義兄に愛人契約を強要する悪役オメガですが、主人公が現れたら潔く身を引きます!

月歌(ツキウタ)

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父上の過去2

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◆◆◆◆◆

父上は少し目を細めて、言葉を発した。

「・・イツィアールが駆け落ちをしたことは、私にとり衝撃だった。しかも、相手は庭師だ。私は顔に泥を塗られたとさえ感じていた。私の親族もそう感じていたのだろう。亡くなった両親に代わり、親族が早々に私の婚姻相手を見つけ出した。それがルチアの母の、アルカディーだった。上位貴族出自で、上位オメガ女性のアルカディー。彼女は親族の希望に添う婚姻相手だった。そして、私は親族の意思に従い、アルカディーを正妻として迎える事に決めた」

「・・父上は母上を愛して、妻としたわけではないのですね。父上と母上はとても仲睦まじく見えたのに、残念です」

「それは違う、ルチア!」

「でも、父上にとっては、母上はイツィアール様の身代わりだったのでしょ?」

「ルチア。私はアルカディーを、深く愛した。私は不思議なほどに、彼女に心を惹かれた。『運命の番』に出逢えたと思うほどに、私は彼女に恋し焦がれて愛した。そして、ルチアが生まれた。ルチアは早産で生まれたが、無事に育ってくれた。アルカディーと共に私は神に感謝したよ。何度もね・・」

「・・母上が『運命の番』?」

「ルチアは『運命の番』の存在を信じていなかったね?私もアルカディーに出逢うまでは、全く信じていなかった。でも、彼女はやはり私の『運命の番』だ」

「母上が父上の『運命の番』だった。そう想うほどに、父上は母上を愛して下さったのですね。父上の領地引きこもり理由が『アルカディーの墓から離れられない』なのも納得です。母上への愛情を疑った僕が間違いでした。でも、たまには王都に来てほしいです。ルチアは父上に会えず寂しいです」

「ル、ルチア!私はお前の母だけを愛している訳ではないよ?私はルチアが大好きだ。だが、アルカディーも大好きで・・私の心は妻とルチアに奪われっぱなしだ」

「ふふ、分かりました」

僕は甘えたくなり、父上に少しもたれ掛かる。そして、話の続きを促した。

「父上との再婚後は別として、イツィアール様と父上が関係を持ったのは、ヒートを起こした時の一度きりだったと信じてよいのですね?」

「イツィアールと性的関係を持ったのは一度きりだ。因みに、再婚後も彼女とは性的関係は持っていない。互いにそれが目的で再婚したわけではないからね」

「・・そうですか」

「だが・・残念ながら、イツィアールの夫となった庭師とは、縁が切れなかった。彼女が選んだ男は質の悪い奴だった。庶民には珍しく上位アルファで、庭師は自身を没落貴族の末裔だと自称していた。奴は上位アルファである自分が、労働者階級であることに苛立ちを募らせていたようだ。イツィアールと駆け落ち後は、彼女を働かせて、自分は博打と酒の日々を過ごしていた。そして、彼女が妊娠して働けなくなると、庭師は彼女を連れて私の元を訪れるようになった。そして、私に金の無心をしてきた。アルフレートが生まれた後は、ますます金銭の要求が多くなった」

「駆け落ちした二人が父上に金の無心をするなんて、厚かましい!父上はなぜ金銭の要求に応じたのですか?」

「庭師がアルフレートを私の子だと匂わせて、養育費の名目で金銭を要求してきたからだ。アルフレートが私の息子かどうか・・真相は定かではない。だが、私がイツィアールと性的関係を持った時期に、彼女が妊娠した事は事実だ。私の息子である可能性を、完全には否定できなかった」

「っ!」

「もしも、庭師が下位アルファだったなら、アルフレートも当然下位アルファに生まれ、私は即座に息子でないと否定できたのだがね・・」

「・・っ」

僕は黙り込んでしまった。他人か腹違いの兄か、結局僕たちの関係は生涯わからず終いになりそうだ。

「請求される金銭は、私にとって大した額ではなかった。だが、金銭の要求を断れば、イツィアールが性商売をさせられる可能性があった。私が一度は妻にと望んだ女が、性商売をするなど・・私のプライドが許さなかった。そして、私は男に要求されるままに、金銭を渡した。それが日常化した頃には、腹立たしく感じる事もなくなっていた」

「父上・・」

僕は複雑な思いで、父上の話に耳を傾けていた。


◆◆◆◆◆◆

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