政略結婚のはずが恋して拗れて離縁を申し出る話

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8.離縁しますよ?

 重なる唇は互いを求め、更に深くなった。急な婚姻だったため、父から無理強いしないことを固く約束させられていたそうだ。格上のアルノルト様に、なんてこと。だから僕の気持ちに寄り添ってくださり、あの夜、震えていた僕には何もしなかった、と。

 愛情ではあるのだろうが過保護な家族に呆れつつもありがたい気持ちになり、その約束を守ってくれたアルノルト様に対しても愛しさが募った。

「ぁ、……っん」

 どこか遠くから聞こえる啼き声は、自分で発したものだという自覚がない。知識だけの閨事は役に立たず、アルノルト様によってひらかれていった。
 肌を舌先で辿り、ぢゅうっと強く吸われる。はじめは何も感じていなかったのに、腕の付け根や腰骨のあたりを舐められると、ぞわぞわおかしなものが湧いてきた。

「そこ、ばかり……っ」

「ん、フィリーの好きな場所……もっと感じるようになろうね」

 しつこく指でも撫でさすられ、そこかしこを弄られた。まるで種を撒き、育てているかのように。僕の身体はアルノルト様によって変えられていく。
 キスをして見つめ合い、僕の中に恐怖心がないことを確かめながら、アルノルト様は事を進めていった。優しくゆっくり触れていき、躊躇う様子があれば声でそそのかす。だから僕は諾と頷くばかりだ。

 香油をまとわせた指で後孔に触れられ、傷つけたくないから任せてほしいと甘く告げられれば、恥ずかしさや申し訳なさなど些末のことのように思えて、コクコク頷くことしかできなかった。それから頭の中がおかしくなるほど受け入れるための準備とやらが続き、アルノルト様にしがみついて泣き始めた頃、後孔に指が三本入っている事実を告げられた。

「もう、いやぁ……さわ、らないでっ」

 身体がビクビク跳ねる場所を押してくる。そうやって極まりそうなところまで追い上げるのに決定的な刺激は与えてもらえず、僕から強請って腰が揺れてしまう。陰茎は触れられていない。けれど勃ち上がっているそれからは蜜が溢れていた。

「気持ちいいね……ほら、こんなにしがみついて離さない」

 ようやく後孔から指が引き抜かれたことに安心すればいいのか、物足りなさを訴えればいのか、僕にはもう判断することができなくなっていた。

(あつい……)

 腹の中も後ろの孔も。
 それから埋めていたものがなくなった喪失感。早く満たしてほしくなる。疼くそこに指とは違う、もっと大きなモノが当てがわれ、ぐっぐっと僕の中へ入ってきた。圧倒的な存在感のそれは、猛ったアルノルト様ご自身。

「――っ、ぁ、……あっ、はっ……っ」

「フィリー…っ 息、して」

 聞こえてきた声のとおりに息をして、『上手』と褒められながらキスを受ける。苦しさと圧迫感をやり過ごしながら身を押し進められるごとに僕は満たされていった。

「っ……あ、あっ、……アルノルト、さまぁ……っ」

 絡めた舌も、互いの指も、これまでの隙間を埋めるように求めた。ほっしていた熱を与えられ、僕はただ幸せだった。どうしてこれまで繋がらずにいられたのか不思議なくらいに。

『フィリベルト……フィリー』僕の名前を音にした声が、何度も愛を伝える。切っ先がナカを往復し、ゆっくり抽挿を繰り返しながら、二人の絶頂を促した。

「あっ、イっちゃう……っ」

 銀色の僕を欲しいと思ってくれたアルノルト様。出会いは単なる偶然。何がアルノルト様の琴線に触れたのかはわからない。けれど、僕だってそうだ。よく知りもしない金色に輝くあなたを、僕はいとしいと思っていた。

(僕を、見て――)

 どろりと欲望に蕩けた瞳が、僕を囚える。手を伸ばして僕はアルノルト様にしがみついた。 

 そうやって僕たちは一晩中互いを求め合い、気持ちを伝え合った。



 ――翌朝。
 これは違う意味で少し考えなくてはならない、と思案している。身体中に散らばっている愛された証があまりにも……。しばらく襟に高さのあるものしか着られないだろう。更には歩き方だっていつものようにはいかない。鈍痛が走り、ときおり動きが鈍くなる。ゆえに毎回このような状態では邸の者たちに示しがつかないし、何より僕の身体が保たない。

 アルノルト様のアルノルト様はたいへんご立派で、確かに僕からも求めたとはいえ、これでは色々と邸を取り仕切るにしても差し触る。

「アルノルト様、次からはその……ほどほどで、お願いいたします」

 掠れて聞き取りづらい僕の声。自分で言いながら説得力のないことを自覚している。

「善処しよう」

 僕が困ると伝えても、どこか嬉しそうな顔でアルノルト様は受け流そうとしていた。
 頬やこめかみ、耳殻へと、唇でなだめられる。名前を呼びながらそうやって甘えれば、僕がなんでも絆されるとわかっているから。ズルい。

 ダメです、ダメ。そこはちゃんとしてください。そうでないなら僕にだって考えはある。
アルノルト様にとって弱点ともいうべき唯一はどうやら僕のようなので、わかっていて試すようなことをする。

「お慕いしておりますが、程々にしていただけませんと、」

 また、離縁をお伝えしますよ?
 だから僕をずっとつかまえていて――




感想 2

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みんなの感想(2件)

たろじろさぶ
2024.12.29 たろじろさぶ

続きを読んでみたいです!

2024.12.30

続きのご希望をありがとうごさいます。そのようにおっしゃっていただけてとても嬉しいです。
番外編であればSSで書けるかもしれません。現在春庭原稿中ですぐとりかかることができないためお時間を頂戴することになりますが、検討してみたいと思います!

解除
しの
2024.08.03 しの

面白かったです!
フィリベルトの、一見お淑やかそうな雰囲気から想像できないような男らしい行動力笑
いきなりか!と心でツッコミしまいました。
行動力のある超箱入り息子ならではのご苦労がこれからもあるのでしょうね笑

2024.08.03

ご感想をありがとうございます!✨
シリアス<ギャグでいこう!と書き始めましたので、お楽しみいただけたようでほっとしました。周りからどのように評価されているのか箱入りゆえ自覚がないフィリベルトに、アルノルトがこれこらも振り回されていくことでしょう。無能ではないですから伴侶として評価は得られるでしょうし、これからも無自覚な人たらしゆえにアルノルトの心配がつきず。でもきっと「アルノルト様〜」と呼ばれて「護る」と誓うんです。といった感じでしょうか。
長くなりました。ご感想ありがとうございました!

解除

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