召喚をされて期待したのだけど、聖女ではありませんでした。ただの巻き込まれって……

にのまえ

文字の大きさ
8 / 12

しおりを挟む
「魔王の封印が解けてしまうんだ、俺達は聖女の楓さんに力を貸してもらいたい」
「そんな力はわたしになんてないわ」

 二人は見合って『頼む」「嫌」「頼む」……を言い合っている、それを二人に手を掴まれて、見ているだけのわたし。

 言い争う二人を止めるべく、会場にパーンと手を打つ音が響く。

 
「ここで聖女と親睦を深めるために、皆で食事を取ろう」


 いきなり話し始めた、王冠を被った、トラ王子よりも良い服のおじさん。
 
 両隣のガタイのいい騎士。金の椅子。まさかあれは国王陛下? 
 トラ王子にどことなく似たイケメンで、ダンディおじ様だ。

「お腹も出ていない!」
「お前はいきなり、なにを言い出した?」

「別に」

 隣のトラ王子と見比べて、女性なら気になると、反対側の楓さんに聞く。

 ゴニョ、ゴニョ「トラ王子と、王様どっちがタイプ?」

「えっ、私は……ミカさんかな」

 王と王子ではなくわたし⁉︎ 聞いた趣旨が通じてない? あ、いつの間にか楓さんと手を繋いでた手が恋人繋ぎになってる……
 まさかわたしが余りにも、胸平過ぎて、気付いていない?

「わたし、女だよ」
「知ってる。ミカさんが私を守り、凛々しく声を上げた時に……キャッ」

 頬が赤くなる楓さん。うーん、まっいいか。嫌われるより好かれる方が断然いい。

「改めてよろしくね。楓さん」
「よろしくね、ミカさん」


 食堂は離れにあるらしく、移動するらしい。わたし達の案内はトラ王子。
 城の中をトラ王子の後について行ってる。

 やはり城の中は軽い迷路だ。トラ王子を見失うと迷子にいつでもなれる。

 しばらく進むと、中央の庭園か多くの手入れの行き届いた薔薇が見えた。薔薇ってこんな風に咲くんだ。香りもいい。

 ガサッ、ガサッ。

 庭園の奥の茂みで何か動いた⁉︎


 ♢


 動く者に好奇心。獲物を狩る、猫の様に近付いた。

 動いた茂みにはふわもこの耳と角⁉︎ 右から黄金色の耳とたてがみ、その横は白いふわもこな耳。その横は耳じゃない立派な角だ。

「耳は分かるけど、角ってなに?」

「それは私のことかな? お嬢さん」

「おい! ルア」

「やだ、後で隊長に怒られちゃうじゃない」


 茂みから立ち上がった、トラ王子よりも大きな三人の男達? 

 
 ライオンと猫の獣人と竜の人⁉︎ 

「すまない。君は、男の子だったのだな」

 あーはいはい、竜の人。胸平だけを見て、決めつけたね。

「ルア、違うわよ。この子は女の子よ」

「そうだ。王達は召喚で聖女を呼んでんだ、男が来るはずない……多分」

 言い返そうとした、けど、三人がまたガサッと茂みに隠れた。と同時にわたしの体が宙に浮いた。
 後ろから、脇に手を入れられて、持ち上げられたんだ。


「ミカ、こんな所で何してんだ?」

「トラ王子⁉︎ 薔薇が見事で、つい、ふらっと見に行っちゃった」

「そうか。父上達が食堂で待ってる、ほら行くぞ」
「あーい」

 茂みに隠れ切れていない、みんなに、またね。の意味を込めて手を振った。


  
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。 「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」 そう言われて、ミュゼは城を追い出された。 しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。 そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

聖女のはじめてのおつかい~ちょっとくらいなら国が滅んだりしないよね?~

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女メリルは7つ。加護の権化である聖女は、ほんとうは国を離れてはいけない。 「メリル、あんたももう7つなんだから、お使いのひとつやふたつ、できるようにならなきゃね」 と、聖女の力をあまり信じていない母親により、ひとりでお使いに出されることになってしまった。

召喚失敗!?いや、私聖女みたいなんですけど・・・まぁいっか。

SaToo
ファンタジー
聖女を召喚しておいてお前は聖女じゃないって、それはなくない? その魔道具、私の力量りきれてないよ?まぁ聖女じゃないっていうならそれでもいいけど。 ってなんで地下牢に閉じ込められてるんだろ…。 せっかく異世界に来たんだから、世界中を旅したいよ。 こんなところさっさと抜け出して、旅に出ますか。

ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる

街風
ファンタジー
「お前を追放する!」 ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。 しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。

乙女ゲームの悪役令嬢に転生したけど何もしなかったらヒロインがイジメを自演し始めたのでお望み通りにしてあげました。魔法で(°∀°)

ラララキヲ
ファンタジー
 乙女ゲームのラスボスになって死ぬ悪役令嬢に転生したけれど、中身が転生者な時点で既に乙女ゲームは破綻していると思うの。だからわたくしはわたくしのままに生きるわ。  ……それなのにヒロインさんがイジメを自演し始めた。ゲームのストーリーを展開したいと言う事はヒロインさんはわたくしが死ぬ事をお望みね?なら、わたくしも戦いますわ。  でも、わたくしも暇じゃないので魔法でね。 ヒロイン「私はホラー映画の主人公か?!」  『見えない何か』に襲われるヒロインは──── ※作中『イジメ』という表現が出てきますがこの作品はイジメを肯定するものではありません※ ※作中、『イジメ』は、していません。生死をかけた戦いです※ ◇テンプレ乙女ゲーム舞台転生。 ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇なろうにも上げてます。

【完結】偽物聖女として追放される予定ですが、続編の知識を活かして仕返しします

ユユ
ファンタジー
聖女と認定され 王子妃になったのに 11年後、もう一人 聖女認定された。 王子は同じ聖女なら美人がいいと 元の聖女を偽物として追放した。 後に二人に天罰が降る。 これが この体に入る前の世界で読んだ Web小説の本編。 だけど、読者からの激しいクレームに遭い 救済続編が書かれた。 その激しいクレームを入れた 読者の一人が私だった。 異世界の追放予定の聖女の中に 入り込んだ私は小説の知識を 活用して対策をした。 大人しく追放なんてさせない! * 作り話です。 * 長くはしないつもりなのでサクサクいきます。 * 短編にしましたが、うっかり長くなったらごめんなさい。 * 掲載は3日に一度。

処理中です...