パウー掌編集

さく

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雑多な未分類掌編共(単発完結シリーズ)

お題「みかん」

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 この家に嫁いで来て、最初の衝撃はみかんだった。

 この家では、基本的にみかんの皮を捨てないのだ。
 前に捨てようとしたら、お姑さんに怒られてちょっとびっくりした。

「それ捨てちゃだめよ」
「え?」
「干して色々使いますから」
「えええ!?」

 正直驚いたし、夫は少しはにかみながら言う。

「ばーちゃんの知恵でね。冬になると良くやるんだ」

 そう言って適当な大きさにみかんの皮を切り分ける。
 ざるに入れて、天日干しするのだそうだ。
 一週間後、カサカサに乾いたみかんの皮をネットに入れてお風呂に浮かべる。
 ほんのりみかんの臭いがするお風呂はずいぶんと体が温まった気がした。
 ゆず湯みたいなものかと妙に感心した。

 あと、夫が焼いたパウンドケーキもほんのりミカンの香がした。

「まさか……」
「うん、ミカンの皮が入ってる」
「うわぁ」
「ママレードだって皮つきじゃん。皮捨てるの勿体ないよ!」

 あの母親にしてこの息子ありか。

 そんな私も今やすっかり慣れてしまって、会社のゴミ箱にみかんの皮が捨ててあるのをみると、うはぁ。勿体ないと思うようになってしまった。

 いやはや。
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