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1章 アプリまでの道のりが不気味すぎる!1~5話
その2 ヒウタと運命の出会い
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マジか、ヒウタは思う。
妹のアメユキに知らされたファミレスに着いた。
家族や友人と利用することはあったものの、アプリで席を予約できるなんて。
それより驚いたのは、アメユキが通う塾のアルバイトの女性が来てくれることだ。
正直、ヒウタはドッキリ路線を疑っているし、帰ったら、否――代わりに店に来るだろうアメユキを怒らねばならないと考えていた。
「あ、もしかしてキミがアメユキちゃんのお兄さん?」
落ち着いた声、澄んだ声。
騒がしい店内の中で浮いているような、むしろ際立たせているような声。
「え?」
ヒウタはつい声が出た。
「人違いでしたか、……」
女性は申し訳なさそうにヒウタから離れて、店内を見渡す。
ヒウタは立つ。
「僕がアメユキの兄の、ヒウタです」
「優しい雰囲気の方で良かった。遠かったですよね、ここ私からは近いので」
「僕からは近くはないですね」
ぎこちない会話が続く。
ファミレスならどこでもあると思ったが、ヒウタは思う。
アメユキが気遣ってこの場所を選んだなら納得だ。
「今日、暑いですよね。店内冷房聞いてて、逆に寒いというか」
「やっぱりそうですね」
アメユキが何を期待していたか分からないが、この空気を和ませる一手をヒウタは持たない。
「あの、迷惑でしたか?」
「いいえ、私も彼氏募集中なので。元彼を振ってから恋愛が面倒になってしまって。けど、周りが恋してるとどこか焦って。流されやすいなんて、私かっこ悪いですよね」
格好がつかないと言えば。
「妹に彼女がいないことを心配される方が悪いですよ」
なんてフォローしたところでこれ以上和まない。
「食べるもの選びましょう」
「はい。どちらから選びますか?」
ヒウタは女性が気遣っていることが分かる。
優しくて綺麗な人で、だからこそ妹が推薦したと。
「ハンバーグいろんなソースが選べるみたいですよ」
「僕は和風にします。さっぱりした味が好きなので」
「私もですよ?」
女性はメニュー表に顔を近づける。
ヒウタはメニュー表に置いた人差し指を引く方法が分からなくて、静かな時が流れるなかで指を置き続けた。
心臓が鳴る。手汗が溢れる。耳たぶが赤くなる。人差し指が震える。
女性とはこんなにも綺麗で唐突で、ふわっと優しく甘い香りがするものなのか。
ヒウタはいつ爆発してもおかしくない。
「すみません、頼みましょう」
「そうですね」
返事するヒウタは疲れていた。
でもせっかくの機会、退屈にはさせたくなくて。
テンプレを燃焼しながら過ごすことにした。
「好きな食べ物は?」
「ハンバーグ好きなので安心してください。あと、甘い物好きで。ピスタチオとかマンゴーのスイーツにはまってますよ。駅前のーー」
たくさん話してくれる女性だった。
「知ってます、ネットで話題になりましたよね。あの店親戚が経営してるんですか」
「そういえば、アメユキちゃん。誰とでも仲良くしてて、本当にいい子なんだって。ここに来たのは、どんなお兄さんなんだろうって。予想以上に良い人でした」
食事後に頼んだマンゴーのジュース。
ストローでかき混ぜる姿が上品で。
けどこの気持ちはきっと。
「実は私、そろそろ彼氏決めようと思ってて」
「そうなんですね」
「その人と次に会ったら私から告白するつもりです」
ヒウタはこの人とは別の道を歩むことを感じていた。
一瞬の関わり。
それでも、ヒウタは目の前の優しい女性なら大丈夫だろうと思った。
「絶対上手くいきますよ。告白できるの格好いいです」
「アメユキちゃんのお兄さんはこれから恋活しますよね? 素敵な恋をしてください」
ジュースを飲み干して。
ストローから離れた氷の塊が、他の氷と衝突して音を立てる。
「すごい楽しかったから、彼女探し応援してます。ここならいっぱい出会えますよ?」
その女性がスマホを出して画面を表示させる。
恋人探しができるアプリ。
ヒウタは強く惹かれた。
妹のアメユキに知らされたファミレスに着いた。
家族や友人と利用することはあったものの、アプリで席を予約できるなんて。
それより驚いたのは、アメユキが通う塾のアルバイトの女性が来てくれることだ。
正直、ヒウタはドッキリ路線を疑っているし、帰ったら、否――代わりに店に来るだろうアメユキを怒らねばならないと考えていた。
「あ、もしかしてキミがアメユキちゃんのお兄さん?」
落ち着いた声、澄んだ声。
騒がしい店内の中で浮いているような、むしろ際立たせているような声。
「え?」
ヒウタはつい声が出た。
「人違いでしたか、……」
女性は申し訳なさそうにヒウタから離れて、店内を見渡す。
ヒウタは立つ。
「僕がアメユキの兄の、ヒウタです」
「優しい雰囲気の方で良かった。遠かったですよね、ここ私からは近いので」
「僕からは近くはないですね」
ぎこちない会話が続く。
ファミレスならどこでもあると思ったが、ヒウタは思う。
アメユキが気遣ってこの場所を選んだなら納得だ。
「今日、暑いですよね。店内冷房聞いてて、逆に寒いというか」
「やっぱりそうですね」
アメユキが何を期待していたか分からないが、この空気を和ませる一手をヒウタは持たない。
「あの、迷惑でしたか?」
「いいえ、私も彼氏募集中なので。元彼を振ってから恋愛が面倒になってしまって。けど、周りが恋してるとどこか焦って。流されやすいなんて、私かっこ悪いですよね」
格好がつかないと言えば。
「妹に彼女がいないことを心配される方が悪いですよ」
なんてフォローしたところでこれ以上和まない。
「食べるもの選びましょう」
「はい。どちらから選びますか?」
ヒウタは女性が気遣っていることが分かる。
優しくて綺麗な人で、だからこそ妹が推薦したと。
「ハンバーグいろんなソースが選べるみたいですよ」
「僕は和風にします。さっぱりした味が好きなので」
「私もですよ?」
女性はメニュー表に顔を近づける。
ヒウタはメニュー表に置いた人差し指を引く方法が分からなくて、静かな時が流れるなかで指を置き続けた。
心臓が鳴る。手汗が溢れる。耳たぶが赤くなる。人差し指が震える。
女性とはこんなにも綺麗で唐突で、ふわっと優しく甘い香りがするものなのか。
ヒウタはいつ爆発してもおかしくない。
「すみません、頼みましょう」
「そうですね」
返事するヒウタは疲れていた。
でもせっかくの機会、退屈にはさせたくなくて。
テンプレを燃焼しながら過ごすことにした。
「好きな食べ物は?」
「ハンバーグ好きなので安心してください。あと、甘い物好きで。ピスタチオとかマンゴーのスイーツにはまってますよ。駅前のーー」
たくさん話してくれる女性だった。
「知ってます、ネットで話題になりましたよね。あの店親戚が経営してるんですか」
「そういえば、アメユキちゃん。誰とでも仲良くしてて、本当にいい子なんだって。ここに来たのは、どんなお兄さんなんだろうって。予想以上に良い人でした」
食事後に頼んだマンゴーのジュース。
ストローでかき混ぜる姿が上品で。
けどこの気持ちはきっと。
「実は私、そろそろ彼氏決めようと思ってて」
「そうなんですね」
「その人と次に会ったら私から告白するつもりです」
ヒウタはこの人とは別の道を歩むことを感じていた。
一瞬の関わり。
それでも、ヒウタは目の前の優しい女性なら大丈夫だろうと思った。
「絶対上手くいきますよ。告白できるの格好いいです」
「アメユキちゃんのお兄さんはこれから恋活しますよね? 素敵な恋をしてください」
ジュースを飲み干して。
ストローから離れた氷の塊が、他の氷と衝突して音を立てる。
「すごい楽しかったから、彼女探し応援してます。ここならいっぱい出会えますよ?」
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恋人探しができるアプリ。
ヒウタは強く惹かれた。
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