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アランが育ての親になる
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◆◆◆◆◆
育ての親のアランは、ちょっと変わり者の魔人である。元々は、魔王城ではなく森の中で一人で暮らしていた。魔人は群れる事を嫌う種族だが、そんなアランにも親友がいた。
それが、俺の父親のスティーグ = ヴァレンティンだ。ある日、スティーグとアランの間で不穏な会話が交わされた。
「白の魔王に真名を知られて以来、俺は魔王に使役されている。真名を知られたのは俺の不覚ではあるが、寿命が尽きるまでこの状態が続く事は耐え難い」
「しかし、真名を知られた以上は命令に従う他にないだろ。諦めろ、スティーグ」
「相変わらず、アランは冷たいな。だが、同じ魔人なら、自由を奪われる辛さは理解してくれるだろ?」
「まあ、確かに」
「ならば、俺に協力してくれ」
「協力?」
「俺は魔王の支配から逃れる方法を探してきた。まあ、簡単には見つからないと半ば諦めていたのだが、奇跡が起こった」
「奇跡とは大袈裟な事を言う」
「奇跡さ。聖女が俺にもたらす奇跡」
「聖女がもたらす奇跡?」
「そうだ、アラン。俺は魔王に命じられて、人間界で聖女を探し続けてきた。そして、ようやく聖女を見つけだす事ができた。聖女の姿を目にして、俺は名案を思い付いた。白の魔王を出し抜き、奴の支配から脱却する方法だ」
「そんな方法があるのか?」
「それが、あったんだ。白の魔王が聖女を抱く前に、俺が聖女の処女を奪ってしまえばいい。聖女の処女を奪われて、白の魔王は怒り狂うだろうな?だが、その頃には魔人の俺は聖女の光に焼かれて死んでいる訳だから、全く問題なしだ」
「死ぬのか、スティーグ?」
「ああ、死ぬ」
「そうか。だが、ここまでの話では、俺がお前に協力する場面は無さそうだがな?」
「俺が死んだ後の話だ、アラン」
「スティーグが死んだ後の話?」
「聖女の世話を頼みたい」
「冗談だろ?」
「聖女が処女を失えば、特別な力は徐々に失われ普通の女になる。聖女が普通の女になれば、白の魔王も興味を失う筈だ。それまで、聖女を匿って欲しい」
「俺がそれに応じると思うのか?」
「アラン、俺は死ぬ」
「だからなんだ?」
「遺言だ」
「お前の遺言の為に、俺は白の魔王に恨まれろと?冗談ではないぞ、スティーグ」
「お前は俺と違い特別な魔人だ。白の魔王に恨まれはしても、お前を殺せはしない。もしも、アランを殺せば他の魔人が一斉に白の魔王に攻撃を仕掛ける。白の魔王は領地の統治者として、そんな選択はできない・・おそらく」
「おそらくだろ?」
「おそらく」
「はぁ・・分かったよ」
「面倒を見てくれるのか?」
「人の命は長くはないかはな。衣食住を与えるだけでよいなら、引き受ける」
「それでいい。ん、まてよ?万一、聖女が孕んだ場合はガキの世話を頼む」
「孕まないだろ?」
「たぶんな。だが、念のために遺言に追加しておく。よろしくな、アラン」
「承知した、スティーグ」
アランもスティーグも、聖女が子を孕むとは全く考えてはいなかった。だが、現実は小説より奇なり。聖女は子を孕み産んだ。子は瀕死状態だったが、聖女の残り僅かな聖なる光を与えられ命をとりとめた。そして、聖女は亡くなった。
困り果てたのは、アランだった。まさか、聖女とスティーグの間に子が出来るとは考えもしなかったのだから。だが、アランは魔人にも関わらず律儀な奴だった。
こうして、アランは俺の育ての親となったのだ。
◆◆◆◆◆
育ての親のアランは、ちょっと変わり者の魔人である。元々は、魔王城ではなく森の中で一人で暮らしていた。魔人は群れる事を嫌う種族だが、そんなアランにも親友がいた。
それが、俺の父親のスティーグ = ヴァレンティンだ。ある日、スティーグとアランの間で不穏な会話が交わされた。
「白の魔王に真名を知られて以来、俺は魔王に使役されている。真名を知られたのは俺の不覚ではあるが、寿命が尽きるまでこの状態が続く事は耐え難い」
「しかし、真名を知られた以上は命令に従う他にないだろ。諦めろ、スティーグ」
「相変わらず、アランは冷たいな。だが、同じ魔人なら、自由を奪われる辛さは理解してくれるだろ?」
「まあ、確かに」
「ならば、俺に協力してくれ」
「協力?」
「俺は魔王の支配から逃れる方法を探してきた。まあ、簡単には見つからないと半ば諦めていたのだが、奇跡が起こった」
「奇跡とは大袈裟な事を言う」
「奇跡さ。聖女が俺にもたらす奇跡」
「聖女がもたらす奇跡?」
「そうだ、アラン。俺は魔王に命じられて、人間界で聖女を探し続けてきた。そして、ようやく聖女を見つけだす事ができた。聖女の姿を目にして、俺は名案を思い付いた。白の魔王を出し抜き、奴の支配から脱却する方法だ」
「そんな方法があるのか?」
「それが、あったんだ。白の魔王が聖女を抱く前に、俺が聖女の処女を奪ってしまえばいい。聖女の処女を奪われて、白の魔王は怒り狂うだろうな?だが、その頃には魔人の俺は聖女の光に焼かれて死んでいる訳だから、全く問題なしだ」
「死ぬのか、スティーグ?」
「ああ、死ぬ」
「そうか。だが、ここまでの話では、俺がお前に協力する場面は無さそうだがな?」
「俺が死んだ後の話だ、アラン」
「スティーグが死んだ後の話?」
「聖女の世話を頼みたい」
「冗談だろ?」
「聖女が処女を失えば、特別な力は徐々に失われ普通の女になる。聖女が普通の女になれば、白の魔王も興味を失う筈だ。それまで、聖女を匿って欲しい」
「俺がそれに応じると思うのか?」
「アラン、俺は死ぬ」
「だからなんだ?」
「遺言だ」
「お前の遺言の為に、俺は白の魔王に恨まれろと?冗談ではないぞ、スティーグ」
「お前は俺と違い特別な魔人だ。白の魔王に恨まれはしても、お前を殺せはしない。もしも、アランを殺せば他の魔人が一斉に白の魔王に攻撃を仕掛ける。白の魔王は領地の統治者として、そんな選択はできない・・おそらく」
「おそらくだろ?」
「おそらく」
「はぁ・・分かったよ」
「面倒を見てくれるのか?」
「人の命は長くはないかはな。衣食住を与えるだけでよいなら、引き受ける」
「それでいい。ん、まてよ?万一、聖女が孕んだ場合はガキの世話を頼む」
「孕まないだろ?」
「たぶんな。だが、念のために遺言に追加しておく。よろしくな、アラン」
「承知した、スティーグ」
アランもスティーグも、聖女が子を孕むとは全く考えてはいなかった。だが、現実は小説より奇なり。聖女は子を孕み産んだ。子は瀕死状態だったが、聖女の残り僅かな聖なる光を与えられ命をとりとめた。そして、聖女は亡くなった。
困り果てたのは、アランだった。まさか、聖女とスティーグの間に子が出来るとは考えもしなかったのだから。だが、アランは魔人にも関わらず律儀な奴だった。
こうして、アランは俺の育ての親となったのだ。
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