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第371話 ありがちな設定もあの時始業点検さえしていれば
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※前話のティーノの店にて、グレイスとの会話の直後。
「そういえば、迷宮に横穴が見つかって、そこを探索したって聞いたが、何が見つかったんだ?」
オッティは空になったワインのボトルを指でつつきながら、そう訊いてきた。
そういえば、その話を少しだけしていたのを思い出す。
サキュバスによって淫夢を見せられたので、あまり気分のよい思い出ではないが、隠す程でもないので結果を話そうかな。
因みに、淫夢というよりも悪夢なのだが、サキュバスの納入に悪夢は無いから淫夢って言ってるだけだ。
「横穴を進むと建物があった。鉄筋コンクリートで出来たその建物はこの文明にしては違和感があった」
「確かに、そんな建物は文明レベルにそぐわないな」
追加のワインが届いたので、俺には目もくれずワインをグラスに注ぐオッティ。
「中に入ると、そこは研究室みたいで、パソコンと研究日誌があった」
「研究室なんだから当然だろ」
ワイングラスを鼻のところに持っていき、薫りを楽しむオッティ。
こいつ、酔っぱらってて理解できてないなと俺は肩をすくめる。
やれやれ、と思いながら話を続ける。
「よく考えろ。なんでパソコンがあるんだ?」
「言われてみればそうだな。何でだ?」
やっと理解してくれたようだ。
パソコンがあることがおかしいと。
オーパーツもいいところだからな。
「生憎と電気がないのでパソコンは起動できなかったが、日誌は紙で出来ているから読むことが出来た。そこには日本語が書いてあった」
「ちょっと待ってくれ!」
オッティはそう叫ぶと、チェイサーを一気に呑み込んだ。
「酔って訊く話じゃないな」
両手でピシャピシャと頬を叩いて、酔いを覚まそうとする。
そんなことで、アルコールは抜けないと思うが、気持ちは伝わってきた。
オッティの動作が終わるのを待って、話を続ける。
「研究日誌を読んでわかったのは、実はこの世界には俺たちのいた時代の遥か後だってことだ。西暦2030年、発電所の環境影響が問題になる。そこで新たに考案されたクリーンエネルギーがあった。その名を『シグマ・ドライブ』。考案者のシグマ博士の名前に由来する」
「シグマ・ドライブ……」
「だが、それは完璧じゃなかった。それでも全世界の期待を一新に受けて、実験に踏み切ってしまう。そして大爆発が起こってしまった。爆心地の名前から『パスポートの惨劇』と呼ばれるようになる」
「じゃあ、その研究室はシグマ博士の研究室だったのか?」
「いや、そこは共同研究者のフォーチュナー博士の研究室だったよ。実験の失敗について事細かに書いてあった。設備始業点検を怠り、油圧が規定値の倍だったそうだ。そのせいで実験設備が暴走して大爆発。人類の大半は爆発と、爆風により死亡。残った人類も農業生産の落ち込みによる飢餓で死んでいった。フォーチュナー博士は残った機材で人間の意思で動くナノマシンを作り上げ、次の世代がエネルギー問題で苦しまないようにと研究を続けたが、寿命で死んだみたいだな。死の直前までが綴られていた」
「つまり、今スキルとして使える能力っていうのは?」
「ナノマシンを行使しているんだよ!!」
「何て事だ、ここは地球だったのか」
「っていうのは全部嘘で、横穴から先も迷宮が広がってて、かなりの階層があったから、最深部までは到達出来てない。出現するモンスターも変わらなかったし、特別ななにかって事は無いと思うよ」
そこまで話した時、オッティの目が怒りに燃えているのがわかった。
そして、俺の首を両手で締める。
「ふざげんや」
「ああ、今日が命が静止する日か」
※作者の独り言
設備の始業点検はきちんとしよう。
上長は点検の確実さを確認しよう。
「そういえば、迷宮に横穴が見つかって、そこを探索したって聞いたが、何が見つかったんだ?」
オッティは空になったワインのボトルを指でつつきながら、そう訊いてきた。
そういえば、その話を少しだけしていたのを思い出す。
サキュバスによって淫夢を見せられたので、あまり気分のよい思い出ではないが、隠す程でもないので結果を話そうかな。
因みに、淫夢というよりも悪夢なのだが、サキュバスの納入に悪夢は無いから淫夢って言ってるだけだ。
「横穴を進むと建物があった。鉄筋コンクリートで出来たその建物はこの文明にしては違和感があった」
「確かに、そんな建物は文明レベルにそぐわないな」
追加のワインが届いたので、俺には目もくれずワインをグラスに注ぐオッティ。
「中に入ると、そこは研究室みたいで、パソコンと研究日誌があった」
「研究室なんだから当然だろ」
ワイングラスを鼻のところに持っていき、薫りを楽しむオッティ。
こいつ、酔っぱらってて理解できてないなと俺は肩をすくめる。
やれやれ、と思いながら話を続ける。
「よく考えろ。なんでパソコンがあるんだ?」
「言われてみればそうだな。何でだ?」
やっと理解してくれたようだ。
パソコンがあることがおかしいと。
オーパーツもいいところだからな。
「生憎と電気がないのでパソコンは起動できなかったが、日誌は紙で出来ているから読むことが出来た。そこには日本語が書いてあった」
「ちょっと待ってくれ!」
オッティはそう叫ぶと、チェイサーを一気に呑み込んだ。
「酔って訊く話じゃないな」
両手でピシャピシャと頬を叩いて、酔いを覚まそうとする。
そんなことで、アルコールは抜けないと思うが、気持ちは伝わってきた。
オッティの動作が終わるのを待って、話を続ける。
「研究日誌を読んでわかったのは、実はこの世界には俺たちのいた時代の遥か後だってことだ。西暦2030年、発電所の環境影響が問題になる。そこで新たに考案されたクリーンエネルギーがあった。その名を『シグマ・ドライブ』。考案者のシグマ博士の名前に由来する」
「シグマ・ドライブ……」
「だが、それは完璧じゃなかった。それでも全世界の期待を一新に受けて、実験に踏み切ってしまう。そして大爆発が起こってしまった。爆心地の名前から『パスポートの惨劇』と呼ばれるようになる」
「じゃあ、その研究室はシグマ博士の研究室だったのか?」
「いや、そこは共同研究者のフォーチュナー博士の研究室だったよ。実験の失敗について事細かに書いてあった。設備始業点検を怠り、油圧が規定値の倍だったそうだ。そのせいで実験設備が暴走して大爆発。人類の大半は爆発と、爆風により死亡。残った人類も農業生産の落ち込みによる飢餓で死んでいった。フォーチュナー博士は残った機材で人間の意思で動くナノマシンを作り上げ、次の世代がエネルギー問題で苦しまないようにと研究を続けたが、寿命で死んだみたいだな。死の直前までが綴られていた」
「つまり、今スキルとして使える能力っていうのは?」
「ナノマシンを行使しているんだよ!!」
「何て事だ、ここは地球だったのか」
「っていうのは全部嘘で、横穴から先も迷宮が広がってて、かなりの階層があったから、最深部までは到達出来てない。出現するモンスターも変わらなかったし、特別ななにかって事は無いと思うよ」
そこまで話した時、オッティの目が怒りに燃えているのがわかった。
そして、俺の首を両手で締める。
「ふざげんや」
「ああ、今日が命が静止する日か」
※作者の独り言
設備の始業点検はきちんとしよう。
上長は点検の確実さを確認しよう。
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