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最強の秘術編
第三十一話「お父さんは張り切りたい」
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そして現在、俺達は京都に到着していた。
いや、京都ではないんだけれども。
やはり愛知に比べると、厳かでみやびで歴史ある街のようだ。
魔導列車からでも、神社仏閣がいくつも見えた。
「この町に橋本名人がいるんだよな」
「はい、元々は花札やトランプを作っていた工場を造り変えて、道場にしたようです」
それってサンテンドーでは!?
たしか橋本名人ってハドトク所属だったよね!?
異世界で夢の共演!?
「どっちに行けばいいのかな?」
「橋本名人の道場はこの辺りで1番有名なので、他の人についていけばたどり着けると言われています」
「他力本願寺!? (京都だけにね)」
確かに観光地だとみんな同じ方向に進んでいくから、とりあえずついていってみる? みたいなことやるけども!
「あの家族連れが良さそうです。あの人達についていきましょう」
「あ、本当についていくんだ」
俺達は、家族連れの数メートル後ろに続いてついていく。
その家族は両親と娘、息子の4人家族で、楽しそうに歩いている。
『お父さん、橋本名人から一本取っちゃうぞー!』とか『橋本名人はめちゃくちゃ強いんだから、絶対ムリだよー!』とか、はしゃいだ声が聞こえてくる。
「そういえばメイの家族ってどんな人達なんだ?」
前を歩く家族を見ていて、ふと気になったことを聞いてみる。
「私に家族はいません。生まれた時から1人だったので……」
「ご、ごめん。言いづらいこと聞いちゃったな」
そうか、メイは孤児だったんだな。
そこから王城に仕えるメイドにまでなるなんて、相当努力したのだろう。
あれ? もしかして孤児出身だから、魔王討伐の任務のために捨て駒にされてたり……?
……それは考え過ぎか。
あの王はそんなあくどい事を考えられるような頭は無さそうだったよな。
「今は特に気にしていませんから。お気遣いありがとうございます」
「そうか。メイは――」
俺がメイに声を掛けようとした時、前の家族から声があがる。
「あれっ!? い、いやー、この家はりっぱだなぁ! 一見の価値があるぞ!」
「お父さん、道間違えたでしょー!」
「い、いやいや、お父さんはこの家を見に来たかったんだ」
この道は行き止まりだったようだ。
「メイ! 作戦失敗じゃねーか!?」
俺の声に気付いたのか、例の家族は恥ずかしそうに道を引き返していく。
俺も恥ずかしくなり、頬が熱くなってくる。
これが共感性羞恥というやつか……!
いや、普通に俺もマヌケで恥ずかしい状況か……
恨めしそうにメイを睨みつける俺。
「……私もこの家が目当てで、見てみたかったので」
「あんたら、うちに何か用かい?」
庭からお婆さんが顔を出していた。
俺とメイは一度目を合わせると、お婆さんに向き直る。
「「……」」
気まずい……
ここは会釈をしてそそくさと退散するに限るな……!
善は急げとばかりに作戦を実行する。
「いえー……」
会釈をしてその場を去ろうとすると、後ろからお婆さんの声が。
「2本手前の道を左だよ。まったく、道を間違える観光客が多くて困っちゃうよ。あー、忙し忙し」
俺は再度会釈と愛想笑いでその場を誤魔化すと、今度こそ退却に成功するのだった。
その後、道の途中でまだ迷っていた家族に、『2本手前の道を左ですよ』と、さも"自分初めから知ってました"とばかりに教えてあげたのはここだけの話だ。
いや、京都ではないんだけれども。
やはり愛知に比べると、厳かでみやびで歴史ある街のようだ。
魔導列車からでも、神社仏閣がいくつも見えた。
「この町に橋本名人がいるんだよな」
「はい、元々は花札やトランプを作っていた工場を造り変えて、道場にしたようです」
それってサンテンドーでは!?
たしか橋本名人ってハドトク所属だったよね!?
異世界で夢の共演!?
「どっちに行けばいいのかな?」
「橋本名人の道場はこの辺りで1番有名なので、他の人についていけばたどり着けると言われています」
「他力本願寺!? (京都だけにね)」
確かに観光地だとみんな同じ方向に進んでいくから、とりあえずついていってみる? みたいなことやるけども!
「あの家族連れが良さそうです。あの人達についていきましょう」
「あ、本当についていくんだ」
俺達は、家族連れの数メートル後ろに続いてついていく。
その家族は両親と娘、息子の4人家族で、楽しそうに歩いている。
『お父さん、橋本名人から一本取っちゃうぞー!』とか『橋本名人はめちゃくちゃ強いんだから、絶対ムリだよー!』とか、はしゃいだ声が聞こえてくる。
「そういえばメイの家族ってどんな人達なんだ?」
前を歩く家族を見ていて、ふと気になったことを聞いてみる。
「私に家族はいません。生まれた時から1人だったので……」
「ご、ごめん。言いづらいこと聞いちゃったな」
そうか、メイは孤児だったんだな。
そこから王城に仕えるメイドにまでなるなんて、相当努力したのだろう。
あれ? もしかして孤児出身だから、魔王討伐の任務のために捨て駒にされてたり……?
……それは考え過ぎか。
あの王はそんなあくどい事を考えられるような頭は無さそうだったよな。
「今は特に気にしていませんから。お気遣いありがとうございます」
「そうか。メイは――」
俺がメイに声を掛けようとした時、前の家族から声があがる。
「あれっ!? い、いやー、この家はりっぱだなぁ! 一見の価値があるぞ!」
「お父さん、道間違えたでしょー!」
「い、いやいや、お父さんはこの家を見に来たかったんだ」
この道は行き止まりだったようだ。
「メイ! 作戦失敗じゃねーか!?」
俺の声に気付いたのか、例の家族は恥ずかしそうに道を引き返していく。
俺も恥ずかしくなり、頬が熱くなってくる。
これが共感性羞恥というやつか……!
いや、普通に俺もマヌケで恥ずかしい状況か……
恨めしそうにメイを睨みつける俺。
「……私もこの家が目当てで、見てみたかったので」
「あんたら、うちに何か用かい?」
庭からお婆さんが顔を出していた。
俺とメイは一度目を合わせると、お婆さんに向き直る。
「「……」」
気まずい……
ここは会釈をしてそそくさと退散するに限るな……!
善は急げとばかりに作戦を実行する。
「いえー……」
会釈をしてその場を去ろうとすると、後ろからお婆さんの声が。
「2本手前の道を左だよ。まったく、道を間違える観光客が多くて困っちゃうよ。あー、忙し忙し」
俺は再度会釈と愛想笑いでその場を誤魔化すと、今度こそ退却に成功するのだった。
その後、道の途中でまだ迷っていた家族に、『2本手前の道を左ですよ』と、さも"自分初めから知ってました"とばかりに教えてあげたのはここだけの話だ。
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