ただ殺したいと思ったんだ

月歌(ツキウタ)

文字の大きさ
1 / 1

ただ殺したいと思ったんだ

しおりを挟む
◆◆◆◆◆


人生が嫌になって自殺しようとしたけど…できなかった。

一人住まいのボロアパートで、扉のノブにロープを引っ掛けて首を突っ込む。後は睡眠薬を飲むだけ。

「死んでない…」

目覚めたら生きてた。
服には吐いたあとがあって、下半身も濡れている。

「ションベンかよ…ださ」

ダサいのは俺の人生だ。
社会に出て会社勤めしてイジメにあって、退職して引きこもって…母親を殺した。

母子家庭で必死に育てた息子が母親のパート代をせびってパチンコ。そりゃ、キレるよな。まあ、キレても仕方ない。

でもさ、俺の事を全否定はないだろ?駄目な息子だけどあんたの息子だろ?

「出ていけって…行き先ね~し」

本当に行くところがない。
どこにもないんだ。
俺の居場所はこのボロアパート以外にはない。

隣の部屋に母親の遺体があって臭いけど、ここしか俺の居場所はないから。

「くそっ!」

平凡な人生だった。
途中までは上手くいってたんだ。

学生時代はまあまあだった。友達は一人もできなかったけど…仕方ない。気を使って話して、疲れるだけだ。いつも疲れていた。

それでも、社会に出るまではまだマシだったんだ。会社に入ったら、仕事ができなかった。毎日、毎日、上司に叱られて、それでも仕事は上手く出来なかった。

書類が山積みになって、いくら整理しても片付かない。毎日のように残業したのに仕事は終わらなくて。俺の職場は同僚や上司の舌打ちだらけ。

気が狂いそうだった。
で、退職を促されて…辞めた。

母親はすぐに次の仕事は見つかるからと笑ってくれた。でも、その笑顔が続いたのはいつまでだったか。

笑顔が消える瞬間を俺は見た。

失望と諦めの眼差しで、「やっぱり」とそう言った気がした。舌打ちをした気もして…いつの間にかボロアパートが母親の舌打ちでいっぱいになった。

毎日、毎日。
舌打ち。
鬱陶しくて。辛くて。
母親がパートに出ているときにさえ、なんでか舌打ちが聞こえて。おかしいと思った。思ったけど、それでも舌打ちが聞こえるから…消したかった。

そう思ったら止まらなかった。

母親がパートから帰ったら、包丁で腹を刺してた。倒れた母親を何度も刺して動かなくした。

「母親はすぐに死んだのに…なんで俺は死ねないんだ?」

俺は男だから母親より丈夫なのかもしれない。包丁で腹を刺したら死ねる気もするけど、痛そうでできない。

一回手首をカッターナイフで切ったけど、痛すぎてすぐにやめて治療した。

「これからどーすんだよ、俺」

母親が稼がないからパート代が入らない。貯金もなかった。節約してたのに、なんで母親は金が貯められなかったんだ?

「殺さなけりゃよかった」

金蔓が無くなって、俺は死ぬことばかり考えてる。それに、殺したのに舌打ちの音が消えない。忌々しい。

「腹減った」

腹が減った。
腹減ったな。
生きてるからな…。
死ねたらいいのに。

誰かが俺を殺してくれたら、もう腹も減らないのにな。

「ああ、そうか」

気に入らないからって燃やした奴がいた。自分も燃えて生き残って裁判中だっけ?

馬鹿なやつ。
馬鹿なやつがここにも一人。

会社を燃やせば舌打ちは消えるかな?舌打ちを消すのはつまらない理由じゃない。

俺の存在を馬鹿にする舌打ち音は消して良い。

「いくか…」

着替えてから行こう。
流石にションベンチビッたズボンではいけねーわ。



End
◆◆◆◆◆



しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

刈り上げの教室

S.H.L
大衆娯楽
地方の中学校で国語を教える田辺陽菜は、生徒たちに校則を守らせる厳格な教師だった。しかし、家庭訪問先で思いがけず自分の髪を刈り上げられたことをきっかけに、彼女の人生は少しずつ変化していく。生徒たちの視線、冷やかし、そして自分自身の内面に生まれた奇妙な感覚――短くなった髪とともに、揺らぎ始める「教師」としての立場や、隠されていた新たな自分。 襟足の風を感じながら、彼女は次第に変わりゆく自分と向き合っていく。地方の閉鎖的な学校生活の中で起こる権威の逆転劇と、女性としての自己発見を描く異色の物語。 ――「切る」ことで変わるのは、髪だけではなかった。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

処理中です...