娼館で働く托卵の子の弟を義兄は鳥籠に囲いたい

月歌(ツキウタ)

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第一部 ヤン=ビーゲル

第16話 護衛のエドガー=ブリフト

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◆◆◆◆◆


「貴様、俺のヤンに何してやがる」

シノのその言葉に不快感をあらわにしたライナー兄上が、シノの背後に声を掛ける。

「斬り捨てろ」

シノが背後に忍び寄る男に気がついた時には遅かった。兄の護衛のエドガー=ブリフトが剣を抜いてシノに迫る。

「エドガー、斬るな!命令だ!」

僕はエドガーの動きを制する為に咄嗟に叫んでいた。エドガーはちらりと僕を見た後、シノの後頸部を剣の柄頭で殴打する。

「ぐぁっ!」

シノがうめき声をあげてその場に倒れ込むと、エドガーは淀みない動きで制圧した。エドガーはシノの首に剣をあてがうが斬る様子はない。

シノは気絶寸前だが無事だ。

「良かった‥‥。」

安堵の声を漏らした僕に、兄が感情の見えぬ表情で口を開く。

「なぜこの男を庇う、ヤン?お前の肌を傷つけた男ではないのか?」

ライナー兄上はシノの事を噛みつき変態客と勘違いしてる。これは誤解を解かないとまずい!

「シノは僕の客じゃないよ!」
「では‥‥誰だ?」

「彼は娼館の主の息子で、娼婦や男娼の世話をしてくれてる人。さっきまでドトールと一緒に僕の怪我を治療してくれていて‥‥っ」

兄の指先が僕の唇に触れて言葉を封じる。ライナー兄上は僕の唇に触れたまま、視線をシノとエドガーに向けた。そして、厳しい口調で問う。

「エドガー、失態だな。」
「申し訳ございません。」

「確かに娼館の関係者を連れてこいとは命じたが、自由にさせてどうする。まあ、いい。それで、ヤンの身請けの交渉はどうなっている?ドトールとは連絡が取れたか?」

兄上の問いかけに、エドガーはシノを床に押さえつけたまま応じる。

「ドトール殿の話では娼館の主は商人のギル=ハーネスにヤン様を身請けさせる心づもりのようです。」

エドガーの返答にライナー兄上は眉を跳ね上げる。僕はギルの名を耳にして唇を噛みしめた。

「なぜだ?商人相手に競り負けるなどあり得ない。金に糸目はつけぬとドトールに伝えたはずだが。」

唇に添えられた兄の指先に触れてそっと口から外すと、僕はライナー兄上に話し掛けた。

「ライナー兄上」
「どうした、ヤン?」

ライナー兄上がこちらに視線を向ける。その眼差しに優しさを感じて安堵しつつ言葉を発した。

「娼館の主は貴族に息子を殺されて以来、貴族全てを呪っています。恐らくは、ドトールの背後に貴族がいると勘づいて身請けを蹴るつもりだと思います。」



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