才がないと伯爵家を追放された僕は、神様からのお詫びチートで、異世界のんびりスローライフ!!

にのまえ

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54話

「とても優しい方なので、ノエール様はあなたを捕らえたりしないっすよ」

「そんな言葉、信じられるものか。珍しいオオカミだと言われ、だんなとはぐれ、私たちは必死で人間から逃げてきた……やっと見つけたこの森でさえ、人間に襲われたのだ」

 その重い声に、ラテも息を呑む。
 けれど、このままでは――このままでは、母オオカミの命が危ない。もし手遅れになったら、この子オオカミは一人ぼっちになってしまう。

「つべこべ言わずに、僕の治療を受けろ! 《ヒール!》」

 オオカミの気持ちは、わかる。
 人間に襲われてきたのなら、怖くて当然だ。
 でも――大怪我を放置しながら必死に子供を守り、言葉を紡ぐ母オオカミを、僕は放っておけなかった。

 ヒール――回復魔法が放たれた瞬間、森じゅうが眩い光に包まれた。その強い輝きに、ラテも、母オオカミも、子供も――そして魔法をかけた僕自身まで、あまりの眩しさに目を閉じた。

 その光がおさまり、そっと目を開けると、みんなの視線が僕にあっまっていた。

「ハハ。いやぁ……まいったね。こんなに光るなんて……思わなかった。ごめん、ラテ、眩しかったよね?」

「はい、眩しかったっす。でも、この光……誰かが気づくかもしれないっす」

 ――誰かが気がつく?

「ラテ、ほんと? うわ、それはまずいかも。でも、ラテ見てよ」

 僕は指をさす。そこには、さっきまで血に染まっていたはずの、母オオカミが元の姿に戻っていた。

「母ちゃん……」 

 子供のオオカミが涙を流して、飛びつく。

「すごい、オオカミの大怪我が治ってるっす」
「うん。……でも、よかった。ちゃんと治って」

 うんうん。《ヒール》はやっぱり万能だった。
 すごく喜びたいところだが、森中に走った光が誰かを呼んでしまっているのなら、立ち止まってはいられないか。

「ノエール様、急いでここを離れましょうっす。光を見た誰かが来たら……ノエール様が原因だって、きっとバレるっす」

 ラテの言葉に僕は頷く。

「……やっぱり、まずいか。うん、確かにそうだよね。じゃあ、オオカミさんたちも一緒に移動しよう。もしよかったら、僕の屋敷に来ませんか? まだ空いてる部屋もあるし」

 僕はそっと、オオカミの親子に手を差し伸べた。
 その僕の行動に、母オオカミは一瞬びくりとして子供のオオカミを後ろに隠し、戸惑いながらも口を開いた。

「……本当に、いいのですか? でも、私たちの存在が知られたら、人間に狙われる」

「そのときは、僕とラテで全力で守ります」

「守るって、あなたも人間でしょう?」
 
「そうですね、僕は人間ですが。それでも、襲ってくるほうが悪いと思います。だから僕は、あなたたちを守ります」
 

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