召喚聖女が十歳だったので、古株の男聖女はまだ陛下の閨に呼ばれるようです

月歌(ツキウタ)

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扉を開いた先には

◆◆◆◆◆

チョコレートの箱を胸に抱き、男たちを引き連れて部屋を出た。

「ぐぁ!?」

扉を開いた先には、パウル陛下が立っていた。俺は驚き妙な声を出してしまったが、素早く表情を引き締める。そして、陛下をちょっと挑発するように見つめて口を開いた。

「パウル陛下、これから公務ですか?途中までご一緒しても宜しいでしょうか?私はこれから第二王子と共に、神殿に向かう予定なのです。ね、ブリギッタ殿下?」

俺の言葉にパウル陛下が眉を跳ね上げる。そして、少し意地悪な笑みを浮かべて言葉を紡いだ。

「そうなのか、ブリギッタ?」
「はい、パウル陛下」

ブリギッタ殿下とウルスラは、俺の後ろで最敬礼をしている。無論、陛下に向けての敬礼だ。パウル陛下はブリギッタ殿下の言葉に応じて頷いた。そして、言葉を言い放つ。

「一人で行け、ブリギッタ」
「え?」

「お前は女を苦手としているようだが、神殿の女聖女をいつまでも遠ざけるな。抱けとは言わぬが、他のやり方で早く躾をしろ。そして、呪いを払う装身具は女聖女に選ばせよ」

俺はパウル陛下の言葉に唖然とした。陛下の暗部組織が俺を監視しているのは分かっていたが、先ほどの会話が筒抜けになっている。

だが、それはいい。
それよりも、気になる言葉があった。

「パウル陛下」
「なんだ、セツ?」
「先ほどの言葉を撤回してください」
「・・どの言葉だ?」
「お分かりにならないのですか?」
「撤回を必要とする言葉はない」
「左様ですか・・」
「そうだが、問題か?」

俺とパウル陛下の言葉のやり取りで、なにやら回りがピリピリとし出した。いかん・・周囲に余計なプレッシャーを掛けてしまった。早々に会話は終了せねば。

「では、申し上げます」
「許す」

「ブリギッタ殿下が、召喚された女聖女と親しくされることには賛成です。それが、殿下の身を護ることになるからです。ですが、女聖女に対して『早く躾を』とはあまりの言葉。訂正願います、パウル陛下」

不意に、パウル陛下に腕を掴まれた。そして、そのまま胸に抱き寄せられる。俺の手からチョコレートの入った箱が廊下の床に落ち、中身がコロコロと飛び出した。

「あっ」
「俺はお前の躾をした」
「っ!」

「初めて男に抱かれたお前は、ひどく怯えていたな。だが、男聖女は躾を受け入れ・・俺の鳥籠に入った。違うか、セツ?」

「私は!」
「セツ」
「っ・・」

抱きしめられ耳元で囁かれて、俺の体は自然と反応を示す。火照る顔を見られまいとして俯くと、陛下がチョコレートを靴先で踏み潰していた。

「・・私は三十歳となり、陛下の配慮により情報を得ることを許されました。私はパウル陛下の望むままに動いているだけです。どうして、イライラとなさっておいでなのですか?」

俺は顔をあげて陛下を見つめて発言した。俺の言葉に陛下は表情を改めると、ゆっくりと口を開いた。

「・・マルヘリート・デ・レーデル」
「大神官様?」
「あれに逢うことは許していない」

「マルヘリート様は私の言葉の師です。陛下の許可がおりず長く逢っておりません。陛下は私が鳥籠から飛び立つ事を、望んでおいでなのでしょ?私は様々な情報に触れて陛下のお役に立てる人間に・・友になりたいのです。その為には、博識な先生にお逢いして様々な事を知る必要があります」

「うるさい、黙れ」

突然、唇を奪われた。そして、そのまま抱き上げられる。しかも、そのまま陛下が歩きだす。

いやまて。なんだ!この恥ずかしい退場の仕方は!中年のおっさんを抱き上げてキスしながら歩くとか、陛下はバカなのか!

恥ずかしい!恥ずかしい!


◆◆◆◆◆

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