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ジャクソンの悩み
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◆◆◆◆◆
アンリの言葉に反応を示したのは、ラケールではなくジャクソンだった。しかも、凄い剣幕で捲し立てる。
「気付くのが遅いんだよ、アンリ!さんざん俺に迷惑を掛けておいて、『妄想でした』で片付けるな!」
「ああ、ジャクソン!僕の発言で傷付いたんだね!でも、誤解しないでね!お兄ちゃんは、ジャクソンの事は大好きだよ!だから、淋しがらないでね!でも、お兄ちゃんは困難な治療の末に『好き』と『愛してる』の違いに気が付いてしまったの。だから、ジャクソンが僕を求めても、その気持ちには答えられないよ。ごめんね、ジャクソン。でも、大丈夫だよ!これからは、お兄ちゃんが『好き』と『愛している』の違いについて、ジャクソンに手取り足取り教えてあげるからね!」
アンリはジャクソンに抱きつこうとした。だが、あっさりと避けられる。アンリが拗ねて頬を膨らませると、それを見たジャクソンがキレた。
よほど腹に据えかねていたのか、アンリへの文句が止まらない。
「手取り足取りってなんだ!気持ち悪い発言は今後一切無しだ!お前の『妄想』に振り回されて、俺はこれまで散々な目に遭ってきた。その事をアンリは自覚してくれ」
「気持ち悪い発言って、酷いよぉ~」
「俺の語彙力では、気持ち悪いとしか表現できない。俺にオメガの友達ができる度に、アンリはキモい発言を連発して大騒ぎしたよな?お陰で、俺はオメガと親密になる機会に恵まれず、情を交える事もなく・・この年齢に達してしまった。アルファ性にとって、それがどれ程恥ずかしい事なのかを、オメガのお前は全く理解していない!」
「ジャクソン!アルファ性の俺は、痛いほどお前の気持ちが理解できるぞ!」
「ラケールは黙っていてくれ!」
「すまない、ジャクソン!」
ラケールが叱られた。僕が興味深く見守っていると、ジャクソンが再び口火を切った。
「だが、今はアルファ性のプライドの問題だけではなくなっている。ジャック爺さんが『貴族のオメガを伴侶にしないなら男爵家を継がせない』って急に言い出した事は、流石のアンリも忘れてはいないよな?『下位アルファ』の上に、素人オメガと付き合った経験がほぼ皆無な俺にとっては、死活問題なんだよ!」
「確かに~。ジャックお爺さんってば、急に考えを変えたからビックリだよね。それまでは、庶民のオメガの嫁でも構わないって、ジャクソンに言ってたのにね?」
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アンリの言葉に反応を示したのは、ラケールではなくジャクソンだった。しかも、凄い剣幕で捲し立てる。
「気付くのが遅いんだよ、アンリ!さんざん俺に迷惑を掛けておいて、『妄想でした』で片付けるな!」
「ああ、ジャクソン!僕の発言で傷付いたんだね!でも、誤解しないでね!お兄ちゃんは、ジャクソンの事は大好きだよ!だから、淋しがらないでね!でも、お兄ちゃんは困難な治療の末に『好き』と『愛してる』の違いに気が付いてしまったの。だから、ジャクソンが僕を求めても、その気持ちには答えられないよ。ごめんね、ジャクソン。でも、大丈夫だよ!これからは、お兄ちゃんが『好き』と『愛している』の違いについて、ジャクソンに手取り足取り教えてあげるからね!」
アンリはジャクソンに抱きつこうとした。だが、あっさりと避けられる。アンリが拗ねて頬を膨らませると、それを見たジャクソンがキレた。
よほど腹に据えかねていたのか、アンリへの文句が止まらない。
「手取り足取りってなんだ!気持ち悪い発言は今後一切無しだ!お前の『妄想』に振り回されて、俺はこれまで散々な目に遭ってきた。その事をアンリは自覚してくれ」
「気持ち悪い発言って、酷いよぉ~」
「俺の語彙力では、気持ち悪いとしか表現できない。俺にオメガの友達ができる度に、アンリはキモい発言を連発して大騒ぎしたよな?お陰で、俺はオメガと親密になる機会に恵まれず、情を交える事もなく・・この年齢に達してしまった。アルファ性にとって、それがどれ程恥ずかしい事なのかを、オメガのお前は全く理解していない!」
「ジャクソン!アルファ性の俺は、痛いほどお前の気持ちが理解できるぞ!」
「ラケールは黙っていてくれ!」
「すまない、ジャクソン!」
ラケールが叱られた。僕が興味深く見守っていると、ジャクソンが再び口火を切った。
「だが、今はアルファ性のプライドの問題だけではなくなっている。ジャック爺さんが『貴族のオメガを伴侶にしないなら男爵家を継がせない』って急に言い出した事は、流石のアンリも忘れてはいないよな?『下位アルファ』の上に、素人オメガと付き合った経験がほぼ皆無な俺にとっては、死活問題なんだよ!」
「確かに~。ジャックお爺さんってば、急に考えを変えたからビックリだよね。それまでは、庶民のオメガの嫁でも構わないって、ジャクソンに言ってたのにね?」
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