【完結】RPGっぽい異世界に丸腰で!?~嫁のアニメが始まるまでに魔王を倒して帰ります~

後藤権左ェ門

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最強の秘術編

第三十六話「代打逆転サヨナラ満塁ホームラン」

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「あれは野球場か?」

 ダンス兄弟と別れてしばらく進むと、大きな施設が見えた。

「あちらはドリルモーラーズ球場ですね」

 ドリルのモグラか。
 そんなデジタル上のモンスターもいたよな。
 俺もメイも野球好きだし、野球場は覗いてみよう。

「ちょっとここも見てい――」
「はい、そうしましょう」

 めっちゃ食い気味!
 メイも乗り気みたいなので、俺達は野球場へと向かった。

 キンッ
 パシッ
 シュッ

 おー、やってるやってる。

「あ、マサヨシくん、ちょうどいいところに来たでやんす!」
「は、汎田くん!?」

 この喋り方にメガネに無精髭、間違いないでやんす!

「試合中にケガ人が続出して、メンバーが足りないでやんす! 助っ人に入って欲しいでやんす!」

 9回裏2アウト満塁、5対2の3点ビハインドか。
 ホームランが出れば逆転サヨナラ満塁ホームランで、本日のヒーローになれる場面だ。
 少年野球で8番を打っていた実力と、マンガで蓄えた知識をもってすれば、この場面も切り抜けられるに違いない。

「俺でよければ、任せてくれ」
「恩に着るでやんす! しんぱーん! 代打マサヨシでやんす!」

 メイがヘルメットと肘当てを借りて、俺のところへ持ってきてくれる。

「マサヨシ様、骨は拾って骨壺に入れ、妖精の里のご神木のそばに埋葬する樹木葬に致しますので、安心して打席に立ってください」
「この打席、そんなに重いの!?」

 仮に死球でも死なないよね!?
 まさか異世界ボール1号みたいな危険な魔球はないよね!?

「わふ!」

 そうだよな、カイ。
 まさかそんな危険なことはないよな。

「カイ様は『代打オレってやつやりたいわん!』と申しております」
「全然俺の心配してねぇ!?」

 アホな会話をして緊張を解すと、ヘルメットと肘当てを装着する。
 そしてバットを持ち、ゆっくりとバッターボックスへ向かう。
 この感じ、懐かしいな。
 緊張感と高揚感が混ざり合い、夢と現の間にいるような。

 右のバッターボックスに立つと、相手のピッチャーを観察する。
 長身の右投げで筋力もありそうなので、かなりの速球を投げるに違いない。
 だが得てしてこのタイプのピッチャーは、コントロールに難があることが多い。

「よし! こーい!」

 俺は大きく声を出すと、ゆらゆらと大げさにバットを揺らしながら構える。
 こうして『俺は打つぞ!』という気持ちを見せておけば、ストライクからボールに逃げる変化球で空振りを取りに来るはずだ。

 相手ピッチャーがサインに頷くと、ワインドアップポジションに入る。
 2アウト満塁で盗塁もスクイズも無いとみて、俺との勝負に集中する作戦のようだ。
 睨み合う俺とピッチャー。

 おおきく振りかぶって……投げた!

 シュッ
 ズバンッ!!

「ストーライッ!!」
 
 速っやぁ……
 全然、変化球じゃなかったんですけど……
 てか、これ160キロくらい出てない?

 次はどう撹乱するべきか。
 ……端から実力で勝負をすることを考えていないのが、悲しいところだ。

 ここは、なるべくホームベースに近付いて立ってみるかな。
 こうすることで内角に投げづらくなり、ある程度コースを絞ることができる。

 再びワインドアップポジションで睨み合うピッチャーと俺。
 おおきく振りかぶって……投げた!

 シュッ
 ズバンッ!!

「ストーライッ!!」

 めちゃくちゃ内角にズバッと来るやんけ!
 マンガの知識なんて所詮机上の空論で、実際に体験してみないと意味がない。
 そういうことだな。

 追い込まれてしまったし、最後は自然体で正々堂々と勝負することにしますか。
 バットを振らなければ何も起こらない。

 三度、俺とピッチャーは睨み合う。

 おおきく振りかぶって……投げた!

 シュッ
 グワンッ!

 抜けたスイーパーが俺の方に向かって飛んでくる。
 この状況、黒崎がテレビで言ってたやつだ……!

「危ない!」

 俺は咄嗟に左肘を突き出しながら、体を回転させボールを避ける。
 がしかし、避けきれず左肘にボールが当たってしまった!
 あくまで俺は避けようとして、たまたま当たってしまっただけである。

「ヒットバイピッチ!」

 ふぅ、これで1点返して、後続に繋ぐことができたな。
 繋ぐ野球ってやつだ。
 俺は少し痛む肘を押さえながら、1塁へと向かった。
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