アイアム悪役令嬢,バット世界を救う聖女になります

alunam

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チュートリアル(入学前)

『戦闘の説明が終了しました、チュートリアルは以上です。それではこのゲームを楽しんでください』……ゲームじゃない、だって私は……

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 瀕死のベルンハルトを見た瞬間、私は全力で駆け出した!皆の制止する声が聞こえるが、それすらどこか上の空だ。焦燥感だけが加速して、今まで風の様に感じていた走りでさえ、もどかしく感じてしまう程に……

 そう、私は知らなかった。自分にとって大切な者が、風前の灯火の様な状況に陥っている事を。私は知らなかった!ゲームの様に感じていたこの世界が、これから滅亡へと向かって行くのを知っていて、どこか楽観視して現実から目を背けている自分がいる事を知らなかった。知ろうとしなかった!

 でも、今現実を直視してしまった。如何に強靭なステータスを誇る騎士でさえ、状況によっては簡単に命を落とす事を……駄目だ、そんな事させない!大切な我が家の騎士を……子供のころから面倒を見てくれたおじさんを……失う訳にはいかない!
 私じゃないマリアルイゼの15年の時間が、私を突き動かす。その想いに抗えない……だって私もマリアルイゼなんだから。あの、人をいつまでたっても子供扱いして笑う顔を、厳しいふりして結局はワタクシ・・・・の我が儘を聞いてくれるやさしい叔父様を……失いたくない!今からで間に合う?諦める訳にはいかない!

 その一念だけがワタクシを突き動かし、全力以上の力で前へと駆けだす!途中の邪魔な魔物達は手加減無しで放った水系攻撃魔法によって、森の木々ごと押し流されていった。そこだけ突如、池の様な溜め池状のクレーターになったが、そんな事を気にしている場合じゃない。
 唯々、前へ!ワタクシの邪魔をする輩を排除し只、進む!

 
 


 必死に防戦するファイアス達を取り囲む様に大集団でひしめき合う魔物達……騎士や自警団の方達が叔父様を庇い逃がそうとするが、物量に囲まれては身動きが取れず歩みは遅い。どんどんと包囲網が狭まっていく……間に合え、間に合え!

 『戦場で……負傷者に構い過ぎるな……被害が広が……だけだ……』

 『すいません!自分が不甲斐ないばかりに……この命に変えても恩人である貴方を守ってみせる!』

 『ッか野郎!いいから一旦引いて立て直せ!このままでは全滅だッ!』

 両脇を騎士団の男達に抱えられ、引きずられながら退くベルンハルトを庇う様に、大軍の魔物達の前に立つファイアス達。だが、その壁でも覆えない程に包囲網は広い。敵の面に対して、数に劣る味方の面では足りない所から魔物達は近づいていく……

 「怯むな!一歩も退くな!この先には村がある!何としてもここで食い止める!」

 ファイアスの檄を飛ばす叫び声が直に聞こえて来た!もう少し……

 それでも、もどかしい!後ろから追って来ているウィード達とも差が出来ている……それならっ!

 「ウインドストーム!」

 後方に向けて風の魔法を放ちます!その名の通りの魔法、竜巻状に発生した追い風に乗って、一気に加速する!

 ジェット気流にのったワタクシの体は宙に浮き、イーグルアイから見る視点と実際の視点に差違は無くなった。とんでもない高度までジャンプした形になっていますが、今のワタクシに恐れはありません。間に合わない事への恐怖より、怖いものなんか無いのだから……


 

 上空から見下ろすと、深い森が魔物に埋め尽くされている……その群れに呑み込まれない様に奮戦する騎士達。もう少しだけ耐えて!この角度なら巻き込む事は無いから!

 「ウォーターバレット3!」

 水流激を上級レベル3で放つ!
初級レベル1なら水の弾丸を飛ばすウォーターバレットは、水の龍……水龍激となって、虫の様に群がり蠢く魔物達を喰らい、暴れ、押し流していった。
 残された魔物達も、突如空から降って来た水龍にパニックを起こして動きが止まった!
 立て直すチャンスです、騎士団の皆さん!……って、騎士団も呆気に取られて動きが止まってしまっています……辛うじてファイアスの周囲だけは、彼の指示の元、動いていますが……それでもまだ立て直すには至っていない……なら!

 「騎士団!1列横隊の陣形!後列、自警団!後方援護!」

 上空から声を張り上げると、雷に打たれた様に騎士団も自警団も我に返り、騎士団で壁を作り、その後ろを自警団が固めた。
 どちらも出発時点より数が少ない……嫌な考えが頭を過ぎるが、今は何よりも優先したい事がある。

 周囲を蹴散らしたとは言え、まだ続々と魔物達は群がって来る。稼いだ時間は少ない……それでも間に合わせてみせる!

 「ベルンハルトはワタクシが治療します!戦える者は戦列に戻って下さい!」

 自由落下をしながら、浮遊魔法レビテーションで速度軽減をします。あまり勢いを殺して速度を落とす訳にはいかない……って、えっ!?

 

 着地が近づいたと思った瞬間、何かにぶつかった……いいえ、どうやら受け止められました……………ファイアスに……

 「天から声が聞こえたと思ったら……一体どこから登場してるんだ!?」

 「ちょっ……降ろして下さい!今、説明している暇はないんですっ!」

 地面に降りたと思ったら、ファイアスの凛々しい顔がドアップで眼前にありました……その顔とその声を耳元近くでされると、急がなきゃといった決意が揺らいでしまうじゃないですか!今はそれどころじゃないんですっ!

 ジタバタともがくワタクシを降ろすファイアスが呆れた表情をしていますが、先程までの決意で押し潰されそうな悲壮感が消えています。それ位、落ち着いて周りをよく見て指揮するといいんですよ、全くもう!

 「ベルンハルトを、そこの木陰に寝かせて下さい!鎧も外して頂けますか?」

 「わ、分かりました……」

 ベルンハルトの両脇を抱えていた二人の自警団員に指示を出すと、素直に従ってくれた。少し狼狽えていらっしゃるのは、空から降って来たワタクシに引いてるのでしょうね……今はそんな事どうでもいいです。

 「グゥッ!……ウゥッ……!」

 「少し我慢して下さいね、ベル叔父様。すぐに治しますから!」

 呻き声を上げて苦しそうな叔父様の鎧が脱がされる。今まで気力だけでファイアスを叱咤激励していたのでしょう。既に意識無く、されるがままに木の幹に体を預けて寝かされました。
 下には鎖帷子や、厚手の服が幾重にも着込まれていたが、一々脱がしてる時間はありません。外せるボタンだけ外して胸部だけ露わにすると、呪いのせいか呪紋が禍々しい入れ墨となって、ベル叔父様の鍛えられた厚い胸板を這っていた。
 そこに破魔の聖水をかけると……

 「グアーーーッ!」

 丸で煮えたぎった油をかけられた様な絶叫と、シュウシュウと音を立てて煙が上がります……が、胸の呪紋が煙と共に消えていきます。それに伴い、荒かったベル叔父様の息が落ち着いたリズムに変わっていきます……良かった!間に合った!

 一桁だったステータスが、ゆっくりとだが元の数値へと戻っていきます。全快にはまだ遠いけど、ヒール2を唱えると顔色も良くなりました。これで一安心……と、言いたい所ですが……まだ状況が状況でした。無我夢中でここまで来ましたが……流石にこの数は異常です。経緯を知りたい所ですが、それを詳しく聞くのは……まだ先の話になりそうです……―――。

 

 

 
 

 

 
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