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第5話 経験が物を言い過ぎじゃね!?
しおりを挟むこの教団施設に所属するのは全員で30名……フィアルとリジルはここにいる。獄長カルフォンソ、レフト、ライト、グリッツの4人は死亡。ザジは廃人だ、合計7名
残り23名……別の仕事で出かけている奴や、夜勤まで別棟に待機している奴もいるのでザジの記憶が確かなら10人はこの施設にいない
残り13名……俺が4人・フィアルが2人仕留めた……別に、得られるスキルも知識も無かった
残り7名………そろそろ出口は近い、記憶が確かならばこの施設内の実力者は3人。カルフォンソ、フィアル、そしてここの副室長ドレッド・ジャローム
ドSのカルフォンソの腰巾着、尋問官でもある……あの上司にして、この部下ありの同趣味野郎。つまりこいつもサディストで、カルフォンソ仕込みの拷問スキーみたいだ……
暗殺教団だけあって、碌な奴がいないな!ここは支部みたいなので、他にも本部や他の支部があるから俺を知っている奴等は皆殺しにしといた方が後腐れが無さそうだ
幸い今、この施設に居ない奴等は俺が牢屋に入っていた事を知らないので別棟まで行って処理する必要がないのはありがたい
大分俺も際どい考え方をしているが、こいつ等は不意打ち・だまし討ち・毒殺上等の暗殺集団だから放っておいたら狙われる可能性が高くなる、出来るだけ処理しておく事にする
感情が読めるから引っかかりはしないけど、鬱陶しいかどうかは別問題だからな……
漸く、建物のエントランス……俺達の出口に辿り着いた。吹き抜けになって2階と繋がったテラス式になっている
そこに処理すべき残りの7名が構えていてくれている……2階で4名がボウガンで俺達を狙っていて、1階出口の扉の前に3名が立っている。出口の真ん中に陣取っているのがドレッドだ
俺とリジルを見て話しかけてくる
「其処までだ!大人しくして貰おうか、獄長の留守を預かるのが私の仕事なのでね!」
「……別に留守じゃなかったはずだが?」
「ええい!どういう訳かどこを探してもおられんのだ!それよりもこの状況が理解出来ないマヌケか!?大人しく投降しろと言っている!!」
「ちゃんと椅子の上とか確認したか?座って死んでるかもよ?」
「何を馬鹿な事を!もういい!射撃班、こいつ等を蜂の巣にしろッ!………どうした!?2階の者共、聞いているのか!?」
驚いたな、此処まで上手く行くとは流石に思っていなかった
俺がやったのは『記憶改竄技能の譲渡』の応用……カルフォンソの死体を椅子の一部に認識する記憶をカルフォンソの死体に埋め込んでみた
フィアルが俺を主と誤認する様に、死体を椅子に誤認させる
残留思念として、どこまで残るかも確認していないが駄目でも構わないのでやるだけやってみた……椅子に堂々と座った死体に気付いてないなら認識阻害の能力でもあるな
残念ながら俺が俺の中だけで改竄しても、当然効果がない。認識阻害として実体化させても、俺自身が認識阻害自体を忘れるので俺自身には役に立たない。その点、譲渡なら認識阻害を渡した記憶が残る
……そう、俺以外にならこうして使えている
2階で4人を小太刀で斬り殺したフィアルに気付いていない、もはやボウガンを構えた首無し死体が4つあるだけだ
そもそもこいつ等が出口で準備していたのは気配察知でとっくに分かっていた
そこで認識阻害の記憶をフィアルに譲渡して3人でエントランスに出る
フィアルはそのまま2階にジャンプしてテラスの上に飛び乗ったのだが、全くこいつ等は気付いていない
俺は渡した相手としてフィアルを認識しているからどこにいるか分かるが、2階の奴等は首を切られる瞬間まで認識出来ていなかった
フィアル本人の高位気配遮断もあるのだろうが、命令に絶対服従のサイレント・アサシンの完成か……怖っ!
俺が気配遮断のスキルを得た事によって、記憶としても強化されたからだと思うがこれなら更に新しい事が試せそうだ!
残りの実験台3+1で試すとしよう、+1はリジルね
「馬鹿な!いつの間に2階の者共を!?貴様等一体何をした!?」
「リジル、その柱の物陰に隠れてろ。」
小声でリジルに語りかけ、指先で少しだけ触って認識阻害の記憶を譲渡する
物陰に移動するリジルをドレッド達3人が目で追っているので、やはり認識されてから使っても無効だな。現状認識している物を無効化する程の効果は無いと……
「それじゃあ待たせたな、終わらせるとしようか」
俺は再び隠し持っていた仕込み武器状態からハルバード状態にする
「それは獄長の!?貴様、獄長をどうしたのだ!?答えろッ!!」
「俺に触れたなら、教えてやるよッ!!」
どうなるかはお前達次第だけどなぁ!お前達の末路は俺に触って死ぬか、俺に触られて死ぬかだッ!
「フィアル!手を出すな!こいつ等は俺の獲物だ!」
2階から飛び降りて来ようとするフィアルを制して、ドレッド達に突っ込んで行く!
最初に動く奴は俺から見て右の男……長剣は囮の本命は短剣かよ!長剣を払って、短剣を持った手を蹴り飛ばす!
ビックス・ジャローム 35歳 ジャローム教団下位暗殺員から 二刀流の記憶習得
次は左の男!両手に鉤爪を装備している。斧部分で右手の爪を叩き折って、柄で足払いして手刀で軽く首筋に触れる
ジョッシュ・ジャローム 22歳 ジャローム教団下位暗殺員から 爪拳術の記憶習得
最後はドレッドだ、俺が軽く触れただけで動かなくなった二人を見て驚愕と焦燥の感情を流している……
俺はサディストじゃないから、安心しろ!
ドレッドの手にはナックルガードが着けられている、だったら!
駆け寄った俺の右ストレートをドレッド目掛けて放つ、ドレッドは俺の拳を左のナックルガードで弾いて右ストレートをカウンターする考えの様だ……
俺はそれにほんのちょっとダメージを貰わない様、触れるだけでいい……近接戦闘者とはトコトン相性がいいな俺は
直に触れた方が効果は高いが、ナックルガードの上からでも十分だ!
ドレッド・ジャローム 40歳 ジャローム教団中位暗殺員から 中位格闘術の記憶習得 チャクラの記憶習得 マントラの記憶習得
チャクラは体力回復、マントラは精神力回復か……回復量は少ないが便利なスキルだな
しかしこれだけ、スキルを強奪しても下位や中位の気配察知や気配遮断なんかを覚えないって事は……持っているランク以下の技能の記憶は必要ないと判断して強奪しないのかもしれないな
『スキルとして覚えた物は、同ランク以下の物を強奪出来ない』って事か、何でもかんでも奪って無力化するのは厳しいか
それも次の結果次第か……
さて……
「それじゃあ『俺に絶対服従の記憶』を譲渡されたドレッド、ビックス、ジョッシュ、門を開けてくれるかな?」
「「「イエス、マスター!」」」
フィアルの主に絶対服従の記憶を元に創った、コピー品だ。リジルに譲渡した偽造品とは記憶の精度が違う
一切の迷い無く、門を開ける3人。これまた我ながら凄いな……
「ありがとう、次は俺の記憶が確かならば侵入者除けの罠がこの近辺には貼られているよな?」
「「「イエス、マスター!」」」
「この道沿いだと、どこに貼ってあるんだ?」
「あそこと!」「あそこと!」「あそこです!」
一人が一個づつ指さしている、丁度3つか……
「それじゃあ各自、罠を作動してきてくれ」
「「「イエス、マスター!」」」
「ギャーッ!」
「グワーッ!」
「アイエエェェー………」
……身体を張って、罠に引っかかって作動させていく3人……一人は槍が降って来て串刺しに、一人は矢が一斉に飛んで来て蜂の巣に、一人は落とし穴に落ちて暫くした後に激突音がした
無力化は出来ないけど、命がけで命令を遂行する隷属化は出来る様ですハイ……フィアルの扱いには細心の注意が必要だな、カルフォンソの件といい……
「リジル!」
「ひぃっ!?」
「ん?何怯えてるんだ?約束の金だ、ご苦労だったな」
リジルから取った財布に金貨5枚を入れて投げ渡す、財布が3つあっても邪魔だからな。ザジの財布はフィアルに持たせておく
「あ、ありがとうございます!そ、それじゃあ俺はこれで……」
「大丈夫か?」
「は、はいぃ!十分な報酬を頂きましたんで!サヨナラーッ!!」
いやそうじゃなくて、リジルからも地図の記憶とかは奪ったしこの辺の罠の事とか、戦闘スキルの長剣術も奪ってるからこの辺に出るモンスターの事とかを大丈夫か聞いたんだけど何をそんなに慌ててるんだアイツ?
「アバァーーーーーッ!!」
……まぁ契約終わった後まで面倒見る必要はないしな……最後までついて来るなら俺に関する記憶を強奪してから解放したが、こうなる様に仕向けたのは俺だしな……あいつなら生き延びるかもと思ったけど、やっぱり駄目だったか
「それじゃあ、まずは安全な所まで行くぞフィアル」
「イエス、マスター……」
一番近くの町まで行くことにしよう、ザジの記憶を頼りに
記憶通りなら夕方までには着くはずだ……
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