刑務所出たら異世界で奴隷商人に雇われました。

月歌(ツキウタ)

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◆◆◆◆◆◆


足元をふらつかせながら、俺は無事に森を出た。抱いた子供は、俺を敵と定めたらしく地味にパンチを繰り出してくる。

「ん?」

森を出ると、血を流した人間が二人転がっていた。流れ出た血が、地面をどす黒く染めていた。死んでるみたいだけど・・何これ?

「ああ、気にするな。ガキの世話係だったが、商品のガキに手を出したから始末した。お陰で人手不足だ。タグチにとっては、幸運だったな?こいつらが死んで、お前を雇い入れる余裕ができた訳だからな」

「はあ・・そうですね、ボス」

人手不足を自分の手で作り出し、その上子供に逃げ出されるとは。この奴隷商人は、馬鹿かもしれない。でもまあ、商品に手を出すのはよくない事だ。

「ボス!」

馬鹿かも知れないボスの部下が、こちらに駆け寄ってきた。一時、視線が絡んだ。だが、男はすぐに視線をボスに向けた。

「おう、ガキは全員捕まえたぞ。すぐに、荷馬車に乗せる。今度はがっちり、外から鍵を締めろ、ジャック」

「ボス、あの・・後ろにいる男は誰ですか?説明をお願いします」

「タグチだ。森で出会った。子供の世話係として、雇うことにした。」

「え、マジですか!二人死んだから、俺の賃金を上げるとボスは、言ってたじゃないですか?そんなひょろひょろの男には、何もできませんよ!」

ひょろひょろの自覚は無いが、ボスとその仲間のムキムキ具合を見ると・・確かに、ひょろひょろの部類にはいるか。しかし、仲間はこいつだけなのか?

「まあ、子供の世話ぐらいはできるだろ。おい、タグチ。お前の仕事は子供の世話だ。ガキどもと一緒に荷馬車に乗れ。監視を怠るな」

「えー、子供たちと一緒に、荷馬車に詰め込むつもり?しかも、一人で?怖いんですけど。ボス、一緒に乗ってもらえます?」

ボスが眉を跳ね上げた。

「お前はガキか。役立たずはいらない、タグチ。とっとと、どっかに行け!」

「わかりました。では、この場で子供を捕まえた貢献度を、金銭として渡して下さい」

「なに?」

「良く見ると、山間から港町が見えます。あそこが、快楽と悦楽のソドムですね!街道があり街が見えるなら、自分で歩いて行きます。速攻で女を抱きたいので、ソドムで使えるお金で支払いお願いします」

俺の言葉にボスの仲間が首を傾げたが、俺は無視をした。ボスは俺をじろじろと見たあとに、顎で荷馬車に行くよう示した。

「ん、一緒に荷馬車に乗ってくれるの?」
「タグチが、ガキに手を出さないとも限らないからな。それに・・今は金がない」

「え!?」

俺は思わず大きな声を出してしまった。だって、相手は悪どい奴隷商人だ。何故、金がない?

「ガキを買って、すっからかんだ!しかも、世話係がガキを犯したせいで、価値が下がった。とにかく、ソドムでガキを売ってから金を渡す。それでいいな?」

どうやらボスは、綱渡り的に奴隷商人を行っているようだ。零細企業の経営は厳しそうだ。

「ボス、そろそろ出発しないと不味いっす。ガキどもをオークションに出せなくなります!」

「そうだな。タグチ、こいつはジャック = ダンビエールだ。ジャック、こいつはタグチマコトだ。親しくない奴には、タグチと呼んで欲しいらしいぞ」

「なんだそれ?まあ、仲間になったなら、俺の事はジャックと呼んでくれ、タグチ」

「分かった。俺の事はマコトって呼んでいいよ。これから宜しくな、ジャック」
「ああ、よろしく」

「何故だ!?」

ボスが何故か目を剥いて、俺を見つめていた。

「どうしました、ボス?」

「お前は俺にタグチと呼べと言った。何故、ジャックにはマコトと呼ぶことを許す!」

「え、何となくですが。それより、ボスが抱いた子供達が、ぐったりしています。死にませんか、それ?」

「まずい、力を入れすぎた!タグチ、荷馬車に乗るぞ。お前が背負っている荷物は、ジャックに預けろ。荷馬車内に水が用意してあるから、お前がガキに飲ませろ!ジャックは、馬を全力で走らせろ!」

「了解です、ボス!」

ジャックは子供を抱いた俺の背中から、リュックを剥ぎ取った。色々ありすぎて、自分がリュックを背負っていることすら忘れていた。

「ジャック!それは俺の全財産だから、大切に扱ってくれよ!」

「了解~!」
「返事が軽すぎる。不安しか感じない~」

「おい、タグチ。早く荷馬車に乗れ!」
「うー、分かってるけど、子供を抱いた状態では、荷馬車には乗れません」

「まじで、役に立たないな!」

ボスが荷馬車に、逃げ出した子供たちを押し込む。そして、子供を抱いた俺ごと抱き上げて、荷馬車に乗り込んだ。

「ひやぁん!」
「気持ち悪い声を出すな!」

荷馬車が軋んだ音を出したが大丈夫なのか?

「ジャック!鍵を締めたら、馬を全力で走らせろ!ソドムのオークションに間に合わせろ」

「飛ばしますよ。酔わないで下さいね」


◇◇◇◇


ジャックが操る荷馬車は、とんでもなく早かった。そして、とんでもなく、乗り心地は最悪だった。子供達の大半は、酔って嘔吐していた。

荷馬車は地獄の様相を見せ、俺も貰いゲロしてしまった。荷馬車で、平然としていたのは、ボスだけだった。ちなみに、ボスは子供や俺の介抱などせず、激しい荷馬車の動きの中で居眠りをしていた。強者か!

ソドムに行けば女が抱ける。それだけを、心の支えにして俺は吐き気に耐えた。

「女とセックスしてぇー!」



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