上 下
8 / 27

あやかし横丁へ行こう①

しおりを挟む
 本日は日曜日、月に一度の治療院のお休みの日。
 前日にヒョウさんに食事はいらないと伝え、環は早朝から豆狸の喫茶店でモーニングを食べた後。コンビニ、デパートに買い物に行くより、環は広いあやかし横丁で、食べ歩きを楽しむのが日課になっていた。

 環が生まれた村は田舎過ぎて遊ぶ子供が居らず、治療院に訪れたあやかしと幼い頃から遊んでいた。学校も分校で先生は教員免許を持つあやかしで、生徒もほとんどあやかしだった。

 周りに、あやかしがいるのが環のとっての日常。
 環とシンヤが通う学園にも、数人のあやかしが通っているのだ。

「さても、今日は狐神社の方面を歩こうかな?」

 赤黒の髪をのポニテにして、パーカーとジーパンのラフな格好で吹雪荘を出た。管理人のヒョウさんが割烹着と着物姿で、竹箒を持ち玄関を履いていた。

「ヒョウさん、行ってきます」
「環ちゃん、気を付けてね」

「はーい」

 吹雪荘の近にある。豆狸の喫茶店で早朝にコーヒーを頼むとついてくる、分厚い食パンにバターとあんこ、サラダ、ゆで卵でまったり朝食をとる。

 カランコロンと真鍮製のドアベルが鳴る。やって来たのはこの前治療院に来た、シシさんがパソコンを持って現れた。彼の頬の腫れが引いているという事は、カマイタチの歯医者に行ったようだ。

(……歯痛が治ったみたいで、よかった)

「お待たせしました」
「ありがとう」

 店員さんの小狸達が運んできた、コーヒーとモーニングを開け取った。環は砂糖一つ入れたコーヒーと、あんことバターたっぷりの分厚い食パンをかじった。

 コーヒーの香りと、サクサクに焼かれた甘いパンにホッコリする。

「あんことバターは最強だわ」

 美味しい朝食を楽しみ、喫茶店を後にして横丁の北側にある狐神社を目指した。



 □■□



 あやかし横丁は商店街の様に、古き木造の店が並んでいる。
 初め訪れる北側には座敷童の古本屋、豆狸の喫茶店二号店、一反木綿のたこ焼き屋。あやかし達が住む長屋が見えた。

「ここが狐神社と第一診療所かぁ」

 北にそびえる赤い鳥居と狐の狛犬が迎える狐神社。
 その近くに私が働く第三治療院より大きな第一治療院と、一回の治療では治らない重病のあやかしが入院できる、建物が側に隣接していた。

(大きな治療院。ここには熟練の病魔絵師と治療師がいて、後継の見習の治療師と病魔絵師がいるって聞いたわ)

 環とシンヤは先生となるあやかし治療師と病魔絵師がいない為、見習いを第三治療院で三年行ない、試験に受かってようやく治療師と病魔絵師になれる。

 環は試験に受かったら狼治療院に来てくれる、治療師の婿養子を探さなくてはならないのだ。
 
しおりを挟む

処理中です...