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33.ラツカヒ町に到着

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「ちょ……ちょっと……待って……ベルくん……」

「なんだよ、もうへばったのかよ。これだから、お前みたいなショボいおっさんは嫌だったんだ」

 現在、ニミノヤ村から走り続けること約30分。

 ニミノヤ村からオーソイ町までは歩いて約1時間半、ラツカヒ町まではそこから更に約1時間かかる。
 つまり、ニミノヤ村からラツカヒ町までは歩いて2時間半かかるということだ。
 
 その道をノンストップで駆け抜けるなんて、俺には無理だ。駅伝の選手じゃあるまいし。
 こっちの世界に来てから結構体力がついたと思うが、せめて2回は休憩が欲しい……

「しょーがねーなー。10分だけだからな!!」

「はぁはぁ……ありがとうベルくん。ベルくんは全然疲れてなさそうだね」

「このくらい、猫人族なら3歳でも走れるぜ!!」

 それは盛り過ぎー!!
 いくらなんでも3歳はまだトテトテ走りでしょ。
 
 まぁ、でも猫人族なら本当にこのくらいの距離は楽勝なのだろう。
 地球人ですらフルマラソンを2時間で走りきれるんだからな。

「そういえば、ラツカヒ町に行くのは初めてなんだけど、どんなところなのかな?」

「お前、この辺に住んでてその歳までラツカヒ町に来たことないのか? 相当な田舎者だな!!」

 確かにニミノヤ村は田舎だけど、お前の姉ちゃんも住んでるところだぞ……
 それに地球はこの世界よりもっと栄えてたよ。人口や建造物だけを見ればな。

「しょーがねーなー、都会人の俺が教えてやるよ!! ラツカヒ町は人がたくさんいて、店もたくさんあって、動物の見世物小屋とか……あとは……と、とにかく色んなものがあるんだ!!」

 孤児院に住んでるから、実はベルくんもそんなにラツカヒ町のこと知らないな?

 地球の平塚は市だったから大きい町だろうと予想はしていたが、ニミノヤ村やオーソイ町に比べて、娯楽施設なんかもかなり充実してそうな雰囲気があるな。

「特産品は何があるのかな?」

「と、とくさんひんって何だよ?」

 ……確かに。特産品の定義って何だ?
 名物とは違うのか……?

 ……まぁ、細かいところは気にしなくていいだろう。

「うーん……よく収穫できる野菜とかたくさん作ってるものとか、有名なものかな?」

「……よく食べるのはさつまいもだよ!!」

 それって孤児院にお金がないから、芋しか食べられないだけじゃあ……?
 うぅ、今まで生意気な子供だと思っててごめんね。
 町に着いたら何か奢ってあげるね……



 そんなこんなしながら、途中もう一度休憩を挟み、徒歩2時間半の道のりを2時間で駆け抜けた。
 ……走っても意外と早くならないもんだな。


 ―◇◇◇―


「ほら!! ラツカヒ町はすぐそこだぞ!!」

 ……おぉー、すごい。ニミノヤ村やオーソイ町とは規模が違う。
 というか、町を囲む柵からして全然違う。
 ニミノヤ村は木の柵で、壊そうと思えば壊せるし、忍び込もうと思えば忍び込める程度のものだ。

 しかし、ラツカヒ町は違う。
 木ではなく何か硬そうなものでできていそうだし、日本のどこかの城のようにその壁から攻撃をしたりできそうな、要塞(?)と言っても過言ではない威圧感がある。
 盗賊や魔物、他の町との戦闘が多かったりするのだろうか。
 あとでこの町の冒険者ギルドに寄って、依頼を確認してみるのも面白そうかもな。

「……はぁ……はぁ……す、すごい大きい町……だね……」

「ふふん、だろ? 俺はあの町に住んでるんだぜ!!」

 ようやく門の近くまでやって来られたが、行列がすごい。
 数10mは並んでいる。

「へへっ、すげーだろ!! 毎日、旅人とか商人とかがたくさん来るんだぜ!!」

「ちなみに、これは入るまでにどのくらいかかるんだい?」

 この列だと結構かかりそうだぞ。

「うーん、朝と夕方はもっとすごくて1時間以上かかることもあるみたいだけど、今の時間帯だと30分くらいじゃねーかなー?」

 30分もかかるのか……
 走り疲れて早く町に入りたいのに、行列に並ばなきゃいけないのはツラい……

「ははっ! まぁ、あれは商人なんかの列で、住民カードとか冒険者ギルドカードとか持ってるやつは隣の入口からすぐに入れるけどな!!」

 そうなんかい!!
 絶対、俺のことからかってるだろ!


 ―◇◇◇―


 あっさり町に入ることができた。
 ギルドカードを門番に見せたら、まったくもってスムーズに。

「な? すぐに入れただろ?」

 すぐに入れたのは嬉しいけど、何か釈然としない……

 ま、それは置いといて、すごい賑わいだ。
 人の数が桁違いだ。
 建物も大きいものや、コロシアムのようなものも見える。

「うわぁー、すごいなぁー」

「だろ? 俺がしっかり案内してやるから、そんなにビビるなよな」

「それじゃあ、さっそく孤児院に案内よろしく」

 まずは事情を聞いて、解決できそうか判断する。
 行動あるのみだ。

「えっと……あ、案内してやるから、もう少し町を見てから孤児院に行こうぜ!!」

 ベルくん、急に態度が変わったな。慌てているというか……
 そういえば、マーレさんとかいう人に黙って出てきたって言ってたな。
 孤児院長はそんなに怖い人なのだろうか……?

「ダメ、ダメ。俺はライチさんから依頼を受けてるんだから、まずは孤児院に行かないと。依頼が終わったら、存分に案内してくれよ」

「い、いや……ちょ……まだ俺は自由を満喫したいいいぃぃぃぃぃ!!!!」

 俺は嫌がるベルくんを引っ張って歩きだす。

 ……

 …………

 ………………

「で……どっち?」

「知らないのに歩きだしたのかよ!?」


 ―◇◇◇―
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