2 / 108
プロローグ
しおりを挟む
「どうしてこうなった」
俺は天に向かって嘆いた。
見えるのは神殿の天井だけど。
この世界では10歳で役職が判明する。
人々は10歳になると神殿で役職を見てもらうのだ。
剣士、魔法使い、占い師、漁師、猟師、医者等様々である。
中にはレアジョブと言われるものがある。
勇者とか預言者等だ。
「こんな役職聞いたことがない」
目の前の神官が震えている。
そりゃそうだ、こんな中世ヨーロッパ擬きの世界で、俺に判明した役職は「品質管理」。
品質管理って言葉が出てくるのは20世紀になってからだ。
産業革命すら起こっていないこの世界で、こんな役職でどうしろというのだ。
しかも、前世で俺は二度と品質管理なんて仕事をやりたくないと誓ったのだ。
そう、前世でだ。
俺の名前はアルト。
前世は日本の部品メーカー勤務だった。
ティア2の弱小メーカーで、品質管理の仕事をしていたのである。
ティア2とは昔風に言えば孫請けであり、品質管理とは決められた品質を製造現場に維持管理させるのが仕事だ。
そして品質管理は金を産まない部署だ。
社長や同僚からは要らないと言われ、不良品を納入すれば客先には怒られる。
俺だって、好きでこんなことをしているわけではないのだ。
対策書も書けない奴等が不良を出すので、大卒だからと云う理由のみでこの部署に配属された。
俺が死んだときだってそうだ。
ブラケット欠品の対策書が提出期限直前になっても書けていない。
不具合を出した班が、何も対策をしないので俺が二日徹夜して、エビデンスを捏造して対策書を書いたのだ。
それをメールで客先に提出し、やっと家に帰ることが出来ると思ったら、目眩がして階段を踏み外して、転落死したのである。
享年35歳。
三途の川を渡るときに、次こそは品質管理なんて仕事をしたくないと神に祈ったものだ。
「その結果がこれだよ」
俺は神を恨んだ。
「あ、三途の川は仏教だから、仏様にお願いしないといけなかったのか」
それが原因かどうかは知らないが、俺は前世の記憶を持ったまま転生した異世界でまた品質管理の仕事をすることになった。
そう、三途の川は本当にあったのだ。
浄土へは行けなかったけど。
「それにしても、この世界で品質管理の職で生きていくことなんてできるのだろうか。この先生きのこっちゃうの無理だよな」
8歳の時に前世の記憶がよみがえり、生前、気晴らしに読んでいたネット小説にありがちな、西洋ファンタジー風の世界に転生したとわかった時は、どんなチート能力で活躍できるのかとわくわくしたのだが、10歳で判明したジョブでその希望は打ち砕かれた。
寧ろ、一般的な猟師や料理人といったものだったほうが良かった。
15歳で成人となった俺は、戦う能力もなく、商売をする能力もなく、冒険者ギルドの相談窓口で、新人冒険者が相談に来るのを待っているのである。
俺は天に向かって嘆いた。
見えるのは神殿の天井だけど。
この世界では10歳で役職が判明する。
人々は10歳になると神殿で役職を見てもらうのだ。
剣士、魔法使い、占い師、漁師、猟師、医者等様々である。
中にはレアジョブと言われるものがある。
勇者とか預言者等だ。
「こんな役職聞いたことがない」
目の前の神官が震えている。
そりゃそうだ、こんな中世ヨーロッパ擬きの世界で、俺に判明した役職は「品質管理」。
品質管理って言葉が出てくるのは20世紀になってからだ。
産業革命すら起こっていないこの世界で、こんな役職でどうしろというのだ。
しかも、前世で俺は二度と品質管理なんて仕事をやりたくないと誓ったのだ。
そう、前世でだ。
俺の名前はアルト。
前世は日本の部品メーカー勤務だった。
ティア2の弱小メーカーで、品質管理の仕事をしていたのである。
ティア2とは昔風に言えば孫請けであり、品質管理とは決められた品質を製造現場に維持管理させるのが仕事だ。
そして品質管理は金を産まない部署だ。
社長や同僚からは要らないと言われ、不良品を納入すれば客先には怒られる。
俺だって、好きでこんなことをしているわけではないのだ。
対策書も書けない奴等が不良を出すので、大卒だからと云う理由のみでこの部署に配属された。
俺が死んだときだってそうだ。
ブラケット欠品の対策書が提出期限直前になっても書けていない。
不具合を出した班が、何も対策をしないので俺が二日徹夜して、エビデンスを捏造して対策書を書いたのだ。
それをメールで客先に提出し、やっと家に帰ることが出来ると思ったら、目眩がして階段を踏み外して、転落死したのである。
享年35歳。
三途の川を渡るときに、次こそは品質管理なんて仕事をしたくないと神に祈ったものだ。
「その結果がこれだよ」
俺は神を恨んだ。
「あ、三途の川は仏教だから、仏様にお願いしないといけなかったのか」
それが原因かどうかは知らないが、俺は前世の記憶を持ったまま転生した異世界でまた品質管理の仕事をすることになった。
そう、三途の川は本当にあったのだ。
浄土へは行けなかったけど。
「それにしても、この世界で品質管理の職で生きていくことなんてできるのだろうか。この先生きのこっちゃうの無理だよな」
8歳の時に前世の記憶がよみがえり、生前、気晴らしに読んでいたネット小説にありがちな、西洋ファンタジー風の世界に転生したとわかった時は、どんなチート能力で活躍できるのかとわくわくしたのだが、10歳で判明したジョブでその希望は打ち砕かれた。
寧ろ、一般的な猟師や料理人といったものだったほうが良かった。
15歳で成人となった俺は、戦う能力もなく、商売をする能力もなく、冒険者ギルドの相談窓口で、新人冒険者が相談に来るのを待っているのである。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう
お餅ミトコンドリア
ファンタジー
パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。
だが、全くの無名。
彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。
若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。
弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。
独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。
が、ある日。
「お久しぶりです、師匠!」
絶世の美少女が家を訪れた。
彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。
「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」
精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。
「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」
これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。
(※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。
もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです!
何卒宜しくお願いいたします!)
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
赤ん坊なのに【試練】がいっぱい! 僕は【試練】で大きくなれました
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕の名前はジーニアス
優しい両親のもとで生まれた僕は小さな村で暮らすこととなりました
お父さんは村の村長みたいな立場みたい
お母さんは病弱で家から出れないほど
二人を助けるとともに僕は異世界を楽しんでいきます
ーーーーー
この作品は大変楽しく書けていましたが
49話で終わりとすることにいたしました
完結はさせようと思いましたが次をすぐに書きたい
そんな欲求に屈してしまいましたすみません
【状態異常耐性】を手に入れたがパーティーを追い出されたEランク冒険者、危険度SSアルラウネ(美少女)と出会う。そして幸せになる。
シトラス=ライス
ファンタジー
万年Eランクで弓使いの冒険者【クルス】には目標があった。
十数年かけてため込んだ魔力を使って課題魔法を獲得し、冒険者ランクを上げたかったのだ。
そんな大事な魔力を、心優しいクルスは仲間の危機を救うべく"状態異常耐性"として使ってしまう。
おかげで辛くも勝利を収めたが、リーダーの魔法剣士はあろうことか、命の恩人である彼を、嫉妬が原因でパーティーから追放してしまう。
夢も、魔力も、そしてパーティーで唯一慕ってくれていた“魔法使いの後輩の少女”とも引き離され、何もかもをも失ったクルス。
彼は失意を酩酊でごまかし、死を覚悟して禁断の樹海へ足を踏み入れる。そしてそこで彼を待ち受けていたのは、
「獲物、来ましたね……?」
下半身はグロテスクな植物だが、上半身は女神のように美しい危険度SSの魔物:【アルラウネ】
アルラウネとの出会いと、手にした"状態異常耐性"の力が、Eランク冒険者クルスを新しい人生へ導いて行く。
*前作DSS(*パーティーを追い出されたDランク冒険者、声を失ったSSランク魔法使い(美少女)を拾う。そして癒される)と設定を共有する作品です。単体でも十分楽しめますが、前作をご覧いただくとより一層お楽しみいただけます。
また三章より、前作キャラクターが多数登場いたします!
~最弱のスキルコレクター~ スキルを無限に獲得できるようになった元落ちこぼれは、レベル1のまま世界最強まで成り上がる
僧侶A
ファンタジー
沢山のスキルさえあれば、レベルが無くても最強になれる。
スキルは5つしか獲得できないのに、どのスキルも補正値は5%以下。
だからレベルを上げる以外に強くなる方法はない。
それなのにレベルが1から上がらない如月飛鳥は当然のように落ちこぼれた。
色々と試行錯誤をしたものの、強くなれる見込みがないため、探索者になるという目標を諦め一般人として生きる道を歩んでいた。
しかしある日、5つしか獲得できないはずのスキルをいくらでも獲得できることに気づく。
ここで如月飛鳥は考えた。いくらスキルの一つ一つが大したことが無くても、100個、200個と大量に集めたのならレベルを上げるのと同様に強くなれるのではないかと。
一つの光明を見出した主人公は、最強への道を一直線に突き進む。
土曜日以外は毎日投稿してます。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる