娼館で働く托卵の子の弟を義兄は鳥籠に囲いたい

月歌(ツキウタ)

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第一部 ヤン=ビーゲル

第17話 人質のシノ

◆◆◆◆◆


兄上は僕の話を聞き終わると、厳しい表情を浮かべて唸る。

「‥‥兄上」

「この色街では貴族の力が及ばない事は散々経験している。お前がビーゲル家を追放された後、色街では『元貴族のヤン』と名乗って商売する男娼が増えてな‥‥」

「え、そうなのですか?」

貴族から庶民になった男が至る場所は色街と、皆はそう思ったのかもしれない。実際、僕はここにいたわけだし‥‥。

「私は色街の顔役に本物のヤンを探すように命じたが拒否された。あのような扱いを受けたのは初めてだった。その後もビーゲル家の者を使って色街を調べたが‥‥結局お前を見つけ出せなかった。すまない、ヤン。」

ライナー兄上が唇を噛み締めたので、僕は兄がした様に兄の唇に指をあてがった。兄がハッとして僕を見つめたので、少し笑って応じる。

「兄上‥‥この色街では庶民も貴族も同等に扱うのが習わしです。そして、一番の有力者は娼館の主たち。兄上が色街を探して下さった時に、僕がここに居たかは分かりません。でも、娼館の主たちが僕の存在を隠したのなら‥‥きっと見つけることはできなかったと思います。」

「‥‥ヤン」

「色街に堕ちたのは僕が甘かったからです。兄上が気に病む事はありません。だって、こうして会いに来てくださったのですから。でも、僕は色街の住人だから、ここの仕来りに従います。娼館の主がギルに僕を身請けさせるなら‥‥仕方ありません。」

「馬鹿なことを言うな、ヤン!私はお前を二度と手放しはしない。お前をここから連れ去れば問題は全て解決する。」

「兄上、駄目です。娼館の主との契約を違えたら、相手は裁判所に訴えます。そうなったら、またビーゲル家に泥を塗ってしまう!僕はもう兄上に迷惑を掛けたくない!」

不意に兄上は上着を脱ぐと僕の肩に掛けてくれた。そして、そのまま僕を抱き上げる。

「あ、兄上!」

「このまま馬車に乗って邸に戻る。馬車にヤンの衣装を用意しているので、そこまで我慢してくれ」

「待ってください、兄上!」
「待たない。」
「兄上!」

兄の胸を叩いたが、ライナー兄上はそれを無視して治療院の出口に向かう。そして、護衛のエドガーの横を通り過ぎるときに彼に命令を下す。

「エドガー、娼館の息子を人質に取って交渉することにした。その男の右足の腱を斬って自由に歩けないように処置しろ」

「ライナー兄上、どうして!エドガー、やめて。シノを傷つけるな!」

僕は悲鳴に近い声を上げたが、今度は躊躇いなくエドガーは兄上の命を遂行する。

「ゔぁっあぁっーーーー!」

シノの悲鳴とともに、右足の腱が切られた。




◆◆◆◆◆
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