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毒味役の死
◆◆◆◆◆
俺はウルスラの言葉に動揺していた。毒味役が付いている事すら、気がついていなかったから。
「毒味役が三人も亡くなった?」
「そうです、セツ様」
俺の声は動揺でかすれていた。
「毒味役が私に付いているなんて知らなかった。誰も教えてくれなかった」
ウルスラは俺の動揺を見抜いていただろうが、指摘するような真似はしなかった。ただ、真剣な眼差しで俺を見つめる。
「パウル陛下から情報開示の許可が降りた為、セツ様にいま話しています」
ウルスラが表情も変えずにそう返事した。俺はかっとなり語気を強める。
「私の為に人が三人も亡くなったんだよ!その事を知らずに、私は過ごしてしまった。それはあまりに不誠実な態度で・・亡くなった本人やご遺族に謝りもせず・・」
体が震えて声が途切れてしまった。そんな俺にウルスラは厳しい口調で応える。
「彼らは職務に殉じただけです。亡くなったのは彼らの技量不足であり、セツ様が気に病むことではありません」
「ウルスラ!」
「聖女様は三十歳を迎えられました。特殊な環境で育ったとはいえ、もう十分に大人です。パウル陛下が情報開示を決定されたのは、セツ様が大人として情報を受け止められると信じての事でしょう。どうか、陛下の期待に答えて大人の対応をお願いします」
俺は思わず黙り込んでしまった。ウルスラの言葉は正論だ。だけど、気持ちの整理が追い付かない。俺はウルスラから視線を反らした。
「・・聖女様」
「ブリギッタ殿下」
床に膝を付いていた殿下が立ち上がり、俺のそばにやって来た。そして、優しく背中を撫でてくれる。
「沢山の情報を一気に取り入れては、気持ちが揺らぎます。少し休まれてはいかがですか、セツ様?」
「そうですね。でも、聞きたいことがあります。私に毒を盛った黒幕は、パール様と彼女の母君で間違いないのですか?その判断は正しいものですか、ブリギッタ殿下」
「彼等が黒幕で間違いありません。慎重に調査と裁判が行われました。証拠も自白もありました。その結果、処刑が決定したのです」
「そうですか・・」
「セツ様は震えておられます。何を恐れておられるのですか?」
俺はブリギッタ殿下を見つめて口を開いた。
「パール様と彼女の母君は、アイナ・ハロンステーン公の娘と孫娘。公爵に対して、陛下は個人的な恨みをお持ちです。時には恐怖で政治を支配することも必要だと、陛下は仰っていました。その対象としては、二人は都合のよい生け贄で・・もしかしたら、陛下は・・」
「聖女様!」
「セツ様!」
ウルスラとブリギッタ殿下が同時に声を上げた。俺はハッとして口にてをやる。俺は何を口走った?根拠のない陛下への不審を口にしてどうする。
「セツ様」
「ウルスラ」
いつの間にかウルスラが俺の側にいた。彼が身を屈めて俺の耳元で小さく囁く。
「セツ様の回りには、常に暗部の者が潜んでおります。不敬に当たる発言をセツ様がなさっても、陛下は貴方をお許しになるでしょう。ですが、周囲の者に迷惑がかかる場合もございます。今の状況では、ブリギッタ殿下です」
「ウルスラ・・私は」
「セツ様はいまでも、陛下の鳥籠の中です。その事を自覚してください」
「新しい聖女が召喚されて・・私は陛下に鳥籠から飛び立つように促されていると思っていたけど・・違ったんだね」
ウルスラが俺の背をそっと撫でる。ウルスラとブリギッタ殿下の暖かい手を背中に感じながら、俺は複雑な思いでいた。
◆◆◆◆◆
俺はウルスラの言葉に動揺していた。毒味役が付いている事すら、気がついていなかったから。
「毒味役が三人も亡くなった?」
「そうです、セツ様」
俺の声は動揺でかすれていた。
「毒味役が私に付いているなんて知らなかった。誰も教えてくれなかった」
ウルスラは俺の動揺を見抜いていただろうが、指摘するような真似はしなかった。ただ、真剣な眼差しで俺を見つめる。
「パウル陛下から情報開示の許可が降りた為、セツ様にいま話しています」
ウルスラが表情も変えずにそう返事した。俺はかっとなり語気を強める。
「私の為に人が三人も亡くなったんだよ!その事を知らずに、私は過ごしてしまった。それはあまりに不誠実な態度で・・亡くなった本人やご遺族に謝りもせず・・」
体が震えて声が途切れてしまった。そんな俺にウルスラは厳しい口調で応える。
「彼らは職務に殉じただけです。亡くなったのは彼らの技量不足であり、セツ様が気に病むことではありません」
「ウルスラ!」
「聖女様は三十歳を迎えられました。特殊な環境で育ったとはいえ、もう十分に大人です。パウル陛下が情報開示を決定されたのは、セツ様が大人として情報を受け止められると信じての事でしょう。どうか、陛下の期待に答えて大人の対応をお願いします」
俺は思わず黙り込んでしまった。ウルスラの言葉は正論だ。だけど、気持ちの整理が追い付かない。俺はウルスラから視線を反らした。
「・・聖女様」
「ブリギッタ殿下」
床に膝を付いていた殿下が立ち上がり、俺のそばにやって来た。そして、優しく背中を撫でてくれる。
「沢山の情報を一気に取り入れては、気持ちが揺らぎます。少し休まれてはいかがですか、セツ様?」
「そうですね。でも、聞きたいことがあります。私に毒を盛った黒幕は、パール様と彼女の母君で間違いないのですか?その判断は正しいものですか、ブリギッタ殿下」
「彼等が黒幕で間違いありません。慎重に調査と裁判が行われました。証拠も自白もありました。その結果、処刑が決定したのです」
「そうですか・・」
「セツ様は震えておられます。何を恐れておられるのですか?」
俺はブリギッタ殿下を見つめて口を開いた。
「パール様と彼女の母君は、アイナ・ハロンステーン公の娘と孫娘。公爵に対して、陛下は個人的な恨みをお持ちです。時には恐怖で政治を支配することも必要だと、陛下は仰っていました。その対象としては、二人は都合のよい生け贄で・・もしかしたら、陛下は・・」
「聖女様!」
「セツ様!」
ウルスラとブリギッタ殿下が同時に声を上げた。俺はハッとして口にてをやる。俺は何を口走った?根拠のない陛下への不審を口にしてどうする。
「セツ様」
「ウルスラ」
いつの間にかウルスラが俺の側にいた。彼が身を屈めて俺の耳元で小さく囁く。
「セツ様の回りには、常に暗部の者が潜んでおります。不敬に当たる発言をセツ様がなさっても、陛下は貴方をお許しになるでしょう。ですが、周囲の者に迷惑がかかる場合もございます。今の状況では、ブリギッタ殿下です」
「ウルスラ・・私は」
「セツ様はいまでも、陛下の鳥籠の中です。その事を自覚してください」
「新しい聖女が召喚されて・・私は陛下に鳥籠から飛び立つように促されていると思っていたけど・・違ったんだね」
ウルスラが俺の背をそっと撫でる。ウルスラとブリギッタ殿下の暖かい手を背中に感じながら、俺は複雑な思いでいた。
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