才がないと伯爵家を追放された僕は、神様からのお詫びチートで、異世界のんびりスローライフ!!

にのまえ

文字の大きさ
36 / 61

36話

 チェルシーを見送り、僕はラテに「たまにはテントではなく、部屋のベッドで寝てみようか」と告げた。ラテが頷いたので、それぞれ自分の部屋で寝ることにした。

(エアーベッドで寝るのも悪くないけど……やっぱり、このベッドとお布団は気持ちいい)

 うとうとしているうちに夜も更け、屋敷の中はしんと静まり返っていた。そのとき、僕の耳元で誰かが囁いた。

「我は、生姜焼きを所望する」

 低く、よく通る渋い声。

 僕は飛び起き、慌てて部屋を見渡した。だが、部屋の中には誰もいない。

(いまの……夢? いや、確かに聞こえた)

 ……まさか、幽霊?

 翌朝。僕はラテと一緒に畑でジャガイモを収穫しながら、その話をした。

「ラテ、昨日の夜さ、部屋で寝てたよね。そのとき……幽霊が僕の耳元で囁いてきたんだ」

「え? 幽霊っすか? なんて言ってたんす?」

「えっと……『我は、生姜焼きを所望する』って。低音のいい声だった」

「渋い声の幽霊っすねぇ。生姜焼きが好きなんすかね」

「好きなのかな……? だったら、お供えしたほうがいいのか? でも、カレーに使っちゃって豚肉があんまり残ってないんだよ」

 収穫を終え、新しくジャガイモの種芋を畑に植えながら呟くと、ラテはくすっと楽しそうに笑った。

「だったら、その幽霊にお願いしてみるっすよ。『生姜焼きにはお肉が必要です』って。そしたら幽霊も諦めるっす」

「えぇ……祟られたりしないかな」

「それは、大丈夫っすよ」

「ほんとうに?」
「ほんとうっす!」

 半信半疑だけど、幽霊が気になった僕は今夜も、自分の部屋で寝ることにした。

 そして深夜。

「我は、生姜焼きを所望する」

 再び、あの声が耳元に響いた。
 僕は意を決し、恐る恐る声を返す。

「あ、あの……生姜焼きを作るにはお肉が必要です。いま、生姜焼きを作れるほどのお肉がありません」

「なに? 肉が無いだと?」

 聞こえた声は少し驚いたように響き、それから――

「よかろう。数日待つがいい!」

 そう言い残していった。

(え……?)

 まさか幽霊から返事が返ってくるとは思わなかった。しかも、自分で肉を調達するとまで言っていた。

「嘘だろう……幽霊が肉を持ってくる? どうやって?」

 翌朝、その話をラテにすると、彼はにやにや笑った。

「それは楽しみっすね!」

「ラテ……? もしかして君、何か知ってるだろ」

「……ふふ、秘密っす」

 笑いながらそう言い、いくら聞いても教えてくれない。なら幽霊に聞くしかないと、部屋で待ってみたが。その夜、あの声は聞こえてこなかった。

(まさか……本当に肉を調達しに行ったのか? 異世界の幽霊って狩りができるのか?)

 そんな疑問を抱えたまま、数日が過ぎた。

 いつものようにラテと畑で作業していると、屋敷の方からチェルシーが現れる。その彼女の横には軍服を着て、頭には二本の角、背後には長い尻尾を生やした渋い男性がいる。

 どうやら、空き部屋に置いた転移鏡から現れたらしい。チェルシーはその男性を連れて、にこやかに僕のところまでやってきた。

「おはよう。ノエール君に頼まれていたお肉、持ってきたわよ!」

「えっ……僕が頼んだ、お肉?」

「うむ」

 男性が一歩前に出て、低い声で言う。

「我が肉を狩ってきた。生姜焼きを所望する」

 その瞬間、僕の背筋にぞくっとしたものが走った。

(この声……!)

 間違いない。……あの夜、僕の耳元で生姜焼きを要求してきた“幽霊”の声と同じだ。

あなたにおすすめの小説

出来損ないと追放された俺、神様から貰った『絶対農域』スキルで農業始めたら、奇跡の作物が育ちすぎて聖女様や女騎士、王族まで押しかけてきた

黒崎隼人
ファンタジー
★☆★完結保証★☆☆ 毎日朝7時更新! 「お前のような魔力無しの出来損ないは、もはや我が家の者ではない!」 過労死した俺が転生したのは、魔力が全ての貴族社会で『出来損ない』と蔑まれる三男、カイ。実家から追放され、与えられたのは魔物も寄り付かない不毛の荒れ地だった。 絶望の淵で手にしたのは、神様からの贈り物『絶対農域(ゴッド・フィールド)』というチートスキル! どんな作物も一瞬で育ち、その実は奇跡の効果を発揮する!? 伝説のもふもふ聖獣を相棒に、気ままな農業スローライフを始めようとしただけなのに…「このトマト、聖水以上の治癒効果が!?」「彼の作る小麦を食べたらレベルが上がった!」なんて噂が広まって、聖女様や女騎士、果ては王族までが俺の畑に押しかけてきて――!? 追放した実家が手のひらを返してきても、もう遅い! 最強農業スキルで辺境から世界を救う!? 爽快成り上がりファンタジー、ここに開幕!

大自然を司る聖女、王宮を見捨て辺境で楽しく生きていく!

向原 行人
ファンタジー
旧題:聖女なのに婚約破棄した上に辺境へ追放? ショックで前世を思い出し、魔法で電化製品を再現出来るようになって快適なので、もう戻りません。 土の聖女と呼ばれる土魔法を極めた私、セシリアは婚約者である第二王子から婚約破棄を言い渡された上に、王宮を追放されて辺境の地へ飛ばされてしまった。 とりあえず、辺境の地でも何とか生きていくしかないと思った物の、着いた先は家どころか人すら居ない場所だった。 こんな所でどうすれば良いのと、ショックで頭が真っ白になった瞬間、突然前世の――日本の某家電量販店の販売員として働いていた記憶が蘇る。 土魔法で家や畑を作り、具現化魔法で家電製品を再現し……あれ? 王宮暮らしより遥かに快適なんですけど! 一方、王宮での私がしていた仕事を出来る者が居ないらしく、戻って来いと言われるけど、モフモフな動物さんたちと一緒に快適で幸せに暮らして居るので、お断りします。 ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

親友と婚約者に裏切られ仕事も家も失い自暴自棄になって放置されたダンジョンで暮らしてみたら可愛らしいモンスターと快適な暮らしが待ってました

空地大乃
ファンタジー
ダンジョンが日常に溶け込んだ世界――。 平凡な会社員の風間は、身に覚えのない情報流出の責任を押しつけられ、会社をクビにされてしまう。さらに、親友だと思っていた男に婚約者を奪われ、婚約も破棄。すべてが嫌になった風間は自暴自棄のまま山へ向かい、そこで人々に見捨てられた“放置ダンジョン”を見つける。 どこか自分と重なるものを感じた風間は、そのダンジョンに住み着くことを決意。ところが奥には、愛らしいモンスターたちがひっそり暮らしていた――。思いがけず彼らに懐かれた風間は、さまざまなモンスターと共にダンジョンでのスローライフを満喫していくことになる。

スキル『農業』はゴミだと追放されたが、実は植物の遺伝子を書き換える神スキル【神農】でした。荒野を楽園に変えて異世界万博を開催します!

黒崎隼人
ファンタジー
「そのスキル『農業』?剣も魔法も使えないクズはいらん、失せろ!」 勇者召喚に巻き込まれて異世界へ転生した植物オタクの青年カイルは、地味なスキルを理由に王都を追放され、死の荒野へと捨てられた。 しかし、誰も知らなかったのだ。 彼のスキルが、ただの農業ではなく、植物の遺伝子さえ書き換え、不毛の大地を瞬く間に聖域に変える神の力【神農】であることを。 荒野を一瞬で緑豊かな楽園に変えたカイルは、伝説の魔獣フェンリルを餌付けして相棒にし、傷ついた亡国の美姫ソフィアを助け出し、自由気ままなスローライフを開始する。 やがて彼が育てた作物は「エリクサーより効く」と評判になり、その噂を聞きつけた商人によって、彼の領地で世界規模の祭典――『異世界万博』が開催されることに!? 一方、カイルを追放した王国は深刻な食糧難に陥り、没落の一途をたどっていた。 「今さら戻れと言われても、この野菜は全部、俺とソフィアのとフェンのものですから」 最強の農民が送る、世界を揺るがす大逆転・万博ファンタジー、ここに開幕!

転生幼子は生きのびたい

えぞぎんぎつね
ファンタジー
 大貴族の次男として生まれたノエルは、生後八か月で誘拐されて、凶悪な魔物が跋扈する死の山に捨てられてしまった。  だが、ノエルには前世の記憶がある。それに優れた魔法の才能も。  神獣の猫シルヴァに拾われたノエルは、親を亡くした赤ちゃんの聖獣犬と一緒に、神獣のお乳を飲んで大きくなる。  たくましく育ったノエルはでかい赤ちゃん犬と一緒に、元気に楽しく暮らしていくのだった。  一方、ノエルの生存を信じている両親はノエルを救出するために様々な手段を講じていくのだった。 ※ネオページ、カクヨムにも掲載しています

家の庭にダンジョンができたので、会社辞めました。

希羽
ファンタジー
都内のブラックIT企業で働く社畜・佐藤健太(27歳)。 手取り18万、残業100時間。唯一の資産は、亡き祖母から相続した郊外のボロ戸建てだけ。 「このまま死ぬのかな……」 そう絶望していたある夜、庭の物置の裏に謎の穴が出現する。 ​そこは、なぜか最弱モンスターしか出ないのに、ドロップアイテムだけは最高ランクという、奇跡のボーナスダンジョンだった。 試しにスライムを叩いたら、出てきた宝石の査定額はなんと――【1,000,000円】。 ​「……え、これ一個で、俺の年収の3分の1?」 ​スマホアプリで即換金、ドローン配送で手間いらず。 たった10分の庭仕事で5000万円を稼ぎ出した健太は、翌朝、上司に辞表を叩きつけることを決意する。 ※本作は小説家になろうでも投稿しています。

一人、辺境の地に置いていかれたので、迎えが来るまで生き延びたいと思います

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
大きなスタンビートが来るため、領民全てを引き連れ避難する事になった。 しかし、着替えを手伝っていたメイドが別のメイドに駆り出された後、光を避けるためにクローゼットの奥に行き、朝早く起こされ、まだまだ眠かった僕はそのまま寝てしまった。用事を済ませたメイドが部屋に戻ってきた時、目に付く場所に僕が居なかったので先に行ったと思い、開けっ放しだったクローゼットを閉めて、メイドも急いで外へ向かった。 全員が揃ったと思った一行はそのまま領地を後にした。 クローゼットの中に幼い子供が一人、取り残されている事を知らないまま

異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。

もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。 異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。 ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。 残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、 同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、 追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、 清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……