パウー掌編集

さく

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雑多な未分類掌編共(単発完結シリーズ)

お題「ホワイトデー」(BL/R18)

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 電話の先から彼の優しい声が聞こえる。

 昨日のホワイトデー、彼を驚かせようと画策していたのだけど、彼の方が何倍も上手だった。
 駅ビルから見渡せる夜景は宝石の粒のように煌めいていて、今自分が座っている場所を忘れそうなくらい非日常的な空間が広がっていた。

「この日なのに良くこんな場所がとれたね」
「ああ、前からお前を連れてこようとは思っていたんだ」

 さりげない言葉だが、周りの4席ある窓際席はどう見てもカップルで埋まっている。
 男同士は僕たちだけだ。
 三月十四日に予約も無しでこんないい席が取れるわけはない。

「気にするなよ。今日はタダの平日だ」

 そう言って、白ワインのグラスを自分のグラスにコツンと合わせる。
 澄んだ音が響き、静かな食事が始まる。

 バレンタインの日、僕は彼に奮発してゴディバのチョコをプレゼントした。
 彼も彼でやはりチョコを用意していたようだが、頭を掻きながら、「ゴディバかー」とちょっと罰が悪そうな顔をしていた。

 自分の用意していた物との差を気にしたらしい。
 でも、僕は彼がチョコをくれた事が嬉しかった。

 彼は純粋なゲイではなく、いわゆるバイで責めだった。
 だから、まさかチョコをくれるとは思わなかったし、お返しも余り考えてはいなかったのだ。

 付き合ってまだ一年ほどたつ。
 バニラセックス止まりで、実際に挿入をしたことはない。

 一度入れたい?と聞いたけど、無理はしなくていいよ。と言われたことを思い出す。
 彼は優しいのだ。

 ふと、ホワイトデーにアナルセックスをプレゼントしたらどんな顔するのかな。とそんな思いが頭によぎる。
 遅かれ早かれ、経験するんだろうし。
 そして、バレンタイン翌日から自分のアナル拡張は始まった。
 最初は指一本入れるのも抵抗があった。
 ネットでアナル拡張の情報を調べながらゆっくりと丁寧にほぐしていく。
 一ヶ月経つ頃には、それなりに開発も済んでいた。
 流石に、漫画ではあるまいし、プレゼントは僕という訳にもいかないので、クッキーも購入しておく。

 そして、三月十四日。
 彼が店を予約しているというので、来たらこのような状況である。
 食事をしながら、他愛もない日常の話をしていくと、ホワイトデーのお返しにと考えていた、自分が急に恥ずかしくなっていった。

 結局その日は何事もなく食事だけで終わった。
 ただ、食事が終わり別れた時の僕の表情が気になっていたらしい。
 あろうことか、重たすぎたか?と心配そうに彼から電話がかかってきた。
 誤解だといっても中々信じては貰えなかった。
 恥を覚悟で本当の事を言う事にした。

「――というわけで、僕は最低な変態野郎だったんだよ」
「変態なものかよ。そこまでしてくれるのは嬉しい」
「うれしいって……」
「好きな相手が喜んでくれそうだっていってやってくれてるんだ。それを茶化して言う奴は人としてクズだし。俺にとっては嬉しい意外の何物でも無い」

 電話の先から、彼の優しい声が聞こえる。

「俺はお前と付き合えて、良かったと思ってるよ」

 その言葉に、目尻が熱くなってきた。

「焦る必要はないさ。お互いゆっくりやっていこう」

 やはり彼は優しいのだ。

「僕も。君と付き合えて良かったと思ってるよ」

 そう言うと、電話先から彼の照れたような吐息が聞こえた。

「何にしても、俺の勘違いでよかったよ。じゃぁ、また月末に。お休み」

 彼に打ち明けて胸が心なしか軽くなった僕は月末の楽しいデートを想像しながら眠りに落ちていった。
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