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雑多な未分類掌編共(単発完結シリーズ)
お題「絵柄買い取り」
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喫茶店の中。
目の前の男が奇妙な事をいった。
「貴方の絵柄を買い取りたい」
その言葉の意味がよく分からない。著作権という意味だろうか?
「えーっと?」
「貴方の絵柄を好ましく思う方がいらっしゃるのです。良ければお譲り頂きたい」
「絵……ではなくて、絵柄ですか?」
「はい」
端的にそう言うと、上品な手つきで目の前のコーヒーを啜る。
はっきり言って、自分は売れないイラストレータである。何度も筆を折ろうとしたこともある。
今の絵柄は十年ほどかかって自分の好みに沿うように到達したものだ。
専門校をそこそこの成績で卒業し、細々とバイトを入れながら、画業に取り組んだ。
そして、目の前の男の誘いである。
「絵を描いてほしい」
最初はそういう依頼だったのだ。しかし、男は続ける。
「納品後、その絵柄は使わないでほしい」
その言葉の真意を問うた答えが先の絵柄買い取りだった。
「その後、私がその絵柄を描くとどうなるのでしょうか?」
そう告げると、男が目を丸くした後、口角を上げる。
「大丈夫ですよ」
その表情に背筋に冷たいものが走った。
「で、どうでしょう?三千でどうでしょうか?」
「三千万の間違いだよな?」
冗談のつもりだった。しかし、男は満足そうに「当然です」と言った。
もう、三十代も半ばだ。三千万で足を洗うのも悪く無い。そう思った。
男は一割の前金を払い、そして契約は成立した。
* * *
出来上がった物をみて、男は目を細めると、残りの金額を目の前で振り込んだ。
ネットバンキングで確認すると、見たこともない桁の残金になっている。
「そうそう」
別れ際、彼が妙な事を言う。
「貴方がもし、絵を描こうとするのならお止めはしません」
「は?」
「言葉通りの意味ですよ。ただ、後悔する事になるとは思いますのでおすすめしません」
「脅しか?」
「いえいえ、貴方自身に私やクライアントから直接的な事は致しません。ですがね――」
あの時の、寒気を伴う笑いを浮かべ、男は去って行った。
その言葉の意味を、自分は後に知る事になる。
一年後、バイト先の雑誌で、新進気鋭のイラストレータの特集が組まれていた。
もう筆を折って一年になる。三千万は退職金と考え、絵はもう描いていなかった。
ペラペラとめくり、手を止めた。
――この絵は。
自分の絵ではない。しかし、自分が描くであろうその絵がそこにあった。
参考価格を見て愕然とする。
幸い自分の絵柄とそっくりである。もし、自分が描けば、コピーだとしても、それなりの高値が……。
喉を鳴らし、そんな下卑た考えが頭を過った。
――今、自分が何を考えたのか。
冷や汗が頬を伝った。
そういうことかよ。ギリと奥歯を噛み締め、強く手を握りしめる。
「ですがね、貴方が描こうと思った頃には、貴方は知らずに自分を貶めていたことに気づくと思いますよ」
そのとき、初めて「絵柄を売る」という意味を知るのだった。
目の前の男が奇妙な事をいった。
「貴方の絵柄を買い取りたい」
その言葉の意味がよく分からない。著作権という意味だろうか?
「えーっと?」
「貴方の絵柄を好ましく思う方がいらっしゃるのです。良ければお譲り頂きたい」
「絵……ではなくて、絵柄ですか?」
「はい」
端的にそう言うと、上品な手つきで目の前のコーヒーを啜る。
はっきり言って、自分は売れないイラストレータである。何度も筆を折ろうとしたこともある。
今の絵柄は十年ほどかかって自分の好みに沿うように到達したものだ。
専門校をそこそこの成績で卒業し、細々とバイトを入れながら、画業に取り組んだ。
そして、目の前の男の誘いである。
「絵を描いてほしい」
最初はそういう依頼だったのだ。しかし、男は続ける。
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その言葉の真意を問うた答えが先の絵柄買い取りだった。
「その後、私がその絵柄を描くとどうなるのでしょうか?」
そう告げると、男が目を丸くした後、口角を上げる。
「大丈夫ですよ」
その表情に背筋に冷たいものが走った。
「で、どうでしょう?三千でどうでしょうか?」
「三千万の間違いだよな?」
冗談のつもりだった。しかし、男は満足そうに「当然です」と言った。
もう、三十代も半ばだ。三千万で足を洗うのも悪く無い。そう思った。
男は一割の前金を払い、そして契約は成立した。
* * *
出来上がった物をみて、男は目を細めると、残りの金額を目の前で振り込んだ。
ネットバンキングで確認すると、見たこともない桁の残金になっている。
「そうそう」
別れ際、彼が妙な事を言う。
「貴方がもし、絵を描こうとするのならお止めはしません」
「は?」
「言葉通りの意味ですよ。ただ、後悔する事になるとは思いますのでおすすめしません」
「脅しか?」
「いえいえ、貴方自身に私やクライアントから直接的な事は致しません。ですがね――」
あの時の、寒気を伴う笑いを浮かべ、男は去って行った。
その言葉の意味を、自分は後に知る事になる。
一年後、バイト先の雑誌で、新進気鋭のイラストレータの特集が組まれていた。
もう筆を折って一年になる。三千万は退職金と考え、絵はもう描いていなかった。
ペラペラとめくり、手を止めた。
――この絵は。
自分の絵ではない。しかし、自分が描くであろうその絵がそこにあった。
参考価格を見て愕然とする。
幸い自分の絵柄とそっくりである。もし、自分が描けば、コピーだとしても、それなりの高値が……。
喉を鳴らし、そんな下卑た考えが頭を過った。
――今、自分が何を考えたのか。
冷や汗が頬を伝った。
そういうことかよ。ギリと奥歯を噛み締め、強く手を握りしめる。
「ですがね、貴方が描こうと思った頃には、貴方は知らずに自分を貶めていたことに気づくと思いますよ」
そのとき、初めて「絵柄を売る」という意味を知るのだった。
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