プロポーズのあと

りょうた

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達郎①

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 「僕は死にましぇ~ん。僕はあなたが好きだから。50年後のあなたを、必ず愛し続けるから。」

 俺は、走るトラックの前に立ちはだかった。低速で走ってきたトラックの前に飛び出した。計算ずくだった。 

 薫は、感動して泣いた。  

 薫の妹から決め言葉は、聞いていた。死んだ薫の婚約者が、薫にプロポーズした言葉だ。

 こうして、俺は薫と婚約した。

 100回目のお見合い、相手は薫だった。腰まで伸び、ストレートで艶々した髪。翼のような長い睫毛。吸い込まれそうな、大きな瞳。薄く儚げな唇。モデルのような、二の腕、腰つき、小振りの胸が柔らかさを想像させる。首を斜めにかしげ、黒髪を右手でなでながら会話をする。声は弾んでいない。冷淡でボソボソっと話す姿が、俺を簡単に寄せ付けない感じがする。そう、「私は、安い女じゃないわよ」とオーラを感じる。全てが完璧だと思った。

 平成6年、俺は中堅の建設会社に務めていた。
 40歳を過ぎたサラリーマンだ。体は筋肉質だが背が低く猫背で、決して格好いいとは言えない。会社では係長で、朝7時には出勤し、夜10時には退社する。ワークライフバランスなんて考え方は無い時代だ。上司からは、辛い事ばかり言い付けられるが仕事だから仕方ない。いつか、幸せな家庭を持つことが俺の夢だ。

 100回目のお見合いは、上手くいかなかった。 薫から意図も簡単に断られた。  

 
 
 
 
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