兄上の五番目の花嫁に選ばれたので尻を差し出します

月歌(ツキウタ)

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勇者の部屋で待つ!

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◆◆◆◆

クリムゾンと共に、僕は魔王城の中層階にある勇者の部屋に向かった。こっそり侵入した勇者の部屋は、飾り気はないが清潔だった。

「勇者が魔王城の中層階に住んでいるなんて、すっごく生意気!てっきり、地下牢獄で鎖に繋がれて、不自由な生活していると思っていたのに」

僕は勇者のベッドに腰をおろして、シーツの手触りを確かめた。滑らかな肌触り。

「人間の肌が弱いのは知っているけど、勇者にこんな上質のシーツは不要だと思うね!全くもって、無駄!」

僕が延々と愚痴を溢していると、クリムゾンが呆れた声で話しかけてきた。

「勇者は魔王の食事だ。清潔に保つのは勇者のためではなく、魔王の為だ。アムールは、やはり勇者に嫉妬しているようだな?」

僕はベッドに寝転んで、クリムゾンに軽く手をふった。

「そうだよ。僕は勇者に嫉妬してる。だけど、勇者がデッドリー兄上にとって害となる存在だと判断した時には、殺すつもりだから。その時は協力してね、クリムゾン?」

「俺を巻き込むな。魔王に睨まれるのは嫌だ。じゃあ、俺は勇者を部屋に連れ帰ってくる。その間は、アムールが一人きりになるから、扉に結界を張っておく。俺が戻るまでは扉を開くなよ、アムール?」

僕はベッドに転がりちょっとエッチなポーズを取りながら、クリムゾンを送り出すことにした。

「愛しい、クリムゾン。このベッドの上で、貴方の帰りを待ってます」

「可愛くないぞ、アムール」
「そう?」
「意地悪だ」
「そう~?」
「とにかく、行ってくる」
「行ってらっしゃい、貴方」
「おう」

クリムゾンが部屋を出ていくと、僕は本格的にベッドに寝転がった。シーツからは人間の香りがする。これが勇者の香り。なんとなくシーツに顔を埋めてみた。

「なんか、眠い」

急に眠気に誘われて、僕は眼を閉じた。昨夜は、デッドリー兄上のベッドで過ごした。リラックスしていたつもりだが、やっぱり緊張していたみたい。

「五番目の魔王の花嫁かぁ・・」

デッドリー兄上の様子では、僕を頻繁に寝所に呼ぶつもりはないようだ。でも、他の花嫁に舐められないように、時には閨に呼ばれるかもしれない。

「・・デッドリー兄上」

なんだか胸が切なくなる。僕はずっと兄上に守られて生きてきた。魔力に乏しい僕を、デッドリー兄上はバカにすることなく接してくれた。

嬉しかった。

でも、デッドリー兄上が魔王に選ばれてからは、距離を感じるようになっていた。あまりにも立場が違ってしまったから。

「兄上・・」

だから、魔王の花嫁に選ばれて僕は嬉しい。たとえ、五番目の花嫁だろうとも・・きっと、デッドリー兄上の役にたってみせる。

「クリムゾンの奴・・帰ってこないなぁ。寝ちゃうよ?寝ちゃうから」

僕は睡魔に勝てず、そのままベットに沈んだ。


◆◆◆◆◆
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