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番外編

For my Valentine.《大切な人へ。》

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他サイトに、バレンタインデー記念にUPした番外編です。
少し日にちがズレましたが、こちらにも投稿します。

明日、もう1編バレンタインデー記念の話をUPする予定です。

■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□

「なぁルーカス、知ってる?」

顔を上げて呼ぶと、ルーカスのふっくりした尻尾が嬉しげに揺れた。
何だかんだあったけど、何とか番になった俺とルーカスは街の中心部から少し離れた所に新居を構えた。
別に良いけど、何で中心部じゃないんだろうなぁとは思ったよ?

そうしたら、獣人って番を見付けたら蜜月に突入するんだって。そう只管ひたすらベッドの中。
街中の、壁の薄い棟割の建物だと、えっと……あの……うん、全てが周囲にダダ漏れってコトで……。

今までみたいに、お互いの部屋の行き来なら、月に数回くらいご近所さんに迷惑かけるくらいで済む。
だけど蜜月ともなると………。

ルーカスは『獣人だからな』って平気そうだったけど、俺は無理。羞恥心で死ねる。
そんな俺の性格を熟知しているルーカスは、だから街から離れた所に一軒家を借りたそうだ。

理由を聞いた時に、恥ずかしくて顔から火が出るかと思ったよ。
そんなこんなで、現在まだ蜜月中だ。
って言うか、コレいつ迄続くんだろうなぁ?

ルーカスに聞くけど、何か微妙にはぐらかされている気がする。
ともあれ。
ルーカスは毎日俺を求めてくるから、俺も受け入れるように努めている。まぁ体力の差は如何ともし難いけどさ。
でも、俺の方からルーカスに何の行動も起さず、受け身のままでいいのかなぁ?って思ってるんだ。

人族は番なんて分からない。それをルーカスは不安に思わないかが心配だった。
できるだけ気持ちを言葉にしようと思っても、蜜月の欲求に付き合おうと頑張っても、明らかに獣人と人族の感覚の差ってあると思うんだ。

だから………。

「ずっと遠くの、海の向こうにある大陸の話なんだけどさ」

「うん?」

ベッドのヘッドボードに凭れて俺をバックハグしていたルーカスは、擽るように首筋にかかる髪を指で遊んでいた。
話しかけると、後ろから顔を擦り合わせるように近付けて近距離で視線を合わせてきた。
銀に輝く瞳がうっとりと俺を捉える。その瞳には甘さと喜びが浮かんでいるけど、ほんの少しだけ捕食者が持つ、獲物を狙う様な獰猛な光が宿っている事を俺は知ってる。

でも怖くない。――――だってルーカスだから。

「年に一度のお祭があるらしいよ」

「へぇ、どんな祭?」

「う~ん……」

どう説明しようかと悩む。いや、ちゃんと決めていたけど、いざとなると恥ずかしいと言うか、躊躇してしまう。
俺たちは、出会ってから番となった今に至るまで、言葉も行動も全然足りなくて、凄くすれ違って凄く遠回りをした。それを思うと、少しの恥ずかしさなんて我慢できるはず。
少しだけ考えてチラリとルーカスを見ると、気付いたルーカスは目を細めて更に瞳の甘さを濃くした。そして自分の鼻を頬にスリスリと擦り寄せて、触れるだけのキスを落とす。

俺はナイトテーブルの引き出しを開けてプレゼント用にラッピングされた包を取り出した。

「はい。」

「?」

手渡すとルーカスは不思議そうに瞬く。

「開けて?」

促すと背後から腕を回して、俺の胸元で包を開け始めた。顎を俺の右肩に乗せていて幸せな重さを感じる。
ガサガサと包装紙を外して、中の箱を取り出した。
ゆっくりと蓋を開けて……。

「――――これ………。」

「ドッグタグだよ。黒曜石とシルバールチルクォーツを埋め込んで貰ったんだ」

ドッグタグには、海の向こうの遠い国の言葉で愛の誓いが刻んである。

「お祭りはね、大事な人とか愛しい人に自分の気持ちを伝える日なんだって。で、お互いの色を飾った指輪だったりタグだったりを渡して想いを明かす」

チャリっと小さな音を立ててドッグタグを箱から取り出す。少し身体を捻り、ルーカスの首にかけてやった。

「相手の気持ちを受け入れる事ができないなら、プレゼントも受け取らない。ねぇルーカス、これずっと持っていて?これが俺の気持ちだから」

ルーカスの胸元で鈍い光を放つドッグタグにそっと顔を近付けて、愛しい気持ちを込めてキスを贈った。ゆっくりと顔を上げて、ルーカスを見上げる。

じっと銀の瞳が俺を……俺だけを見つめていた。
暫くルーカスを見ていたけど、あまりにも長く言葉を発さないから少し不安になった。

えっと、ちょっと愛情表現が重かったかな……?

片手を上げてルーカスの頬に触れようとした、その瞬間。
グイッと顎を掴まれ、覆いかぶさる様な勢いで口付けてきた。息継ぎする間もなく、寧ろ吐き出す息すらも惜しんで取り込むかのように、口腔を蹂躪してくる。
俺は苦しくなって、ルーカスの胸を押しやろうとしたけど、その腕を掴み容赦なく犯してきた。

酸素が足りなくて、頭がぼーっとしてくる。口角から溢れた唾液が喉を伝い、胸元まで垂れ流れてきていた。

「……っは!!」

「……ぁ………」

漸く離れたと思ったら、そのまま唾液の跡を辿り、時々キツく吸い上げながら下へ下へと唇を下ろしてくる。
胸元にルーカスの顔が辿り着いた時、グッと肩を押されベッドに倒された。
ぺろり。乳首に舌を這わせ、チラリと上目使いで俺を見る。
ゾクリとしたナニかが一気に背筋を駆け上がった。
さっき迄僅かに見え隠れするだけだった肉食獣の瞳が、妖しく輝く。

そのまま無遠慮に俺の肌を蹂躪していき、そして兆していた俺のモノを躊躇なく口に含んだ。

「……っあぁ!ちょっ……ルー……ルーカス!」

必死に手を伸ばし頭を押しやろうとしたけど、あっさりルーカスの手に阻まれる。
くちくちと聞くに堪えないイヤらしい音が響く。いつもは睦言を囁きながら俺を愛撫するのに、今は喰い殺さんばかりの迫力で無言のまま。
余計に音が響き、俺は堪らなく感じてしまった。

「や…!ぁあ……。ルーカス…!ルーカスぅ!!やぁ、気持ち……いいから…っ。っあぁ………」

溢れ出す先走りの液をぢゅるぢゅると吸い上げ、大きく口を開けて舌を出し見せつけるように竿部分を舐め上げる。その下の柔らかな袋にちゅぅっと吸い付いた後、愛おしそうにもう一度俺のモノを口に含み容赦なく責め始めた。

「ダメ、ダメ、ダメ!!やぁだぁ……っ!ルー…っルーカスっ!ダメ、おれ……ぁあっおかしくなるか……らっ…!」

ぢゅっ!と一際強く刺激が与えられて、俺は声も出せずにルーカスの口腔に精を放ってしまった。

「っはぁ、はぁ…はっ……」

強すぎる刺激に息が整わなくて、クッタリと全身の力が抜ける。目にも力が入らなくてトロンとした瞳で、膝立ちになって俺を見下ろすルーカスを見つめた。

右の親指で僅かに口元に付いていた俺の精を拭う。そのままその指の汚れを舐め取るルーカスの、壮絶な色気に俺は目を離せなくなる。

コクリと喉が鳴った。

ふわり、とらしくない笑顔を浮かべると、俺の腕を優しく引っ張り身を起こさせる。両手で頬を包み込むと無言のまま自身の昂りに誘いざなった。

お腹の奥が擽ったくなって、どろりとした欲が湧き上がる。熱に浮かされたようになって瞳が潤んだ。
そっと手を添えてソレをゆっくりと口に含んでいった。

「――――っ!!」

ルーカスは息を詰めて俺を見つめる。下から見上げながら唇を、舌を使って更にルーカスを高めていく。

「ぁ…、くっっ!!」

ルーカスは苦しげに、切なげに顔を歪めた。それなのに、その手は優しく俺の髪を梳き、愛おしそうに耳や首筋を撫で上げてくる。

「っ…ヤバいな。ノア、本当に最高だ……」

掠れた声が降ってくる。

「このままイクのもいいけど……。少し激しくして……イイ?」

艶を含ませ甘えるように言う。コクンと頷くとルーカスは嬉しそうに笑った。

「力、抜いてて?」

片手を俺の後頭部に添えると、勢いを付けて喉の奥を狙って律動を激しくした。自分の快楽を追い求めて傍若無人に攻め立てる。
正直イラマチオは苦しいし得意じゃない。でもこの日、この時初めてイイ…と思った。

ルーカスの、荒々しい程の性への欲求を身に受け、俺自身も苦しほどに感じ昂っていく。
コレが『俺を番として欲してくる』男なんだって、何でだろう……今すごく強く感じる。

その瞬間、男の支配欲に対しての狂気にも似た仄暗い悦びと、ゾクゾクと強い快感が身体を駆け巡り、呆気ないほど簡単に達してしまった。

「――――っ!」

同時にルーカスもふるりと震え、喉の奥に欲を解放して熱い飛沫を迸らせたのだった。

ずるり、と俺の口腔から引き抜かれる。

生理的な涙が浮ぶ俺の眦に、ルーカスは荒い息のまま唇を寄せた。舌を伸ばし涙を舐め取る。
そして後頭部に置かれたままだった手に力を込めて、自分の肩に押し付けてきた。

「――ヤバい。今日、この時ほどノアを俺のモノだって感じた日はない……」

細く息を吐き出すかの様な囁き。ギュウギュウに頭を抱き込まれながらも、僅かに視線を動かしてルーカスを盗み見てみた。
ルーカスは………、キツく眉根を寄せて苦しそうに目を閉じていた。

そっか……。

その時俺は理解した。この顔を、この男は見られたくないんだ。

手に入れたモノを再び失ってしまうことを恐れている、この表情かおを………。

身体を繋げただけじゃ、安心できない。
手に入れたら、今度は失う恐怖に苛まれ。
明確に番となっても、永遠に側に居るかどうか疑懼ぎくして、心の安寧は得られない。
それが、コイツを苦しめて、狂わせるんだな………。

それなら―――――。

「なぁルーカス」

「…………」

声をかけるけど、無言。

「俺も色々考えたんだけどさ。――――喰って良いよ、俺の事」

びくん!と大きく肩が揺れる。ルーカスは俺の両肩に手を置くと凄い勢いで身体を離してきた。

「………な、に?」

「勿論今すぐじゃないよ?でも、どうしてもルーカスが不安で狂いそうだったり、喰う以外に気持ちの落ち着きようがなくなった時は………良い。俺を喰って?」

「ノア……」

「俺には番とか分からない。でもルーカスが大事だし……。だから年に一度のこの日に誓う」

「………」

「愛しているんだ、ルーカス。お前だけを。だから……。愛しているからこそ、喰って良い」

腕を伸ばして、ドッグタグを持ち上げる。チャリっとチェーンを揺らしタグに唇を寄せた。

「これがお前に伝えたい俺の気持ち。このタグと一緒に受け取ってくれる?」

愛おしさを込めて微笑む。
ルーカスは静かに涙を流していた。

「―――俺はお前を喰わない。喰って良いって言ってくれるなら、俺はその言葉を糧に生きていける」

「うん」

「お前がいなくなったら、俺は生きていけない。お前を喰う時は、俺も死ぬ時だ」

「その時が来ても来なくても、俺はお前の側にいる。
毎年、そのタグに誓うよ」

そっと額を合わせる。
伝えなきゃいけない言葉と、声に出さずとも伝わる言葉。
今日、俺の想いの全てはルーカスに伝わったと確信する。


――――俺を番にしてくれて、ありがとう。


~~♡.。.:*♡~~~*.。.:*♡~*‥°:~♡:*~~

For my Valentine.

You have always been the only one for me.

Happy Valentine’s Day!


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