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誰が洗濯物を畳んでるの?

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疲れた主婦の為に洗濯物を畳んでくれる人がいる。乾燥機から取り出して、畳まずにリビングに置きっぱなしの洗濯物。

本来ならすぐに畳んで片付けるべきだけど、人間にはダルい時がある。特に更年期になってから疲れがなかなか取れない。

怠惰ではあるけど、わざと怠惰であるわけではない。

それでも畳まずにリビングの端に積まれていく洗濯物の存在は頭から離れない。

「洗濯物を畳まないと‥‥」

そう思いつつそのまま寝床についた次の朝、何故か洗濯物が綺麗に畳まれていた。

最初は夫が家事を手伝ってくれているのだと思った。子がないまま更年期を迎えた私たちだが、夫とはそれなりにスキンシップを取っている。

でも、洗濯物を畳んだのは夫ではなかった。本人に確認したけど、きっぱりと否定された。

『もしかして、その質問ってもっと家事を手伝えって意味か?それだったら回りくどい聞き方するなよ。うざい』

夫に何度も聞いたために『うざい』の言葉を貰ってしまった。夫の夕飯はしばらく魚料理に決定。コレステロール高いので、これは優しい配慮である。

とにかく、誰が洗濯物を畳んでいるのかを突き止めないといけない。もしかしたら、泥棒がお金を奪ったついでに洗濯物を畳んでいる可能性もある。無理があるとは自分でも思うが、可能性は0ではないはずだ。

なので、隠しカメラを仕掛けてみた。その結果、すぐに犯人は判明した。

犯人は私だった。

寝床に入ったはずの私がフラフラとリビングに現れると、九九を数えながら洗濯物を畳んでいた。

洗濯物を深夜に畳んだ記憶は全く無い。それからもしばらく隠しカメラを設置してチェックしたが、私しか映っていなかった。

洗濯物がない時は九九を唱えながらそのまま寝床に戻り、洗濯物がある時は九九を唱えながら畳む。それの繰り返し。

私は見てはならないものを見た気がして動画を消去した。そして、隠しカメラを撤去する。

「‥‥‥まあ、私が畳んでるなら‥‥問題ないよね?問題ないわ。うん、私は大丈夫よ‥‥‥大丈夫よね?え、これって病院に行く必要ある?いや、ないよね。大体なんて説明するのよ。そうよ、せっかく私が洗濯物を畳んでくれているんだから、私は私に感謝したらいいのよ!」

私は自分の胸に手を充てがい『ありがとう』と呟いた。



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