パウー掌編集

さく

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雑多な未分類掌編共(単発完結シリーズ)

お題「ヘッドホン」

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 電車の中で、いつも会う彼女──。

 その綺麗な顔立ちにそぐわない、無骨なヘッドホンを付け、片手でつり革をつかむ。
 時折、スマホをいじる事もあるが、基本は目をつぶって音楽を堪能している様に見える。
 最近は、屋外でヘッドホンをつける人も増えてきた。
 僕はもっぱらカナル型のイヤホン派だ。
 一度ヘッドホンを使ったことがあるが、音漏れが意外とするので、ちょっと屋外で使うのをためらう様になってしまった。

 音がいい。というのは解るのだけど。

 それよりも何を聞いているのか気になる。
 見た目からすると、クラシックとか、最近はやりのJ-POPSかもしれない。K-POPSはもう下火だけど、旧来の根強いファンがいるみたいだし。
 今日は割と近い位置にいるが、音は漏れていないようだ。

 意外と聞こえないなぁ、等とおもっていると、がっくん、と思い切り体がもっていかれ、電車が急停車した。

「現在、緊急停止信号を受信したため……」

 彼女はヘッドホンを軽くもちあげ、車内アナウンスを聞いている。
 僕は、彼女のヘッドホンから漏れる音に愕然とした。

「細川たかし」
「え?」

 彼女は真っ赤になってこちらの声に反応する。

「演歌。いいよね」
「は?」

 満面の笑みで言う僕に、彼女は何か面食らったように言う。

「え? 変じゃない?」
「なにが?」
「演歌」
「え? 僕も演歌聞くし。大体聞いてなかったらすぐ歌手名出ないよね」

 彼女はぽかんとしてこっちを見てる。
 綺麗な顔の女の子でもこんな顔するんだなぁ。

「何それ」

 そして破顔。その顔に僕はドキリとする。

「ああ、ごめんね。立派なヘッドホンで聴いてるから何を聞いてるのか興味があったのは本当なんだ。気を悪くしたらごめんね」
「いいわ。なんだかどうでもよくなっちゃった。あなた演歌は何聴くの?」
「ああ、僕はじいちゃんの影響で、細川たかしとか、氷川きよし。あと、石川さゆりも」
「渋いわね、演歌以外には聞かないの?」
「音楽は邦楽なら何でも。アニソンから演歌まで」
「アニソンから演歌ってなんか凄い幅が広いわね」

 彼女の顔がさらに綻ぶ。
 アニソンなんてノンジャンルみたいなモノだけどね。
 電車が動き出すまで、僕は彼女との楽しい音楽談義をした。

 連絡用のアドレスも貰えた。
 今日はいい一日になりそうだ。
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