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11 パオラの処遇
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◆◆◆◆◆
上位貴族の孕み子は、たとえ医者であろうとも男性に肌を見せる事を憚られる。だが、孕み子は医者にはなれない。
その為、男性機能を失った医者が孕み子の医療を担っていた。しかし、慢性的な医者不足が社会問題と化していた。
その状況を改善したのが、下位貴族のデュレ家だった。デュレ家は優秀な子供たちを養子として迎え入れると、彼らに去勢手術を行った。その後に英才教育を施し、孕み子を診察できる医者を次々に輩出した。やがて、上位貴族の医療はデュレ家が大半を担う様になった。
◇◇◇
「カルロッタ、心配するな。ランディ先生は、デュレ家でも力を持つ人物だ。彼がカルロッタの入院に反対なら、デュレ家もその方針に従うはずだ」
「・・クロード」
私はクロードの言葉を受けて、ベッドから上半身を起こした。クロードはベッドの側に椅子を持ってくると、そこに座り私の体調を気遣ってくれた。
「大丈夫か、カルロッタ?」
「うん、クロード。でも、本当に大丈夫かな?父上がデュレ家以外の医療施設に、私を強制入院させる可能性はない?」
「王族や上位貴族の医療は、今やデュレ家がほぼ独占している。庶民を診る医者も、何かしらの形でデュレ家と繋がりがある。父上がどれほど大金を積んでも、お前を強制入院させる医者などいないさ。少しは安心できたか、カルロッタ?」
「うん、ちょっと安心した。ランディ先生が私の味方になってくれて良かった」
「まあ、全面的には信用できないがな。それより、カルロッタはパオラの件で俺に相談があるんだろ?」
「そうだった!パオラの処遇について、頼みたい事があるんだよ、クロード!」
「パオラの処遇について?」
私の言葉にクロードが苦い表情を浮かべた。でも、私は構わず言葉を発していた。
「パオラの処刑を私は望みません!」
「えっ?」
「確かに、男爵の子息が侯爵の子息を殺そうとしたのだから、パオラが処刑されるのは当然だと思う。だけど、彼にも同情すべき点はあるわけで。彼に気を持たせた私の婚約者にも罪はあると思うんだ」
私が長々と説明するごとに、クロードの表情が曇っていく。そして、ゆっくりと右手を上げて、クロードは私の言葉を遮った。
「パオラは処刑されない」
「えっ?」
「パオラは捕まった当初から、正当防衛を主張している。カルロッタに突き落とされそうになり、咄嗟に避けたらお前が勝手に睡蓮の沼に落ちたと・・」
「なにそれ・・嘘ばっかり!」
私は激しい怒りから叫び声を上げていた。
「私が沼に沈むのを見て、パオラは嗤っていた!私がいなくなったら、庶民と駆け落ちしたと噂を流すと言ってた!アデルバートだって、パオラが私を助けもせずに嗤っていた姿を見ているんだよ!そんな言い訳が通じるわけがない!」
「お前の婚約者のアデルバートが、パオラの罪の減刑を求めて奔走している。アデルバートは侯爵家の伝を使い、教会の上層部に圧力を掛けた。審問で無罪ならそく釈放だ。無罪にならなくても、暫く貴族用牢獄で過ごし・・世間の関心が他に移った頃に、おそらくパオラは釈放される」
「どうしてなの、クロード?」
「カルロッタ」
「私は処刑されたのに!牢獄だって、貴族用のものではなかった。誰も救ってはくれなかった。家族も婚約者も・・クロードだって。なのに、パオラは救われる。私の婚約者がパオラを救うために動いているなんて、あり得ないよ!」
「カルロッタ!」
「そんなの許せない!」
椅子から立ち上がったクロードが、私を抱きしめてくれた。体が温もりに包まれる。クロードが私の髪を撫でながら、ゆっくりと語りかける。
「落ち着いて聞いて欲しい」
「クロード」
「事件後、アデルバートが婚約解消を申し出てきた。俺は婚約解消に応じた。彼はカルロッタに相応しくないと、次期当主として判断した。奴の事はもう忘れろ」
「アデルバートが・・」
涙が溢れだしていた。殺されそうになった挙げ句、婚約解消された。そんなのって、ひどいよ。
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上位貴族の孕み子は、たとえ医者であろうとも男性に肌を見せる事を憚られる。だが、孕み子は医者にはなれない。
その為、男性機能を失った医者が孕み子の医療を担っていた。しかし、慢性的な医者不足が社会問題と化していた。
その状況を改善したのが、下位貴族のデュレ家だった。デュレ家は優秀な子供たちを養子として迎え入れると、彼らに去勢手術を行った。その後に英才教育を施し、孕み子を診察できる医者を次々に輩出した。やがて、上位貴族の医療はデュレ家が大半を担う様になった。
◇◇◇
「カルロッタ、心配するな。ランディ先生は、デュレ家でも力を持つ人物だ。彼がカルロッタの入院に反対なら、デュレ家もその方針に従うはずだ」
「・・クロード」
私はクロードの言葉を受けて、ベッドから上半身を起こした。クロードはベッドの側に椅子を持ってくると、そこに座り私の体調を気遣ってくれた。
「大丈夫か、カルロッタ?」
「うん、クロード。でも、本当に大丈夫かな?父上がデュレ家以外の医療施設に、私を強制入院させる可能性はない?」
「王族や上位貴族の医療は、今やデュレ家がほぼ独占している。庶民を診る医者も、何かしらの形でデュレ家と繋がりがある。父上がどれほど大金を積んでも、お前を強制入院させる医者などいないさ。少しは安心できたか、カルロッタ?」
「うん、ちょっと安心した。ランディ先生が私の味方になってくれて良かった」
「まあ、全面的には信用できないがな。それより、カルロッタはパオラの件で俺に相談があるんだろ?」
「そうだった!パオラの処遇について、頼みたい事があるんだよ、クロード!」
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私の言葉にクロードが苦い表情を浮かべた。でも、私は構わず言葉を発していた。
「パオラの処刑を私は望みません!」
「えっ?」
「確かに、男爵の子息が侯爵の子息を殺そうとしたのだから、パオラが処刑されるのは当然だと思う。だけど、彼にも同情すべき点はあるわけで。彼に気を持たせた私の婚約者にも罪はあると思うんだ」
私が長々と説明するごとに、クロードの表情が曇っていく。そして、ゆっくりと右手を上げて、クロードは私の言葉を遮った。
「パオラは処刑されない」
「えっ?」
「パオラは捕まった当初から、正当防衛を主張している。カルロッタに突き落とされそうになり、咄嗟に避けたらお前が勝手に睡蓮の沼に落ちたと・・」
「なにそれ・・嘘ばっかり!」
私は激しい怒りから叫び声を上げていた。
「私が沼に沈むのを見て、パオラは嗤っていた!私がいなくなったら、庶民と駆け落ちしたと噂を流すと言ってた!アデルバートだって、パオラが私を助けもせずに嗤っていた姿を見ているんだよ!そんな言い訳が通じるわけがない!」
「お前の婚約者のアデルバートが、パオラの罪の減刑を求めて奔走している。アデルバートは侯爵家の伝を使い、教会の上層部に圧力を掛けた。審問で無罪ならそく釈放だ。無罪にならなくても、暫く貴族用牢獄で過ごし・・世間の関心が他に移った頃に、おそらくパオラは釈放される」
「どうしてなの、クロード?」
「カルロッタ」
「私は処刑されたのに!牢獄だって、貴族用のものではなかった。誰も救ってはくれなかった。家族も婚約者も・・クロードだって。なのに、パオラは救われる。私の婚約者がパオラを救うために動いているなんて、あり得ないよ!」
「カルロッタ!」
「そんなの許せない!」
椅子から立ち上がったクロードが、私を抱きしめてくれた。体が温もりに包まれる。クロードが私の髪を撫でながら、ゆっくりと語りかける。
「落ち着いて聞いて欲しい」
「クロード」
「事件後、アデルバートが婚約解消を申し出てきた。俺は婚約解消に応じた。彼はカルロッタに相応しくないと、次期当主として判断した。奴の事はもう忘れろ」
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