかは、外注に出してしまえば社内の不良は無くなるぞ。
製造も段取り替えが発生しなくなるから大喜びだ。
押し付けられた子会社はたまったものじゃないけどな。
そう、どこの協力メーカーも嫌がって引き受けないので、文句の言えない子会社に押し付けるのだ。
不良の多くて利益の出ない仕事ばかり来て大変そうでしたね。
拒否しようものなら、親会社の権限で社長の首を挿げ替えて終わりだからね。
っていうのを色々とみてきました。
子会社も大変ですね。
これもなぜなぜ分析でたどり着いちゃいけないやつか。
「そうか、別のところにお願いすればいいのか。親方に相談してみるよ」
エランが親方に相談して、ポーションを製造する他の工房に話をしてみることになった。
「アルト、やっと赤マンドラゴラのポーションを作るところが決まったぜ」
数か月後、親方が俺の所にやってきてそう言った。
すっかり忘れていたのだが、そんなことはおくびにも出さない。
品管が不良を忘れるなんてばつが悪いからね。
誤魔化すために、コーヒーを落ち着いて飲み干す。
「そうですか。よかった。どうなったかと毎日気をもんでいたんですよ」
「気をもんでいたなら、何回かは聞きに来ればいいのになあ。忘れていたんだろ」
親方はあきれ顔で俺を見る。
バレテーラ。
「で、どうなりました」
「冒険者ギルドの本部で一括して生産して、各地に配ることになった。それなら生産量もまとまるからな」
「そうですか」
元々赤字事業だったことだし、それはそれでよかったな。
最初からそうしていれば、採算も取れていたんじゃないかな?
なんにしても、段取り替えが無くなったのは良かった。
これで不良の原因が一つ減ったからな。
※作者の独り言
面倒くさい仕事は別会社に投げるのはやめましょう。
弊社の営業が喜んで食いつくので。
ミゼットが小泉局長よろしく、品質管理部に乗り込んできた。
それにしても、またもエランの失敗か。
今度は何をやらかしたというのだろうか。
不謹慎なワクワクが心の内から湧き出してくるのを悟られないように、カップに残っていたコーヒーを飲んで、にやついた顔の中心をミゼットから見えないようにした。
「また?」
落ち着いた顔に戻り、カップを机に置くとミゼットにそう訊いた。
「笑ってる?」
ミゼットが少しムッとした表情を見せた。
ばれたか。
婀娜めくとまではいかないが、大人びてきたななどと考えていたら、追加で怒られた。
さて、真面目に話を訊くか。
「それで、どんな失敗があったんだ?」
「えっとね、赤マンドラゴラのポーションを作るときに、普通のマンドラゴラを煮る鍋をよく洗わなかったから、煮汁が混ざっちゃったの。異物混入?」
「段取り替えの失敗か」
聞いた話だと、段取り替え時のミスだな。
鍋をよく洗うというのが、感覚でしかないような気がする。
ここはやはり、三現主義に従って、現場を見に行かないとだな。
「あれ、そういえばミゼットはこの前まで俺より品質管理に詳しかったよね?」
そんなことを思い出した。
俺なんか呼ばなくても、自分で対策を考えられるだろうに。
「あれは悪霊に取り憑かれていたから」
品質管理は悪霊!
そんな悪霊なら、前世でお会いしたかった。
それはそうと、現場にレッツラゴー。
勝手知ったるポーション製造部。
エランが親方に怒鳴られている現場に到着だ。
鍋を囲んで親方とエランという立ち位置になっている。
鍋を囲むというと和やかな雰囲気に聞こえるな。
実際にはピリピリした雰囲気だぞ。
今にもエランは逃げ出しそうだ。
まあ、この世界線では追いかけるのに使えるスキルを覚えているからいいけど。
これがSTEINS;GATEの選択ですよ。
誰向けの説明なんだか。
「おかりん、じゃなかった。親方、ミゼットから話は聞きました。ここからは自分に任せてください」
「頼んだぜ」
親方はそういうと、何処かへと行ってしまった。
エランが話しやすいように、彼なりに気を遣ってくれているのだ。
ま、前世じゃ班長や係長がいなくなると、作業者はなんとか品管を騙して、自責を誤魔化そうとしていたけどな。
さて、エランの聞き取りを始めるとするか。
「話はミゼットから聞いたよ。鍋をよく洗わなかったのが原因で赤マンドラゴラのポーションに普通のマンドラゴラが混ざったんだって」
俺がそういうと、エランは頷いた。
「よく洗うっていうのが曖昧でわからないんだけど、どうすればいいのか説明してもらえますかね?」
俺はエランに説明をお願いした。
まあ、この手の作業指示なんて部外者には全くわからないからな。
前世でも「よく見る」と作業標準書に書いてあったが、何をもってよくなのかがわからない。
普通に見るのとどう違うというのだ。
とまあ、品管目線だとそうなるのだが、班長は当然ながら作業者までそれで納得しているのだ。
困ったものですね。
「うーん、よく洗うってのは納得がいくまで洗うことかな」
エランの回答も非常に曖昧だ。
本人が納得いけばどんな状態でもよく洗った状態だというのだ。
だからこそ、今回のような煮汁残りが発生したんじゃないだろうか。
そういえば、どうして煮汁が残っていたなんてわかったのだろうか。
「よく洗ったはずの鍋に煮汁が残っていた。間違いないですね」
「はい」
「じゃあ、どうして煮汁が残っているのがわかったのですか?」
「親方が出来を確認したから」
エランの答えは親方の確認があったからだという。
なんでエランはわからなかったのか。
そして、全部作ってからわかったのはどうしてなのか。
そこを確認すると
「親方はポーションソムリエの資格を持っているから。確か黒帯って言っていたかな」
「そんな資格があるのも初耳だけど、階級が帯の色っていうのもびっくりだ。普通は数字とかじゃないのか?」
「そうなんだけど、ポーション検定協会を立ち上げた人が、『階級は帯の色で表現する』って言ったらしいよ」
そいつは多分転生してきた日本人じゃないかな。
それか柔道経験者のどちらかだな。
話が逸れた。
「全部作ってから確認じゃなくて、最初に少しだけ作って確認するわけにはいかないかな?」
俺はエランに提案してみた。
初品チェックをしないと、今回みたいにロットアウトになっちゃうからな。
「それが、赤マンドラゴラの量が少ないから一度に全部つくるしかないんだ。何度も作るほどラインに余裕がないからね」
エランが申し訳なさそうに言う。
流出はしていないが、流出対策としてはチェックのタイミングをもっと前にしたいところだが難しそうだな。
まずは発生原因からつぶしていこうか。
そういえば、発生原因はよく洗うっていうのが出来ていなかったからなんだが、そもそも別の鍋にしてみたらどうなのだろうか。
別々の鍋にすれば段取り替えでの煮汁残りをチェックしなくても済むしな。
「たまにしか作らない赤マンドラゴラのポーションのために、もう一個鍋を用意するのは難しいんじゃないかな」
エランは言う。
確かにそうだよな。
プラスチック成形だってクリア成形専用ラインが作れずに、異物が混入する不具合が後を絶たないのだからな。
そうか、クリア成形か。
「赤マンドラゴラのポーション製造を他所に頼もう」
俺の提案にエランとミゼットが驚く。
前世じゃこれもよくあった事だが、こちらでは外注という考えはないのかな。
クリア成形なんて不良の出やすい製品なんかは、外注に出してしまえば社内の不良は無くなるぞ。
製造も段取り替えが発生しなくなるから大喜びだ。
押し付けられた子会社はたまったものじゃないけどな。
そう、どこの協力メーカーも嫌がって引き受けないので、文句の言えない子会社に押し付けるのだ。
不良の多くて利益の出ない仕事ばかり来て大変そうでしたね。
拒否しようものなら、親会社の権限で社長の首を挿げ替えて終わりだからね。
っていうのを色々とみてきました。
子会社も大変ですね。
これもなぜなぜ分析でたどり着いちゃいけないやつか。
「そうか、別のところにお願いすればいいのか。親方に相談してみるよ」
エランが親方に相談して、ポーションを製造する他の工房に話をしてみることになった。
「アルト、やっと赤マンドラゴラのポーションを作るところが決まったぜ」
数か月後、親方が俺の所にやってきてそう言った。
すっかり忘れていたのだが、そんなことはおくびにも出さない。
品管が不良を忘れるなんてばつが悪いからね。
誤魔化すために、コーヒーを落ち着いて飲み干す。
「そうですか。よかった。どうなったかと毎日気をもんでいたんですよ」
「気をもんでいたなら、何回かは聞きに来ればいいのになあ。忘れていたんだろ」
親方はあきれ顔で俺を見る。
バレテーラ。
「で、どうなりました」
「冒険者ギルドの本部で一括して生産して、各地に配ることになった。それなら生産量もまとまるからな」
「そうですか」
元々赤字事業だったことだし、それはそれでよかったな。
最初からそうしていれば、採算も取れていたんじゃないかな?
なんにしても、段取り替えが無くなったのは良かった。
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