20 / 28
第一章/葉月瑠衣
Episode07/ー(1/5).朱殷を纏う少女ー
しおりを挟む
(一.)
三年生へと進級した彼女は中学の校門から出ると、普段どおり自宅へと向かって歩き始めた。
友達と言えるような友達がいない彼女ーー葉月瑠衣は、三年に進級してからは毎日ひとりで帰宅することになっていた。
二年生の頃は友達がいなくても姉と二人で帰ることが多かったので、完全にひとりぼっちではなかった。
とはいえ、それでも教室内では常に孤立している瑠衣は、孤独には慣れていた。
別に酷いいじめを受けているわけでもない。
稀に陰口を叩かれるだけだ。いじめも軽いーー画鋲を上履きに仕込まれる程度で済んでおり、辺りからは嘲笑されるレベルの嫌がらせしかされていない。
体育で『二人組をつくれ』と言われたら余ってしまうのが悩みの種だった。
クラスメートの人数が偶数なのに余ってしまうこのシステムには欠陥があるに違いない。と、瑠衣は自己解決している。
唱えると誰かしらに必ず苦痛をもたらす呪文でしかない。
ーーそれを平然と口にする教師(あいつ)には、いずれ天罰が下るだろう。
瑠衣は脳内でそう補完して、やるせなさを緩和する。
春特有の寒さと暖かさが混じる風が吹くと、道端の草花が踊るように揺れはじめる。その風を一身に浴びながら、きょうはなにをしようかと瑠衣は考える。
無趣味である瑠衣からすれば、家に帰っても特別やることがないのである。
そんな帰路の途中、瑠衣はひとけの薄い細道を歩いていると、背後から腕を回され、いきなり口を塞がれた。
「声出すなよ! こっちに来い!」
「んっ!?」
瑠衣は口が塞がれたまま、無理やり公園の草むらに連れていかれ、乱雑に押し倒された。
「おいおい上玉じゃねーか、やるなテメェ」
「待ってみるものっすね。けへへ!」
瑠衣の口にガムテープが貼られ、男たちは厭らしく嗤う。
「ん? んーっ!?」
草むらにはもう一人男が待機していた。
昂る感情を抑えきれないという表情を浮かべながら、連携して瑠衣が身動きできないような体勢にしていく。
瑠衣はこれからなにをされるのか理解した途端、よりいっそうに強く暴れはじめた。
必死に手足をばたつかせようとするが、頭側に居る男に両手首を掴まれ、相方の男がスカートを捲り上げつつ下半身に跨がってしまい、ほとんど動けなくなってしまう。
制服の上着のボタンが外され、手早くワイシャツも脱がされてしまう。一気に捲り上半身の下着が露になる。
体勢を変えながら、男たちにパンツまで脱がされ、下半身の全貌が見えるようになってしまった。
「んーっ! んんっ!」
「うっせーぞ! 満足したら帰してやるから黙ってやがれ!」
瑠衣は暴れていたことにより、スカートからソレが落ちて思い出す。
護身用のカッターナイフを制服に入れていたんだったっけ、と。
しかし、今さら気づいてももう遅い。
どうにか隙をついて反撃できないかと、瑠衣は男たちと当たりの様子を窺う。
ダメだ。誰も見当たらない! と瑠衣は絶望する。
瑠衣の衣服を脱がすと、男たち自らも下半身を露出させ、見たくないものが露になる。
ーーいやだ。嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!
と、瑠衣が拒絶を思考していたその寸刻。
瞬きするよりも早く、彼女の脳裏に異能力の情報が濁流のように押し寄せてきた。
そして、突如として瑠衣に異能力が発現したのであった。
自分が異能力者になったこと、異能力についての知識、なにができるのか、どう使うべきなのかーーそれらすべてが、時間の流れを感じさせないほど一瞬で、急激に記憶へと刻まれる。
ーーそして瑠衣は、刃を鋭くするという異能力が行使できる異能力者として誕生を遂げた。
単なるカッターのままなら、たとえ隙が生じて手に握られても、男たちにとってはそこまで脅威にはなり得ないだろう。
切りつけてもせいぜい軽い切り傷がつくだけで、むしろ逆上される要因になりかねない。
だが現状では、逆転のひとつになるかもしれない手段へと昇華した。
両手を掴んでいる男が自分の下半身まで脱ごうと早まったとき、瑠衣は片腕だけ解放された。
その隙を見て、慌ててカッターが落ちたほうへと手を伸ばして掴み取る。
成功した瞬間、瑠衣はすぐさまチキチキとカッターの刃を出した。
だが、やはりカッター程度で諦める男ではない。
男たちは下卑た笑い声を口から漏らすだけで、なんの畏怖も覚えていない。
「この反応にしろ態度にしろ、もしかしてこいつ処女っぽくね? ラッキー!」
「中学生だろ? 俺たちの時代じゃそれが当たり前だっての! 悪いな? 俺たちを気持ちよくするためだけに妊娠させちゃうかもなぁ? げへへ!」
ーーこいつこいつこいつこいつ!
ーー当たれぇえぇええっ!
下品なことを口にしながら、男は自分の性器を瑠衣の股に遠慮なく近づけようとする。
怒りと恐怖が混ざりパニック症状を起こしかけながら、瑠衣はがむしゃらに、どこかに、どこにでもいいから当たってくれーーと健気にカッターをただただ振るいまくった。
「痛っ! な!? なんだこれ!?」
下半身側の男がカッターを取り上げようとしたとき、その腕にカッターの刃が当たった。
衣服を着ている部位だが関係ない。
衣服も皮膚も筋肉も裂け、肉が裂けたところから血が多量に飛散し、衣服に勢いよく血が広がっていく。
「っーーざけんじゃねぇぞぉこの肉便器がぁああああッ!」
男はカッターを握る瑠衣の腕を全力で握りしめた。
瑠衣はここまですれば退くだろうと考え、つい動作を緩慢にしてしまったのが災いした。
最初はなにが起こったのか理解できなかった男たちだが、なにがあったのか認識した瞬間、この威力のカッターを食らったというのに恐れるのではなく、むしろ頭に血が登り顔を赤くさせ瑠衣に罵声を浴びせた。
狂暴性が増した男は、瑠衣の顔面に拳を振り上げ、全力で降り下ろそうとした。
そのときだった。
「すごいカッターだね、それ」
ーーその少女は現れた。
少女は瑠衣よりも少し歳上の風貌をしており、愛くるしく明るさを宿した瞳で瑠衣を見ていた。
外見だけなら自分よりかわいいだろうーーと瑠衣は現状を忘れながらそう評した。
男たちは一瞬焦るが、少女が瑠衣より2、3歳程度年上なだけだとわかりーーつまりは単なる女子高生ぐらいだと認識すると、安堵のため息を漏らす。
「こっちはお楽しみ中だ。あっち行かねーと、おまえもこいつと同じ目に遭うぞ? ああっ? さっさと立ち去れ」
男は忠告するが、少女はそれには耳をかさず、瑠衣に歩み寄ると、瑠衣の顔を見つめる。
「二対一は不利だというのにさー、さらに女の子相手に大人二人がかりとか……助けよっか?」
幼さと活発さの印象を兼ね備えているサイドテールを風に靡かせ、ついに少女は至近距離まできてしまった。
少女が見ているのは瑠衣。つまりは自分に訊いているのだと判断した瑠衣は、藁にもすがる思いで必死に何度も頷いた。
「ん! んっ!」
瑠衣は声が出せないながらも必死に助けを懇願する。
「オッケー。暇だったしべつにいいよ。それに“ソレ”。気になるしね」
状況が状況だから仕方ないとはいえ、最悪少女まで巻き込む可能性があった。
だとしても、瑠衣には今、そのようなことを思考できる余裕はない。
見た目からは想像できない危険な香りを少女は漂わせていた。
「やるってんなら容赦しねぇぞ、ああっ!?」
「あはっ! キッモいッ!」
男二人は瑠衣から退き立ち上がると、嗤ってきた少女を殴り飛ばそうと肘を引いた。
少女はそれより早く片手でスカートを翻し内側に手を入れた。
ーーそれは、一寸経たずに終わってしまった。
三年生へと進級した彼女は中学の校門から出ると、普段どおり自宅へと向かって歩き始めた。
友達と言えるような友達がいない彼女ーー葉月瑠衣は、三年に進級してからは毎日ひとりで帰宅することになっていた。
二年生の頃は友達がいなくても姉と二人で帰ることが多かったので、完全にひとりぼっちではなかった。
とはいえ、それでも教室内では常に孤立している瑠衣は、孤独には慣れていた。
別に酷いいじめを受けているわけでもない。
稀に陰口を叩かれるだけだ。いじめも軽いーー画鋲を上履きに仕込まれる程度で済んでおり、辺りからは嘲笑されるレベルの嫌がらせしかされていない。
体育で『二人組をつくれ』と言われたら余ってしまうのが悩みの種だった。
クラスメートの人数が偶数なのに余ってしまうこのシステムには欠陥があるに違いない。と、瑠衣は自己解決している。
唱えると誰かしらに必ず苦痛をもたらす呪文でしかない。
ーーそれを平然と口にする教師(あいつ)には、いずれ天罰が下るだろう。
瑠衣は脳内でそう補完して、やるせなさを緩和する。
春特有の寒さと暖かさが混じる風が吹くと、道端の草花が踊るように揺れはじめる。その風を一身に浴びながら、きょうはなにをしようかと瑠衣は考える。
無趣味である瑠衣からすれば、家に帰っても特別やることがないのである。
そんな帰路の途中、瑠衣はひとけの薄い細道を歩いていると、背後から腕を回され、いきなり口を塞がれた。
「声出すなよ! こっちに来い!」
「んっ!?」
瑠衣は口が塞がれたまま、無理やり公園の草むらに連れていかれ、乱雑に押し倒された。
「おいおい上玉じゃねーか、やるなテメェ」
「待ってみるものっすね。けへへ!」
瑠衣の口にガムテープが貼られ、男たちは厭らしく嗤う。
「ん? んーっ!?」
草むらにはもう一人男が待機していた。
昂る感情を抑えきれないという表情を浮かべながら、連携して瑠衣が身動きできないような体勢にしていく。
瑠衣はこれからなにをされるのか理解した途端、よりいっそうに強く暴れはじめた。
必死に手足をばたつかせようとするが、頭側に居る男に両手首を掴まれ、相方の男がスカートを捲り上げつつ下半身に跨がってしまい、ほとんど動けなくなってしまう。
制服の上着のボタンが外され、手早くワイシャツも脱がされてしまう。一気に捲り上半身の下着が露になる。
体勢を変えながら、男たちにパンツまで脱がされ、下半身の全貌が見えるようになってしまった。
「んーっ! んんっ!」
「うっせーぞ! 満足したら帰してやるから黙ってやがれ!」
瑠衣は暴れていたことにより、スカートからソレが落ちて思い出す。
護身用のカッターナイフを制服に入れていたんだったっけ、と。
しかし、今さら気づいてももう遅い。
どうにか隙をついて反撃できないかと、瑠衣は男たちと当たりの様子を窺う。
ダメだ。誰も見当たらない! と瑠衣は絶望する。
瑠衣の衣服を脱がすと、男たち自らも下半身を露出させ、見たくないものが露になる。
ーーいやだ。嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!
と、瑠衣が拒絶を思考していたその寸刻。
瞬きするよりも早く、彼女の脳裏に異能力の情報が濁流のように押し寄せてきた。
そして、突如として瑠衣に異能力が発現したのであった。
自分が異能力者になったこと、異能力についての知識、なにができるのか、どう使うべきなのかーーそれらすべてが、時間の流れを感じさせないほど一瞬で、急激に記憶へと刻まれる。
ーーそして瑠衣は、刃を鋭くするという異能力が行使できる異能力者として誕生を遂げた。
単なるカッターのままなら、たとえ隙が生じて手に握られても、男たちにとってはそこまで脅威にはなり得ないだろう。
切りつけてもせいぜい軽い切り傷がつくだけで、むしろ逆上される要因になりかねない。
だが現状では、逆転のひとつになるかもしれない手段へと昇華した。
両手を掴んでいる男が自分の下半身まで脱ごうと早まったとき、瑠衣は片腕だけ解放された。
その隙を見て、慌ててカッターが落ちたほうへと手を伸ばして掴み取る。
成功した瞬間、瑠衣はすぐさまチキチキとカッターの刃を出した。
だが、やはりカッター程度で諦める男ではない。
男たちは下卑た笑い声を口から漏らすだけで、なんの畏怖も覚えていない。
「この反応にしろ態度にしろ、もしかしてこいつ処女っぽくね? ラッキー!」
「中学生だろ? 俺たちの時代じゃそれが当たり前だっての! 悪いな? 俺たちを気持ちよくするためだけに妊娠させちゃうかもなぁ? げへへ!」
ーーこいつこいつこいつこいつ!
ーー当たれぇえぇええっ!
下品なことを口にしながら、男は自分の性器を瑠衣の股に遠慮なく近づけようとする。
怒りと恐怖が混ざりパニック症状を起こしかけながら、瑠衣はがむしゃらに、どこかに、どこにでもいいから当たってくれーーと健気にカッターをただただ振るいまくった。
「痛っ! な!? なんだこれ!?」
下半身側の男がカッターを取り上げようとしたとき、その腕にカッターの刃が当たった。
衣服を着ている部位だが関係ない。
衣服も皮膚も筋肉も裂け、肉が裂けたところから血が多量に飛散し、衣服に勢いよく血が広がっていく。
「っーーざけんじゃねぇぞぉこの肉便器がぁああああッ!」
男はカッターを握る瑠衣の腕を全力で握りしめた。
瑠衣はここまですれば退くだろうと考え、つい動作を緩慢にしてしまったのが災いした。
最初はなにが起こったのか理解できなかった男たちだが、なにがあったのか認識した瞬間、この威力のカッターを食らったというのに恐れるのではなく、むしろ頭に血が登り顔を赤くさせ瑠衣に罵声を浴びせた。
狂暴性が増した男は、瑠衣の顔面に拳を振り上げ、全力で降り下ろそうとした。
そのときだった。
「すごいカッターだね、それ」
ーーその少女は現れた。
少女は瑠衣よりも少し歳上の風貌をしており、愛くるしく明るさを宿した瞳で瑠衣を見ていた。
外見だけなら自分よりかわいいだろうーーと瑠衣は現状を忘れながらそう評した。
男たちは一瞬焦るが、少女が瑠衣より2、3歳程度年上なだけだとわかりーーつまりは単なる女子高生ぐらいだと認識すると、安堵のため息を漏らす。
「こっちはお楽しみ中だ。あっち行かねーと、おまえもこいつと同じ目に遭うぞ? ああっ? さっさと立ち去れ」
男は忠告するが、少女はそれには耳をかさず、瑠衣に歩み寄ると、瑠衣の顔を見つめる。
「二対一は不利だというのにさー、さらに女の子相手に大人二人がかりとか……助けよっか?」
幼さと活発さの印象を兼ね備えているサイドテールを風に靡かせ、ついに少女は至近距離まできてしまった。
少女が見ているのは瑠衣。つまりは自分に訊いているのだと判断した瑠衣は、藁にもすがる思いで必死に何度も頷いた。
「ん! んっ!」
瑠衣は声が出せないながらも必死に助けを懇願する。
「オッケー。暇だったしべつにいいよ。それに“ソレ”。気になるしね」
状況が状況だから仕方ないとはいえ、最悪少女まで巻き込む可能性があった。
だとしても、瑠衣には今、そのようなことを思考できる余裕はない。
見た目からは想像できない危険な香りを少女は漂わせていた。
「やるってんなら容赦しねぇぞ、ああっ!?」
「あはっ! キッモいッ!」
男二人は瑠衣から退き立ち上がると、嗤ってきた少女を殴り飛ばそうと肘を引いた。
少女はそれより早く片手でスカートを翻し内側に手を入れた。
ーーそれは、一寸経たずに終わってしまった。
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
身体だけの関係です‐原田巴について‐
みのりすい
恋愛
原田巴は高校一年生。(ボクっ子)
彼女には昔から尊敬している10歳年上の従姉がいた。
ある日巴は酒に酔ったお姉ちゃんに身体を奪われる。
その日から、仲の良かった二人の秒針は狂っていく。
毎日19時ごろ更新予定
「身体だけの関係です 三崎早月について」と同一世界観です。また、1~2話はそちらにも投稿しています。今回分けることにしましたため重複しています。ご迷惑をおかけします。
良ければそちらもお読みください。
身体だけの関係です‐三崎早月について‐
https://www.alphapolis.co.jp/novel/711270795/500699060
小さくなって寝ている先輩にキスをしようとしたら、バレて逆にキスをされてしまった話
穂鈴 えい
恋愛
ある日の放課後、部室に入ったわたしは、普段しっかりとした先輩が無防備な姿で眠っているのに気がついた。ひっそりと片思いを抱いている先輩にキスがしたくて縮小薬を飲んで100分の1サイズで近づくのだが、途中で気づかれてしまったわたしは、逆に先輩に弄ばれてしまい……。
義姉妹百合恋愛
沢谷 暖日
青春
姫川瑞樹はある日、母親を交通事故でなくした。
「再婚するから」
そう言った父親が1ヶ月後連れてきたのは、新しい母親と、美人で可愛らしい義理の妹、楓だった。
次の日から、唐突に楓が急に積極的になる。
それもそのはず、楓にとっての瑞樹は幼稚園の頃の初恋相手だったのだ。
※他サイトにも掲載しております
百合系サキュバスにモテてしまっていると言う話
釧路太郎
キャラ文芸
名門零楼館高校はもともと女子高であったのだが、様々な要因で共学になって数年が経つ。
文武両道を掲げる零楼館高校はスポーツ分野だけではなく進学実績も全国レベルで見ても上位に食い込んでいるのであった。
そんな零楼館高校の歴史において今まで誰一人として選ばれたことのない“特別指名推薦”に選ばれたのが工藤珠希なのである。
工藤珠希は身長こそ平均を超えていたが、運動や学力はいたって平均クラスであり性格の良さはあるものの特筆すべき才能も無いように見られていた。
むしろ、彼女の幼馴染である工藤太郎は様々な部活の助っ人として活躍し、中学生でありながら様々な競技のプロ団体からスカウトが来るほどであった。更に、学力面においても優秀であり国内のみならず海外への進学も不可能ではないと言われるほどであった。
“特別指名推薦”の話が学校に来た時は誰もが相手を間違えているのではないかと疑ったほどであったが、零楼館高校関係者は工藤珠希で間違いないという。
工藤珠希と工藤太郎は血縁関係はなく、複雑な家庭環境であった工藤太郎が幼いころに両親を亡くしたこともあって彼は工藤家の養子として迎えられていた。
兄妹同然に育った二人ではあったが、お互いが相手の事を守ろうとする良き関係であり、恋人ではないがそれ以上に信頼しあっている。二人の関係性は苗字が同じという事もあって夫婦と揶揄されることも多々あったのだ。
工藤太郎は県外にあるスポーツ名門校からの推薦も来ていてほぼ内定していたのだが、工藤珠希が零楼館高校に入学することを決めたことを受けて彼も零楼館高校を受験することとなった。
スポーツ分野でも名をはせている零楼館高校に工藤太郎が入学すること自体は何の違和感もないのだが、本来入学する予定であった高校関係者は落胆の声をあげていたのだ。だが、彼の出自も相まって彼の意志を否定する者は誰もいなかったのである。
二人が入学する零楼館高校には外に出ていない秘密があるのだ。
零楼館高校に通う生徒のみならず、教員職員運営者の多くがサキュバスでありそのサキュバスも一般的に知られているサキュバスと違い女性を対象とした変異種なのである。
かつては“秘密の花園”と呼ばれた零楼館女子高等学校もそういった意味を持っていたのだった。
ちなみに、工藤珠希は工藤太郎の事を好きなのだが、それは誰にも言えない秘密なのである。
この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルアッププラス」「ノベルバ」「ノベルピア」にも掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる