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〈第3章 秋、変わる色〉
第25話
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「あの、先生。聞いておきたい事って、どういう……?」
僕は先生の所へ行って聞く。
急な呼び止めはとても珍しく、僕は一体何の事だろうと疑問に思っていた。
「金住さんの事で気になっている事があるんじゃないかと思ってね」
「え……っと、確かにそれは、そうなんですけど」
一体どうしてわかるのか? そんな疑問を口に出す前に北村先生が答える。
「ちょっと前に母野さんからちょっと聞いてね。もし話せる機会があったら話しておいてくださいってね」
「母野先輩が……?」
「ええ。自分は詳しい事わからないから、当時の事をよく知っている私が話せますか? って聞いてきたのですよね」
いつの間に母野先輩がそんな事を話していてくれたのだろう。
北村先生の話を聞く限り、多分僕が聞いた後にその事を話したのだろうか? しかし、今そんな事を考えても仕方ない様な気がする。
今の本題は金住先輩が学校内でちょっとばかし有名になったきっかけ……そのスピーチが生まれるまでの話なのだから。
「しかし……あの頃から彼女はあのような感じでしたね」
「……そうなんですね」
母野先輩も似たような事を言っていた記憶がある。少なくとも何人かは金住先輩の印象は当時から変わりないと思っているという事だった。
「金住さんはとにかく真っすぐに物事に立ち向かう性格でしたね。けれど、自分を忘れる事なくコントロールできる人でもありました」
どうやら、北村先生から見ると金住先輩はそんな印象の生徒だそうだ。
「彼女がビブリオ大会であのスピーチをしたきっかけは、私が話した事だと言う事は間違いないと思いますね」
「……え?」
それは、どういう事なのだろう。
「そのスピーチをした本当の理由は本人じゃないとわかりませんが、私にはあの日の出来事がきっかけだったと思いますね……」
そうして、北村先生は金住先輩が一年生だったころをゆっくりと語った。
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それから北村先生はそのきっかけとなる出来事を話したのだ。
金住先輩が一年生の時の9月、文芸部ではいつも通り毎月発行する冊子の作成のための準備を進めていたそうだ。この時点では金住先輩や母野先輩、行村先輩の他に三年の先輩の人が二人いたそうだ。
それぞれ名字は片村、音無だったらしい。
話を戻すと、金住先輩はその日に突然あることを北村先生に聞いてきたそうだ。
「先生、一つ聞きたい事があります」
始まりはこんな感じだったという。
「金住さん、どうしたんだい?」
北村先生は突然の質問に何か不思議そうに思いながらも、その詳細を聞きに行った。
「クラスメイトがある悪口を言っていまして、それで先生に聞いてみたかったんです。『物語』って意味がないものだと、思いますか?」
金住先輩は、そんなことを聞いてきたらしい。
どうやら、話を聞くとそのクラスメイトは昼休みにある作品についての悪口を散々と言いふらした事があったのだという。それも皆が知っている様な有名なタイトルだったという。
その悪口は当然ではあったが、とても聞くに堪えない、相当酷い内容だったのだと金住先輩は言っていたらしい。
そんな事を聞いてきた北村先生は、なるほどと納得したとのことだった。
金住先輩は『物語』というものを愛してた。だから、その言葉を聞いてとても許せなかったと思ったのだろう。けれど、その場では金住先輩は何も言わなかったのだと話していた。
それは、その通りだったらしくこの日にトラブルがあったという報告は一つもなかったらしい。金住先輩はそんな事に反論しても何の意味が無いと判断したからだと考えたらしい。例え、それが許せなくても例え反論した所で相手には何も響かないのだと。
北村先生はそんな事を聞いてきた金住先輩に対し、こう答えたそうだった。
「私は、『物語』に意味があるかないかという事は一度も考えたことが無いね」
そして、こう続けたそうだ。
「『物語の意味』というのは、自分で見つけていくものではないのかな? それが見えない内は結局は何もわかっていないという事だと思う」
金住先輩は一瞬、虚を突かれた様に狼狽えたそうだったが、すぐに持ち直して「そうですか。ありがとうございます」と伝えたそうだった。
それから、しばらくしたある日。金住先輩は職員室まで出向いて、北村先生に出場したいと言い出したものがあった。
――それが、あのスピーチをしたビブリオ大会だったのだ。
北村先生は急にそんな事を言い出した彼女に対して特に疑問も持たず、快く了承したそうだ。
それ以来、部活では何かの文章を練っている様子の彼女を度々見かける様になったという。片村先輩や音無先輩はその様子を見てこう話していたそうだ。
『最近、金住さんがとても熱中した様子で何かの文章を書くことに熱中していて、彼女が今までで一番輝いている様に見えたね』
北村先生は、その文章がビブリオ大会で使用する文章だと気づいたが、それ以外にも彼女はもう一つ、ある文章を書いていた事には流石にわからなかったそうだ。
それから、北村先生はビブリオ大会の開催当日の事を話してくれたのだ――
僕は先生の所へ行って聞く。
急な呼び止めはとても珍しく、僕は一体何の事だろうと疑問に思っていた。
「金住さんの事で気になっている事があるんじゃないかと思ってね」
「え……っと、確かにそれは、そうなんですけど」
一体どうしてわかるのか? そんな疑問を口に出す前に北村先生が答える。
「ちょっと前に母野さんからちょっと聞いてね。もし話せる機会があったら話しておいてくださいってね」
「母野先輩が……?」
「ええ。自分は詳しい事わからないから、当時の事をよく知っている私が話せますか? って聞いてきたのですよね」
いつの間に母野先輩がそんな事を話していてくれたのだろう。
北村先生の話を聞く限り、多分僕が聞いた後にその事を話したのだろうか? しかし、今そんな事を考えても仕方ない様な気がする。
今の本題は金住先輩が学校内でちょっとばかし有名になったきっかけ……そのスピーチが生まれるまでの話なのだから。
「しかし……あの頃から彼女はあのような感じでしたね」
「……そうなんですね」
母野先輩も似たような事を言っていた記憶がある。少なくとも何人かは金住先輩の印象は当時から変わりないと思っているという事だった。
「金住さんはとにかく真っすぐに物事に立ち向かう性格でしたね。けれど、自分を忘れる事なくコントロールできる人でもありました」
どうやら、北村先生から見ると金住先輩はそんな印象の生徒だそうだ。
「彼女がビブリオ大会であのスピーチをしたきっかけは、私が話した事だと言う事は間違いないと思いますね」
「……え?」
それは、どういう事なのだろう。
「そのスピーチをした本当の理由は本人じゃないとわかりませんが、私にはあの日の出来事がきっかけだったと思いますね……」
そうして、北村先生は金住先輩が一年生だったころをゆっくりと語った。
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それから北村先生はそのきっかけとなる出来事を話したのだ。
金住先輩が一年生の時の9月、文芸部ではいつも通り毎月発行する冊子の作成のための準備を進めていたそうだ。この時点では金住先輩や母野先輩、行村先輩の他に三年の先輩の人が二人いたそうだ。
それぞれ名字は片村、音無だったらしい。
話を戻すと、金住先輩はその日に突然あることを北村先生に聞いてきたそうだ。
「先生、一つ聞きたい事があります」
始まりはこんな感じだったという。
「金住さん、どうしたんだい?」
北村先生は突然の質問に何か不思議そうに思いながらも、その詳細を聞きに行った。
「クラスメイトがある悪口を言っていまして、それで先生に聞いてみたかったんです。『物語』って意味がないものだと、思いますか?」
金住先輩は、そんなことを聞いてきたらしい。
どうやら、話を聞くとそのクラスメイトは昼休みにある作品についての悪口を散々と言いふらした事があったのだという。それも皆が知っている様な有名なタイトルだったという。
その悪口は当然ではあったが、とても聞くに堪えない、相当酷い内容だったのだと金住先輩は言っていたらしい。
そんな事を聞いてきた北村先生は、なるほどと納得したとのことだった。
金住先輩は『物語』というものを愛してた。だから、その言葉を聞いてとても許せなかったと思ったのだろう。けれど、その場では金住先輩は何も言わなかったのだと話していた。
それは、その通りだったらしくこの日にトラブルがあったという報告は一つもなかったらしい。金住先輩はそんな事に反論しても何の意味が無いと判断したからだと考えたらしい。例え、それが許せなくても例え反論した所で相手には何も響かないのだと。
北村先生はそんな事を聞いてきた金住先輩に対し、こう答えたそうだった。
「私は、『物語』に意味があるかないかという事は一度も考えたことが無いね」
そして、こう続けたそうだ。
「『物語の意味』というのは、自分で見つけていくものではないのかな? それが見えない内は結局は何もわかっていないという事だと思う」
金住先輩は一瞬、虚を突かれた様に狼狽えたそうだったが、すぐに持ち直して「そうですか。ありがとうございます」と伝えたそうだった。
それから、しばらくしたある日。金住先輩は職員室まで出向いて、北村先生に出場したいと言い出したものがあった。
――それが、あのスピーチをしたビブリオ大会だったのだ。
北村先生は急にそんな事を言い出した彼女に対して特に疑問も持たず、快く了承したそうだ。
それ以来、部活では何かの文章を練っている様子の彼女を度々見かける様になったという。片村先輩や音無先輩はその様子を見てこう話していたそうだ。
『最近、金住さんがとても熱中した様子で何かの文章を書くことに熱中していて、彼女が今までで一番輝いている様に見えたね』
北村先生は、その文章がビブリオ大会で使用する文章だと気づいたが、それ以外にも彼女はもう一つ、ある文章を書いていた事には流石にわからなかったそうだ。
それから、北村先生はビブリオ大会の開催当日の事を話してくれたのだ――
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