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五章 オシュテン派
25話:再戦
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黒い髪、白い目が特徴のオシュテンは、長方形が三つほど垂れているピアスから稲妻を出す。クレーエンより小柄ながらも、クレーエンの魔剣を避けながら応戦している。
「さて、時間切れだ」
オシュテンは傘を真っ直ぐにする。
天から赤い光が何本も降りてくる。
「前とは違って準備もしてきてる」
ナイフを指の隙間に挟む。
両手で計八つの刃をクレーエンに見せた。
勝った、オシュテンは見下すような余裕の笑みを見せる。
クレーエンもラメッタも光が絡まって動けなくなった。
クレーエンは歯ぎしりをした、ナイフの恐ろしさに気づいたか?
オシュテンは容赦なくナイフを投げつける。
ナイフが走ると、通った空間にひびが入っていく。
「ただのナイフではなくて、これが」
ナイフはひびを作りながら進み、クレーエンに届くことなく落ちる。
強烈な光を放つ。
それからひびから黒い、闇と呼ぶに相応しいものが泥のように流れ出す。
「溢れた闇は纏わりつき、生命を吸収しながらひびを修復して消える。呪いに抵抗しながらは無理だろうからね」
「オシュテン」
「負け惜しみか?」
「いつまで俺が対策不足だと思っている?」
「はあ? 僕は魔道具をたくさん持っている。それにこの加護もある」
「で?」
「お前に何ができるというんだ?」
「それは俺が一人で戦っているならな。だが、俺には頼れる仲間がいる。しかも、誰よりも優秀な」
クレーエンを捕縛していた光が霧散する。
オシュテンは目を丸くした。
「このひびは遅効性だな」
クレーエンの剣が迫る。
オシュテンは傘の先に手のひらほどの翼を出して羽ばたかせる。
その力で飛ぶようにして避ける。
「クレーエン、あのひびは少しの魔力さえ吸収されば修復できる。逃げながら魔力を撃ち込め。その技術、わしも知っている」
「頼りになるよな」
「わしの経験を甘く見てる。七十八才、立派なお姉さまじゃ」
「ガキだろ?」
同じく光の束縛が解けたラメッタは声を大きくして伝える。
クレーエンは剣を介して炎を放射する。
闇は炎に触れると膨張して流れが速くなった。
「チッ」
オシュテンは舌打ちをして、ピアスから稲妻を出す。
「僕は強さを見誤ったみたいだ。だが、それは同じこと」
赤い光が消えた。
ラメッタとクレーエンはゾッと寒気を感じた。
赤い光の帯が傘の上に生えている。
光が伸縮しながらクレーエンへ。
避けると、地面が赤く染まる。
僅かに光を放っている。
「僕の加護にはもう一段階ある。大蛇の骨を使った傘だ。この光は蛇のように巻きつく。そして、触れた部分を赤く光らせ、その光に触れたものが無事なんて楽観的な考えはしていないだろうな?」
光の帯がしなって軌道を変えながらクレーエンに迫る。
無数の光を避けきれず魔剣で迎え撃った。
魔剣の一部が赤く光る。
そこから、紫の煙が揺蕩う。
「これは」
「クレーエン、わしの薬では直接的な攻撃を伴う呪いは無効化できぬ」
「分かった。ところで蛇の骨というのは分かったが、あの上の翼はなんだ?」
「魔道具職人が組み合わせたものじゃな。なかなかの腕だ、感心してしまう」
「そうかよ、って」
一斉に光が降る。
「紫の煙は?」
「魔力へ干渉するものだろうな」
「そうか。使い切るつもりで」
クレーエンは魔力を剣に込めて重くした。
さらに剣を介した魔力を身体に戻して身体強化をする。
魔力はほとんど使い切る。
「紫の煙、俺から離れていくぞ」
「やはり魔力を吸う、みたいなものか」
ラメッタは頷く。
「うるさいかな。仕方ない、オシュテンが命じる」
ピアスが光る。
天まで光が上がって花火のように放射状に散った。
「僕を助けろ、そしてここでクレーエンを倒す」
オシュテンは傘を使って大きく後退をする。
クレーエンが追い打ちをしようと剣先を向けて迫るが、キンッと金属同士の衝突する音がした。力の差でクレーエンは相手を飛ばすも、すぐに向かってくる。
オシュテンが呼んだ部下らしい。
「ラメッタ、一回逃げろ」
「何を言っておる。大量の魔道具を使う以上、わしの分析は必要じゃろ?」
「だがラメッタが狙われるぞ?」
「なら守ってくれればいいじゃろ?」
ラメッタにオシュテンの赤い光が迫る。
必死に避けていると、銃を持った男が見えた。
白い糸のようなものを発射する。
「あれは、なんじゃろな!」
ラメッタは手のひらほどの球体を二つ投げる。
一つは爆発して糸を消し炭にした。
もう一つは煙である。
「隙じゃよ、クレーエン」
「こっちまで視界が悪い。くそみたいな援護だな」
「動けぬか?」
「そう見えるか?」
オシュテンが傘を広げたり閉じたりして煙を飛ばす。
部下が倒れていた。
「クレーエンだな。くそ」
「光の帯を使わなかった。視界が悪いと使えないのか?」
「だからどうした?」
「図星か?」
「チッ」
部下に魔道具で攻撃させながらオシュテンはクレーエンから離れる。
弓は折られ、剣は弾かれ、銃は銃身ごと消し炭にする。
ラメッタが球体を投げて煙を出し、クレーエンがその間に部下を倒していく。
「疲れたかな?」
「部下があまりにも弱いなオシュテン。疲れたが少しだけだ」
「息が上がっている。強がりだなあ」
「もう部下はほとんど動けないが?」
「クレーエンを仕留めることはできなかったが、無事に疲れさせることくらいはできているなあ。ペース上げる、付いてこい、クレーエン」
「遅すぎて退屈かもな」
光の帯を避け、ピアスから出る稲妻は飛んで、オシュテンに近づいて剣を振る。オシュテンは光の帯と稲妻でクレーエンを遠ざけ、クレーエンが迫った瞬間傘を広げて跳んで離れる。
オシュテンは指を鳴らした。
地鳴り。
傘を畳む。
そして、激しく降ると槍の形に変わった。
その槍はオシュテンが話しても浮いている。
柄の部分には翼が付いている。
「あまり見せるつもりは。奥の手を見せるのは良くないんだ」
「いつまで勝つつもりだ?」
クレーエンは咄嗟に下がった。
槍は残像のようなものを作りながら曲がり、まるで蛇のように軌道を変えて、鳥のように素早く獲物に迫る。
「速い。これはなかなか」
クレーエンの額に汗が滲む。
「ラメッタ、離れろ。これは無理だ」
無理って何が?
ラメッタを守りながら戦うことが。
ラメッタもオシュテンもそれを分かっていたらしい。
ラメッタは逃げ出そうとしたが間に合わず、槍をクレーエンが受ける。
衝突すると地鳴りがする。
「くそっ」
クレーエンは悪い体勢で受けてしまったため、襲撃を受け切れずに飛ばされる。
それでも身体を捻って足から着地した。
「僕の白い目は明るいとだめだね、あまり見えない。それと、この日光では長時間は厳しい。だから全力で卑怯でいく」
つまり。
オシュテンは積極的にラメッタを狙うと宣言しているのだ。
「クレーエン、大丈夫か?」
「まあな」
クレーエンは槍を受ける度に飛ばされる。
ラメッタは諦めて動くのをやめた。クレーエンが予想できないラメッタの動きに合わせながら戦うのは危険だからだ。
だが、オシュテンは上手でクレーエンはしなる動きに対応できず、稲妻を一度受けてしまう。
クレーエンの疲労は明らかだった。
クレーエンは立ち止まった。
「分かった。俺はこれで行く」
魔剣の大振り。
瞬間、オシュテンは吹き飛んだ。
広場の隅にあるレンガの壁に身体を打ち付ける。
「想像以上だ。でも負けるわけには」
オシュテンはクレーエンに光の帯と稲妻を向ける。
クレーエンは避けると、剣を大きく上げる。
そのとき、オシュテンはクレーエンに見向きもせずにラメッタの元へ駆けた。
クレーエンはラメッタに近づくオシュテンをなんとかしようとするが間に合わない。
オシュテンはラメッタを見て固まった。
「かわいい、かわいい、かわいい」
オシュテンがはっきりラメッタを見るのは初めてだった。
円らな瞳、薄赤のショートカット、幼さが残るものの整った顔立ち、引き締まった身体、滑らかな肌。
そして、一目惚れをして、助けようとするクレーエンが来る前にラメッタを抱き締めた。
「かわいい、僕はこの子がいい!」
ラメッタはオシュテンの腕が柔らかいことに気づき、さらに目の前のそれを掴んでみた。
想定外に柔らかい二つ。
「クソガキがああ! おぬし、女の子じゃったんか」
ラメッタは叫ぶ。
驚愕の事実にクレーエンも足を止めた。
「僕は一度も男だって言ってないけどね」
オシュテンは満足そうにラメッタの頬を突きながら答えるのだった。
「さて、時間切れだ」
オシュテンは傘を真っ直ぐにする。
天から赤い光が何本も降りてくる。
「前とは違って準備もしてきてる」
ナイフを指の隙間に挟む。
両手で計八つの刃をクレーエンに見せた。
勝った、オシュテンは見下すような余裕の笑みを見せる。
クレーエンもラメッタも光が絡まって動けなくなった。
クレーエンは歯ぎしりをした、ナイフの恐ろしさに気づいたか?
オシュテンは容赦なくナイフを投げつける。
ナイフが走ると、通った空間にひびが入っていく。
「ただのナイフではなくて、これが」
ナイフはひびを作りながら進み、クレーエンに届くことなく落ちる。
強烈な光を放つ。
それからひびから黒い、闇と呼ぶに相応しいものが泥のように流れ出す。
「溢れた闇は纏わりつき、生命を吸収しながらひびを修復して消える。呪いに抵抗しながらは無理だろうからね」
「オシュテン」
「負け惜しみか?」
「いつまで俺が対策不足だと思っている?」
「はあ? 僕は魔道具をたくさん持っている。それにこの加護もある」
「で?」
「お前に何ができるというんだ?」
「それは俺が一人で戦っているならな。だが、俺には頼れる仲間がいる。しかも、誰よりも優秀な」
クレーエンを捕縛していた光が霧散する。
オシュテンは目を丸くした。
「このひびは遅効性だな」
クレーエンの剣が迫る。
オシュテンは傘の先に手のひらほどの翼を出して羽ばたかせる。
その力で飛ぶようにして避ける。
「クレーエン、あのひびは少しの魔力さえ吸収されば修復できる。逃げながら魔力を撃ち込め。その技術、わしも知っている」
「頼りになるよな」
「わしの経験を甘く見てる。七十八才、立派なお姉さまじゃ」
「ガキだろ?」
同じく光の束縛が解けたラメッタは声を大きくして伝える。
クレーエンは剣を介して炎を放射する。
闇は炎に触れると膨張して流れが速くなった。
「チッ」
オシュテンは舌打ちをして、ピアスから稲妻を出す。
「僕は強さを見誤ったみたいだ。だが、それは同じこと」
赤い光が消えた。
ラメッタとクレーエンはゾッと寒気を感じた。
赤い光の帯が傘の上に生えている。
光が伸縮しながらクレーエンへ。
避けると、地面が赤く染まる。
僅かに光を放っている。
「僕の加護にはもう一段階ある。大蛇の骨を使った傘だ。この光は蛇のように巻きつく。そして、触れた部分を赤く光らせ、その光に触れたものが無事なんて楽観的な考えはしていないだろうな?」
光の帯がしなって軌道を変えながらクレーエンに迫る。
無数の光を避けきれず魔剣で迎え撃った。
魔剣の一部が赤く光る。
そこから、紫の煙が揺蕩う。
「これは」
「クレーエン、わしの薬では直接的な攻撃を伴う呪いは無効化できぬ」
「分かった。ところで蛇の骨というのは分かったが、あの上の翼はなんだ?」
「魔道具職人が組み合わせたものじゃな。なかなかの腕だ、感心してしまう」
「そうかよ、って」
一斉に光が降る。
「紫の煙は?」
「魔力へ干渉するものだろうな」
「そうか。使い切るつもりで」
クレーエンは魔力を剣に込めて重くした。
さらに剣を介した魔力を身体に戻して身体強化をする。
魔力はほとんど使い切る。
「紫の煙、俺から離れていくぞ」
「やはり魔力を吸う、みたいなものか」
ラメッタは頷く。
「うるさいかな。仕方ない、オシュテンが命じる」
ピアスが光る。
天まで光が上がって花火のように放射状に散った。
「僕を助けろ、そしてここでクレーエンを倒す」
オシュテンは傘を使って大きく後退をする。
クレーエンが追い打ちをしようと剣先を向けて迫るが、キンッと金属同士の衝突する音がした。力の差でクレーエンは相手を飛ばすも、すぐに向かってくる。
オシュテンが呼んだ部下らしい。
「ラメッタ、一回逃げろ」
「何を言っておる。大量の魔道具を使う以上、わしの分析は必要じゃろ?」
「だがラメッタが狙われるぞ?」
「なら守ってくれればいいじゃろ?」
ラメッタにオシュテンの赤い光が迫る。
必死に避けていると、銃を持った男が見えた。
白い糸のようなものを発射する。
「あれは、なんじゃろな!」
ラメッタは手のひらほどの球体を二つ投げる。
一つは爆発して糸を消し炭にした。
もう一つは煙である。
「隙じゃよ、クレーエン」
「こっちまで視界が悪い。くそみたいな援護だな」
「動けぬか?」
「そう見えるか?」
オシュテンが傘を広げたり閉じたりして煙を飛ばす。
部下が倒れていた。
「クレーエンだな。くそ」
「光の帯を使わなかった。視界が悪いと使えないのか?」
「だからどうした?」
「図星か?」
「チッ」
部下に魔道具で攻撃させながらオシュテンはクレーエンから離れる。
弓は折られ、剣は弾かれ、銃は銃身ごと消し炭にする。
ラメッタが球体を投げて煙を出し、クレーエンがその間に部下を倒していく。
「疲れたかな?」
「部下があまりにも弱いなオシュテン。疲れたが少しだけだ」
「息が上がっている。強がりだなあ」
「もう部下はほとんど動けないが?」
「クレーエンを仕留めることはできなかったが、無事に疲れさせることくらいはできているなあ。ペース上げる、付いてこい、クレーエン」
「遅すぎて退屈かもな」
光の帯を避け、ピアスから出る稲妻は飛んで、オシュテンに近づいて剣を振る。オシュテンは光の帯と稲妻でクレーエンを遠ざけ、クレーエンが迫った瞬間傘を広げて跳んで離れる。
オシュテンは指を鳴らした。
地鳴り。
傘を畳む。
そして、激しく降ると槍の形に変わった。
その槍はオシュテンが話しても浮いている。
柄の部分には翼が付いている。
「あまり見せるつもりは。奥の手を見せるのは良くないんだ」
「いつまで勝つつもりだ?」
クレーエンは咄嗟に下がった。
槍は残像のようなものを作りながら曲がり、まるで蛇のように軌道を変えて、鳥のように素早く獲物に迫る。
「速い。これはなかなか」
クレーエンの額に汗が滲む。
「ラメッタ、離れろ。これは無理だ」
無理って何が?
ラメッタを守りながら戦うことが。
ラメッタもオシュテンもそれを分かっていたらしい。
ラメッタは逃げ出そうとしたが間に合わず、槍をクレーエンが受ける。
衝突すると地鳴りがする。
「くそっ」
クレーエンは悪い体勢で受けてしまったため、襲撃を受け切れずに飛ばされる。
それでも身体を捻って足から着地した。
「僕の白い目は明るいとだめだね、あまり見えない。それと、この日光では長時間は厳しい。だから全力で卑怯でいく」
つまり。
オシュテンは積極的にラメッタを狙うと宣言しているのだ。
「クレーエン、大丈夫か?」
「まあな」
クレーエンは槍を受ける度に飛ばされる。
ラメッタは諦めて動くのをやめた。クレーエンが予想できないラメッタの動きに合わせながら戦うのは危険だからだ。
だが、オシュテンは上手でクレーエンはしなる動きに対応できず、稲妻を一度受けてしまう。
クレーエンの疲労は明らかだった。
クレーエンは立ち止まった。
「分かった。俺はこれで行く」
魔剣の大振り。
瞬間、オシュテンは吹き飛んだ。
広場の隅にあるレンガの壁に身体を打ち付ける。
「想像以上だ。でも負けるわけには」
オシュテンはクレーエンに光の帯と稲妻を向ける。
クレーエンは避けると、剣を大きく上げる。
そのとき、オシュテンはクレーエンに見向きもせずにラメッタの元へ駆けた。
クレーエンはラメッタに近づくオシュテンをなんとかしようとするが間に合わない。
オシュテンはラメッタを見て固まった。
「かわいい、かわいい、かわいい」
オシュテンがはっきりラメッタを見るのは初めてだった。
円らな瞳、薄赤のショートカット、幼さが残るものの整った顔立ち、引き締まった身体、滑らかな肌。
そして、一目惚れをして、助けようとするクレーエンが来る前にラメッタを抱き締めた。
「かわいい、僕はこの子がいい!」
ラメッタはオシュテンの腕が柔らかいことに気づき、さらに目の前のそれを掴んでみた。
想定外に柔らかい二つ。
「クソガキがああ! おぬし、女の子じゃったんか」
ラメッタは叫ぶ。
驚愕の事実にクレーエンも足を止めた。
「僕は一度も男だって言ってないけどね」
オシュテンは満足そうにラメッタの頬を突きながら答えるのだった。
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