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◆◆◆◆◆◆
オークションハウスの主の好意で、荷馬車は馬車置き場に置かせて貰う事になった。ゲロまみれの荷台も、明日までには洗浄しておいてくれるらしい。
オークションハウスの主は、ボスの実家であるリハーマン家に媚を売りたいのだろう。
異世界の生活に慣れるまでは、ボスのルノー = リハーマンの部下として働いた方が良さそうだ。彼の部下なら、食いっぱぐれは無さそうだ。なんといっても、彼の実家は金持ちだ。それに、両者の関係は良好そうだ。
ルノーが没落したら、実家に帰るに違いない。俺は必ずボスにくっついて、実家に潜り込む!
「タグチ、宿屋はすぐそこだ。歩けるな?」
「ボス、歩けません」
「タグチ、歩けるな?」
「いえ、疲れて歩きたくありません」
「歩け!!」
ボスに拳骨を食らった。
「ふぎゃ、痛いっーー!!」
刑務所を出所する少し前から、中髪刈りを許され、髪の長さは五センチ程になっていた。五センチに伸びた髪の毛で、俺は刑務官の目を盗み密かにお洒落を楽しんでいた。
しかし、ボスの拳骨のダメージにより、俺の毛根は沢山死んだに違いない・・悲しい。
「悲しい・・毛根が死んだぁ」
「うごっ、お前、泣くことはないだろ!」
俺達のやり取りを黙って見ていたジャックが、俺に救いの手を差しのべてくれた。
「ボス・・マコトのカバンは俺が持ちます。ボスはマコトを持ってください。早く宿屋に行って休みたいっす・・疲れた」
「ジャック、大好き!」
「マコト・・この街で軽々しく『大好き』を連発すると、尻を掘られるぞ?」
「ジャック、大嫌い!」
「そうかよ・・」
ジャックは深いため息を付きつつも、俺のリュックを宿屋まで運んでくれるようだ。
「くっ、確かに宿屋で早く疲れを癒したい。タグチと言い合いをしても仕方ない。背負ってやるから、早く背中にしがみつけ」
「ありがとうございます、ボス!」
俺はしゃがみ込んだボスの背中に、しっかりとしがみついた。ボスの背中は温かく、中々の乗り心地だった。
「ボスの背中は、最高の乗り心地です!」
「黙れ」
「二人とも行きますよ」
◇◇◇◇
ボスとジャックが目指す宿屋は、本当にオークションハウスの近くにあった。ボロい宿屋の経営者は、年増のおネエだった。
「あらぁ~、ルノー様、お久しぶりぃ。ここに来たということは、お金が無いのかしら?お部屋は、一部屋でいい?」
「ああ、三人だけだから十分だ」
おネエは、ふと俺に目を止めて首を傾けた。そして、ボスに向かい疑問を口にする。
「新入りを雇ったの?以前いた二人はクビにしたの、ルノー様?」
「クビにする前に殺した」
「殺したの?」
「商品に手を出したからな。で、二人を殺している最中にガキに逃げられた。上玉のガキを一人取り零して参っていたら、タグチが現れガキを捕まえてくれた」
「それで雇うことにしたの?ところで、彼はどうしてルノー様におんぶされているの?」
「タグチが役立たずだからだ。だが、こいつに恩義があるのは確かだ。部下が二人減って、人手不足も痛感している。役立たずも、いずれは役に立つと期待して雇った」
ボスの説明を最後まで聞いたおネエは、深いため息をついた。
「ルノー様、役立たずを甘やかすと役立たずのままよ。でも、まあいいわ。ダグチちゃん、歓迎するわ。あたしは、ファビオ = ベルタンよ。よろしくね?」
「ファビオさん。質問があるのですが、構いませんか?」
「あらやだ、王都出身なの?綺麗な発音」
「俺は王都出身ではありません。それより、ファビオさんは人工女体化はされていますか?」
「はい?」
俺の質問に答えたのは、ジャックだった。
「マコト・・男の体を、人工的に女の体に似せる事は大罪とされている。いい加減、女はあきらめて尻に突っ込め。その為の尻だ。ソドムの街には、魅力的な尻が大量にある。明日、金を貰ったら、突っ込んでこいよ」
「うーん、監禁中に男に何度か突っ込まれたけど、突っ込んだ経験はないんだよね。自信ないなぁ・・男の尻って狭いよね?」
「あー、タグチ」
「なに、ボス?」
「背負われた体勢で、勃起するな。あたる」
「あー、勃起してました?ファビオさんが、人工女体化されている姿を想像して、いやらしい気分になっていました。ごめんなさい」
俺の言葉を聞き、突然笑い出したのはファビオさんだった。
「タグチちゃんが、バカそうで安心したわ。ルノー様に取り入って、金を巻き上げるつもりかと思っちゃった。ルノー様の別れた恋人に少し似ているから・・余計に心配しちゃった」
「ファビオ!」
「ルノー様、ごめんなさい。あたしったら、話しすぎね。それにしても、三人ともすごく臭いわよ。宿には泊めてあげるけど、部屋に入る前に、裏庭の井戸で全身を洗って来て頂戴」
「分かった」
「了解っす!」
「いや、待って。井戸水で体を洗うの?え、冷たくない?それとも、温かいお湯が出る井戸なのかな?ソドムは温泉地なの?とにかく、井戸は嫌だよ。凶悪なバクテリアや重金属を含んでたらどうするの!」
「井戸は、川の水より温かい。明日、金が入れば、公衆浴場に連れていってやる。今日は我慢しろ。いくぞ、ジャック」
「マコト、まじで井戸の水は温かいよ」
「絶対に嘘だー!風邪をひきたくない。俺は意外と病弱なんだよ。せめてヤカンで水を沸かして。お願い」
「黙れ、タグチ」
俺はボスに背負われたまま、裏庭に連行されていった。
◆◆◆◆◆◆
オークションハウスの主の好意で、荷馬車は馬車置き場に置かせて貰う事になった。ゲロまみれの荷台も、明日までには洗浄しておいてくれるらしい。
オークションハウスの主は、ボスの実家であるリハーマン家に媚を売りたいのだろう。
異世界の生活に慣れるまでは、ボスのルノー = リハーマンの部下として働いた方が良さそうだ。彼の部下なら、食いっぱぐれは無さそうだ。なんといっても、彼の実家は金持ちだ。それに、両者の関係は良好そうだ。
ルノーが没落したら、実家に帰るに違いない。俺は必ずボスにくっついて、実家に潜り込む!
「タグチ、宿屋はすぐそこだ。歩けるな?」
「ボス、歩けません」
「タグチ、歩けるな?」
「いえ、疲れて歩きたくありません」
「歩け!!」
ボスに拳骨を食らった。
「ふぎゃ、痛いっーー!!」
刑務所を出所する少し前から、中髪刈りを許され、髪の長さは五センチ程になっていた。五センチに伸びた髪の毛で、俺は刑務官の目を盗み密かにお洒落を楽しんでいた。
しかし、ボスの拳骨のダメージにより、俺の毛根は沢山死んだに違いない・・悲しい。
「悲しい・・毛根が死んだぁ」
「うごっ、お前、泣くことはないだろ!」
俺達のやり取りを黙って見ていたジャックが、俺に救いの手を差しのべてくれた。
「ボス・・マコトのカバンは俺が持ちます。ボスはマコトを持ってください。早く宿屋に行って休みたいっす・・疲れた」
「ジャック、大好き!」
「マコト・・この街で軽々しく『大好き』を連発すると、尻を掘られるぞ?」
「ジャック、大嫌い!」
「そうかよ・・」
ジャックは深いため息を付きつつも、俺のリュックを宿屋まで運んでくれるようだ。
「くっ、確かに宿屋で早く疲れを癒したい。タグチと言い合いをしても仕方ない。背負ってやるから、早く背中にしがみつけ」
「ありがとうございます、ボス!」
俺はしゃがみ込んだボスの背中に、しっかりとしがみついた。ボスの背中は温かく、中々の乗り心地だった。
「ボスの背中は、最高の乗り心地です!」
「黙れ」
「二人とも行きますよ」
◇◇◇◇
ボスとジャックが目指す宿屋は、本当にオークションハウスの近くにあった。ボロい宿屋の経営者は、年増のおネエだった。
「あらぁ~、ルノー様、お久しぶりぃ。ここに来たということは、お金が無いのかしら?お部屋は、一部屋でいい?」
「ああ、三人だけだから十分だ」
おネエは、ふと俺に目を止めて首を傾けた。そして、ボスに向かい疑問を口にする。
「新入りを雇ったの?以前いた二人はクビにしたの、ルノー様?」
「クビにする前に殺した」
「殺したの?」
「商品に手を出したからな。で、二人を殺している最中にガキに逃げられた。上玉のガキを一人取り零して参っていたら、タグチが現れガキを捕まえてくれた」
「それで雇うことにしたの?ところで、彼はどうしてルノー様におんぶされているの?」
「タグチが役立たずだからだ。だが、こいつに恩義があるのは確かだ。部下が二人減って、人手不足も痛感している。役立たずも、いずれは役に立つと期待して雇った」
ボスの説明を最後まで聞いたおネエは、深いため息をついた。
「ルノー様、役立たずを甘やかすと役立たずのままよ。でも、まあいいわ。ダグチちゃん、歓迎するわ。あたしは、ファビオ = ベルタンよ。よろしくね?」
「ファビオさん。質問があるのですが、構いませんか?」
「あらやだ、王都出身なの?綺麗な発音」
「俺は王都出身ではありません。それより、ファビオさんは人工女体化はされていますか?」
「はい?」
俺の質問に答えたのは、ジャックだった。
「マコト・・男の体を、人工的に女の体に似せる事は大罪とされている。いい加減、女はあきらめて尻に突っ込め。その為の尻だ。ソドムの街には、魅力的な尻が大量にある。明日、金を貰ったら、突っ込んでこいよ」
「うーん、監禁中に男に何度か突っ込まれたけど、突っ込んだ経験はないんだよね。自信ないなぁ・・男の尻って狭いよね?」
「あー、タグチ」
「なに、ボス?」
「背負われた体勢で、勃起するな。あたる」
「あー、勃起してました?ファビオさんが、人工女体化されている姿を想像して、いやらしい気分になっていました。ごめんなさい」
俺の言葉を聞き、突然笑い出したのはファビオさんだった。
「タグチちゃんが、バカそうで安心したわ。ルノー様に取り入って、金を巻き上げるつもりかと思っちゃった。ルノー様の別れた恋人に少し似ているから・・余計に心配しちゃった」
「ファビオ!」
「ルノー様、ごめんなさい。あたしったら、話しすぎね。それにしても、三人ともすごく臭いわよ。宿には泊めてあげるけど、部屋に入る前に、裏庭の井戸で全身を洗って来て頂戴」
「分かった」
「了解っす!」
「いや、待って。井戸水で体を洗うの?え、冷たくない?それとも、温かいお湯が出る井戸なのかな?ソドムは温泉地なの?とにかく、井戸は嫌だよ。凶悪なバクテリアや重金属を含んでたらどうするの!」
「井戸は、川の水より温かい。明日、金が入れば、公衆浴場に連れていってやる。今日は我慢しろ。いくぞ、ジャック」
「マコト、まじで井戸の水は温かいよ」
「絶対に嘘だー!風邪をひきたくない。俺は意外と病弱なんだよ。せめてヤカンで水を沸かして。お願い」
「黙れ、タグチ」
俺はボスに背負われたまま、裏庭に連行されていった。
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