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純真な恋人
02. 公妾への道
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アニエスの国では王と言えども側妃を娶ることは認められていない。
例外として、王妃が後継となる子を産めなかった場合にのみ第二妃を娶ることができることになってはいるものの、その際にも、王妃の選定と同じく王家を取り巻く有力貴族達の情勢を加味して決められるため、王の愛情云々の希望が優先されることは無いに等しい。
貴族の権力闘争に直接影響する事柄であるため王といえども勝手に伴侶を決めることなどできないようになっているのだ。
王家は強い権力を保持していたが、有力な貴族たちの意向を完全に無視して単独で事を成すことができるほど絶対的な存在ではなかった。
また、王自身がその権力を維持するためにも、常に高貴な血筋を求める必要があった。
しかしながら、王にとっての抜け道は用意されていた。
王は正式な妻は一人、或いは王妃やその勢力が認めた第二妃しか得られないし、その存在を勝手に決めることはできなかったが、表には決して出さない愛人や公の恋人を持つことは黙認されているのだ。
愛人になるのは身分の低いものが想定されていて、日陰者として公の場所から排除される存在となる。
愛人は王妃の手前、徹底的に公から排されるが、愛する人のそばにいることはできる。公の身分ではないから当然子供は持てない。
公妾の制度は既に婚姻を結んだ女性を公式な愛人として認めるものだ。
既に婚姻している貴族夫人を王とその夫人の夫の了承のうえで召し上げるのか、最初から公妾とするために王が選んだ臣下と結婚させるのかの違いはあるが、とにかく、公妾は愛人のように隠される存在では無い。
王妃の心情とは別として、貴族社会に暗黙的に認めた存在として遇される。
公妾は夜会に同席することも、王と連れだって観劇にでかけることも許されるが、愛人と同様に子供を持つことはできない。
しかし、やり方によってはこちらはあるいは……。
このようにエドワード王子とアニエスには正式な夫婦として認められることはないが、実質的な夫婦として一緒にいる道は残されていた。
愛人か公妾か。
愛人の立場を選ぶことは、アニエスにもエドワード王子にもできなかった。
心情的にもだが、現実的にも、アニエスが愛人となった場合、いったい何処に住み、その生活を誰がどう支えるのかとかそういったことに対する解決策がなかったからだ。
エドワード王子が王になるまでだけでなく、王位を継いでからのことも含めて。
公妾についても、本質的に二人を結びつける神聖な愛情ゆえに抵抗があったし、その点に目を瞑るとしても実質的にエドワード王子にはアニエスを公妾に押し上げるだけの力がなかった。
だからこの制度のことは二人の頭の片隅で眠っているだけで、時期が来たら別れるつもしでいたのだが、思いがけない人からこの話が二人の前に提示されることになった。
「わたくしには何れ王となる子を産む義務があります。それは必ず果たされなければなりません。ですが、それ以外のことはわたくしの感知することではありませんの。どうぞお二人の愛を貫いてくださいませ」
王子の婚約者だという賢そうで綺麗な公爵家の令嬢はそう言って冷めた微笑みを浮かべた。
秘していたはずの二人の恋愛関係が当然のように語られ、エドワード王子とアニエスは冷静な彼女の前でかなり気まずい思いをさせられたが、そこまで言われては申し出を考えないわけにはいかなかった。
もちろん、いまだ納得できない、割り切れない思いはあったが、二人がこれからも愛を貫くにはそうするしかないのだ。
それを自分たちから申し出たのではなく、親切にも、もう一人の当事者である公爵令嬢がそうしろと言ってくれているのだから、受け入れても良いのではないかと。
この申し出を安易に断ってしまえば、二人に未来は無い。
だから、公妾に対する少しの負の感情は抑え込むべきでは?
エドワード王子だけでなく、アニエスにも名ばかりの夫ができるというだけ、正式な妻では無いというその一点、それを我慢すれば二人は別れなくてもよい。
思い描いた完全に幸せな婚姻とはいえないが、愛する人とこれからもずっと一緒にいるためには仕方の無いことだとして受け入れるのが賢明な判断というものではないか。
見方によってはこれは変則的な貴族の政略結婚だ。身分に縛られた貴族令嬢として避けて通れないものなのだから、と。
アニエスはそう自分に言い聞かせた。
エドワード王子は、元から公妾の件についてはアニエスよりも具体的に検討していたこともあったようで、かなり積極的な気持ちをもっていたため、アニエスが頷くのをみて喜んでくれた。
そして、エドワード王子は何度もアニエスを手放さずにいるこてができて幸せだと言ってくれ、アニエスのほうも別れずにいらることが心から嬉しかった。
それからいくつかの取り決めが王子と婚約者の間で交わされたようだがアニエスがその詳細を知らされることはなく、ただ、彼女は王子の婚約者の指名した伯爵家の跡継ぎと婚姻するのだということが決定事項として後日エドワード王子から告げられた。
こうして、アニエスの周りで目まぐるしく事態が進行していった。
王子と婚約者は予定通り盛大な結婚式をあげて夫婦となり、アニエスのほうも然るべき時にクロード=ヴェルトナー伯爵家子息と仮初めの結婚をすることになったのだ。
例外として、王妃が後継となる子を産めなかった場合にのみ第二妃を娶ることができることになってはいるものの、その際にも、王妃の選定と同じく王家を取り巻く有力貴族達の情勢を加味して決められるため、王の愛情云々の希望が優先されることは無いに等しい。
貴族の権力闘争に直接影響する事柄であるため王といえども勝手に伴侶を決めることなどできないようになっているのだ。
王家は強い権力を保持していたが、有力な貴族たちの意向を完全に無視して単独で事を成すことができるほど絶対的な存在ではなかった。
また、王自身がその権力を維持するためにも、常に高貴な血筋を求める必要があった。
しかしながら、王にとっての抜け道は用意されていた。
王は正式な妻は一人、或いは王妃やその勢力が認めた第二妃しか得られないし、その存在を勝手に決めることはできなかったが、表には決して出さない愛人や公の恋人を持つことは黙認されているのだ。
愛人になるのは身分の低いものが想定されていて、日陰者として公の場所から排除される存在となる。
愛人は王妃の手前、徹底的に公から排されるが、愛する人のそばにいることはできる。公の身分ではないから当然子供は持てない。
公妾の制度は既に婚姻を結んだ女性を公式な愛人として認めるものだ。
既に婚姻している貴族夫人を王とその夫人の夫の了承のうえで召し上げるのか、最初から公妾とするために王が選んだ臣下と結婚させるのかの違いはあるが、とにかく、公妾は愛人のように隠される存在では無い。
王妃の心情とは別として、貴族社会に暗黙的に認めた存在として遇される。
公妾は夜会に同席することも、王と連れだって観劇にでかけることも許されるが、愛人と同様に子供を持つことはできない。
しかし、やり方によってはこちらはあるいは……。
このようにエドワード王子とアニエスには正式な夫婦として認められることはないが、実質的な夫婦として一緒にいる道は残されていた。
愛人か公妾か。
愛人の立場を選ぶことは、アニエスにもエドワード王子にもできなかった。
心情的にもだが、現実的にも、アニエスが愛人となった場合、いったい何処に住み、その生活を誰がどう支えるのかとかそういったことに対する解決策がなかったからだ。
エドワード王子が王になるまでだけでなく、王位を継いでからのことも含めて。
公妾についても、本質的に二人を結びつける神聖な愛情ゆえに抵抗があったし、その点に目を瞑るとしても実質的にエドワード王子にはアニエスを公妾に押し上げるだけの力がなかった。
だからこの制度のことは二人の頭の片隅で眠っているだけで、時期が来たら別れるつもしでいたのだが、思いがけない人からこの話が二人の前に提示されることになった。
「わたくしには何れ王となる子を産む義務があります。それは必ず果たされなければなりません。ですが、それ以外のことはわたくしの感知することではありませんの。どうぞお二人の愛を貫いてくださいませ」
王子の婚約者だという賢そうで綺麗な公爵家の令嬢はそう言って冷めた微笑みを浮かべた。
秘していたはずの二人の恋愛関係が当然のように語られ、エドワード王子とアニエスは冷静な彼女の前でかなり気まずい思いをさせられたが、そこまで言われては申し出を考えないわけにはいかなかった。
もちろん、いまだ納得できない、割り切れない思いはあったが、二人がこれからも愛を貫くにはそうするしかないのだ。
それを自分たちから申し出たのではなく、親切にも、もう一人の当事者である公爵令嬢がそうしろと言ってくれているのだから、受け入れても良いのではないかと。
この申し出を安易に断ってしまえば、二人に未来は無い。
だから、公妾に対する少しの負の感情は抑え込むべきでは?
エドワード王子だけでなく、アニエスにも名ばかりの夫ができるというだけ、正式な妻では無いというその一点、それを我慢すれば二人は別れなくてもよい。
思い描いた完全に幸せな婚姻とはいえないが、愛する人とこれからもずっと一緒にいるためには仕方の無いことだとして受け入れるのが賢明な判断というものではないか。
見方によってはこれは変則的な貴族の政略結婚だ。身分に縛られた貴族令嬢として避けて通れないものなのだから、と。
アニエスはそう自分に言い聞かせた。
エドワード王子は、元から公妾の件についてはアニエスよりも具体的に検討していたこともあったようで、かなり積極的な気持ちをもっていたため、アニエスが頷くのをみて喜んでくれた。
そして、エドワード王子は何度もアニエスを手放さずにいるこてができて幸せだと言ってくれ、アニエスのほうも別れずにいらることが心から嬉しかった。
それからいくつかの取り決めが王子と婚約者の間で交わされたようだがアニエスがその詳細を知らされることはなく、ただ、彼女は王子の婚約者の指名した伯爵家の跡継ぎと婚姻するのだということが決定事項として後日エドワード王子から告げられた。
こうして、アニエスの周りで目まぐるしく事態が進行していった。
王子と婚約者は予定通り盛大な結婚式をあげて夫婦となり、アニエスのほうも然るべき時にクロード=ヴェルトナー伯爵家子息と仮初めの結婚をすることになったのだ。
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