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伝説の装備編
第二十七話「日本人の名前って実は興味深い」
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俺達は洞穴の前にいる。
洞穴の中は暗く、闇が口を開けているような怖さがある。
入り口に立っているだけでも、どこかひんやりとした空気が漂う。
「こ、ここか? 結構雰囲気がある洞穴だな……?」
「そうかなー? たまに入って出てこない人もいるけど、数週間後にけろっと何事もなく現れたりするから大丈夫だわさ」
それって神隠し的なやつでは!?
名前取られて1文字にされちゃうんじゃないの……?
『お前の名前は今日から正(ただし)だよ!』って。
いや、名前普通過ぎる……!!
「それでは私は"メ"ですね」
「あちしは"ク"だわさ」
「わふわふ!」
「『ぼくは"カ"だわん!』と申しております」
「日本じゃないと成り立たないストーリー……!!」
ありがとう、日本!
「怖いけど、夕飯までにさっさと終わらせるぞ」
「誰と誰がペアで行きますか?」
「肝試しじゃねーよ!?」
肝試し出来そうなシチュエーションではあるけどね。
そういえば、肝試しって参加者よりも、驚かす側の方が怖いと思うんだよね。
だって参加者は何が起きても人間の仕業だと思えるけれど、驚かす側は何か起きたら霊の仕業なのだから……!!
「マサヨシ様、何してるんですか? 早く行きますよ」
「ちょ、置いてかないで!」
3人匹に急いで追いつき、洞穴に入る。
こんな怖そうなところに、1人で置いていかれる方が怖い。
洞穴の中は薄暗く、クヴァスの体の発光を頼りに道を行く。
人がすれ違える程度の広さの一本道なので、迷うということはなさそうだ。
「暗いなー、怖いなー」
俺はビビりながら1番うしろに付いていく。
「勇者なんですから、先頭を歩きませんか?」
なんと恐ろしい提案をしてくるんだメイは。
「いや、ここは名前順で、カイ、クヴァス、メイ、勇者マサヨシの順で行こう」
名前順なら公平だ。
決して俺が先頭を歩きたくない訳では無い。
「マサヨシ様、勇者は名前に入りません。それでしたら、カイ様、クヴァス様、マサヨシ様、私の順が妥当でしょう」
そういうことね。
なーんだ、メイも怖いのか。
しょうがない。カイとクヴァスが前にいるし、俺が3番目になってやるか。
RPGの勇者パーティのように1列に隊列を組み、狭い洞穴を進む。
ようやく冒険っぽくなってきた。
「なぁ、あとどれくらいで着くんだ?」
「あとちょっとだと思うわさ」
こいついつも"あとちょっと"だな。
「この洞穴も何か起こるんじゃないか?」
「ホントに何も起こらないわさ」
ホントかなぁ?
「なぁ、メイはどう思う?」
…………
あれ? メイから返事がない。
もしかして、神隠しにあったのか……?
やっぱり何か起こるじゃねーか……!
「なぁクヴァ――」
「わっ!」
「きゃあぁぁ!」
何々ぃ!?
何が起きたのー!?
怖すぎて悲鳴が出ちゃったじゃない。
「あ……申し訳ありません。私です」
「なんだメイか、ビビらせんじゃないよ……てか、俺が想像以上にビビったからって、驚かした方がドン引くんじゃないよ! 最後まで責任持って『ドッキリ大成功』ってやってくれよ!」
「「「……」」」
「何でもいいから誰か何か言ってー!」
「あ、着いたわさ」
「何でもいいとは言ったけどね!? てか、本当に何事もなく普通に着いちゃった!?」
おい、これ冒険活劇だぞ。
何もイベントが起こらなくていいのか?
そこには樽詰めの妖精酒がたくさん置かれていた。
樽と言っても妖精サイズなのか、難なく持っていけそうだ。
「くっくっくっ、あちしがこの妖精酒を守る番人」
「いや、そういうのいらないんで」
「なんでなのさ! あちしもカッコいい役やってみたいわさ!」
そういうお年頃ってあるよな。
「じゃあ、夕飯の時に鍋奉行やらせてやるよ」
「奉行!? なんだかカッコよさげなのだわさ!」
チョロいな。
「さ、運ぶぞー」
こうして俺達は、悲鳴を上げるという醜態を晒した以外は何事もなく、妖精酒を手に入れる事が出来た。
こんな時もあるよな。
―◇◇◇―
「あらあら、お疲れ様でした。これでしばらくは妖精酒を取りに行かなくて済むわぁ」
俺達は、妖精の泉に戻ってきていた。
妖精の泉の店の前にテーブルや料理がセッティングされていた。
俺達の大きさを考えて、店の中では狭いと外に用意してくれたのだろう。
天然だがやっぱりマスター、気が利くな。
「今日は年に1度の妖精座流星群が見られる日だから、お外にセッティングしてみましたぁ」
……たまたまだったらしい。
いや、俺達に気を使わせないために、この話も気を利かせてしてくれたのだろう。
やっぱりマスター、気が利くな。
その後、俺達は妖精座流星群を見ながら、妖精の里の料理を楽しんだ。
メニューは、前菜に『パルパルのピルピル漬け』、メインに『プルプルのペルペル包みポルポル添え』、デザートに『ブラウニーのブラウニー』という豪華なものだった。
味はどうだったかというと、真に驚くべき味であったがそれを書くには余白が狭すぎる。
ただ、クヴァスごめん。鍋料理じゃなかったから、奉行にはしてあげられなかった。
みんなとの話も盛り上がり、こうして妖精の里での楽しい夜は更けていったのだった。
洞穴の中は暗く、闇が口を開けているような怖さがある。
入り口に立っているだけでも、どこかひんやりとした空気が漂う。
「こ、ここか? 結構雰囲気がある洞穴だな……?」
「そうかなー? たまに入って出てこない人もいるけど、数週間後にけろっと何事もなく現れたりするから大丈夫だわさ」
それって神隠し的なやつでは!?
名前取られて1文字にされちゃうんじゃないの……?
『お前の名前は今日から正(ただし)だよ!』って。
いや、名前普通過ぎる……!!
「それでは私は"メ"ですね」
「あちしは"ク"だわさ」
「わふわふ!」
「『ぼくは"カ"だわん!』と申しております」
「日本じゃないと成り立たないストーリー……!!」
ありがとう、日本!
「怖いけど、夕飯までにさっさと終わらせるぞ」
「誰と誰がペアで行きますか?」
「肝試しじゃねーよ!?」
肝試し出来そうなシチュエーションではあるけどね。
そういえば、肝試しって参加者よりも、驚かす側の方が怖いと思うんだよね。
だって参加者は何が起きても人間の仕業だと思えるけれど、驚かす側は何か起きたら霊の仕業なのだから……!!
「マサヨシ様、何してるんですか? 早く行きますよ」
「ちょ、置いてかないで!」
3人匹に急いで追いつき、洞穴に入る。
こんな怖そうなところに、1人で置いていかれる方が怖い。
洞穴の中は薄暗く、クヴァスの体の発光を頼りに道を行く。
人がすれ違える程度の広さの一本道なので、迷うということはなさそうだ。
「暗いなー、怖いなー」
俺はビビりながら1番うしろに付いていく。
「勇者なんですから、先頭を歩きませんか?」
なんと恐ろしい提案をしてくるんだメイは。
「いや、ここは名前順で、カイ、クヴァス、メイ、勇者マサヨシの順で行こう」
名前順なら公平だ。
決して俺が先頭を歩きたくない訳では無い。
「マサヨシ様、勇者は名前に入りません。それでしたら、カイ様、クヴァス様、マサヨシ様、私の順が妥当でしょう」
そういうことね。
なーんだ、メイも怖いのか。
しょうがない。カイとクヴァスが前にいるし、俺が3番目になってやるか。
RPGの勇者パーティのように1列に隊列を組み、狭い洞穴を進む。
ようやく冒険っぽくなってきた。
「なぁ、あとどれくらいで着くんだ?」
「あとちょっとだと思うわさ」
こいついつも"あとちょっと"だな。
「この洞穴も何か起こるんじゃないか?」
「ホントに何も起こらないわさ」
ホントかなぁ?
「なぁ、メイはどう思う?」
…………
あれ? メイから返事がない。
もしかして、神隠しにあったのか……?
やっぱり何か起こるじゃねーか……!
「なぁクヴァ――」
「わっ!」
「きゃあぁぁ!」
何々ぃ!?
何が起きたのー!?
怖すぎて悲鳴が出ちゃったじゃない。
「あ……申し訳ありません。私です」
「なんだメイか、ビビらせんじゃないよ……てか、俺が想像以上にビビったからって、驚かした方がドン引くんじゃないよ! 最後まで責任持って『ドッキリ大成功』ってやってくれよ!」
「「「……」」」
「何でもいいから誰か何か言ってー!」
「あ、着いたわさ」
「何でもいいとは言ったけどね!? てか、本当に何事もなく普通に着いちゃった!?」
おい、これ冒険活劇だぞ。
何もイベントが起こらなくていいのか?
そこには樽詰めの妖精酒がたくさん置かれていた。
樽と言っても妖精サイズなのか、難なく持っていけそうだ。
「くっくっくっ、あちしがこの妖精酒を守る番人」
「いや、そういうのいらないんで」
「なんでなのさ! あちしもカッコいい役やってみたいわさ!」
そういうお年頃ってあるよな。
「じゃあ、夕飯の時に鍋奉行やらせてやるよ」
「奉行!? なんだかカッコよさげなのだわさ!」
チョロいな。
「さ、運ぶぞー」
こうして俺達は、悲鳴を上げるという醜態を晒した以外は何事もなく、妖精酒を手に入れる事が出来た。
こんな時もあるよな。
―◇◇◇―
「あらあら、お疲れ様でした。これでしばらくは妖精酒を取りに行かなくて済むわぁ」
俺達は、妖精の泉に戻ってきていた。
妖精の泉の店の前にテーブルや料理がセッティングされていた。
俺達の大きさを考えて、店の中では狭いと外に用意してくれたのだろう。
天然だがやっぱりマスター、気が利くな。
「今日は年に1度の妖精座流星群が見られる日だから、お外にセッティングしてみましたぁ」
……たまたまだったらしい。
いや、俺達に気を使わせないために、この話も気を利かせてしてくれたのだろう。
やっぱりマスター、気が利くな。
その後、俺達は妖精座流星群を見ながら、妖精の里の料理を楽しんだ。
メニューは、前菜に『パルパルのピルピル漬け』、メインに『プルプルのペルペル包みポルポル添え』、デザートに『ブラウニーのブラウニー』という豪華なものだった。
味はどうだったかというと、真に驚くべき味であったがそれを書くには余白が狭すぎる。
ただ、クヴァスごめん。鍋料理じゃなかったから、奉行にはしてあげられなかった。
みんなとの話も盛り上がり、こうして妖精の里での楽しい夜は更けていったのだった。
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