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第25話 地獄の公爵デビル•アース
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「……失念していました」
「えぇ、まさかこんな事態になるなんて」
全くだ。
あれから絶叫し続けて全力疾走。
ただ奥へ奥へと逃げ続けた俺達は……迷った。
それはもう取り返しがつかないくらいに迷った。
盛大に啖呵を切っておきながら、迷宮攻略において必須の浄化魔法の使い手を確保せず挑んだ。
これでは世界中に轟く感動的な英雄譚ではなく、むしろ歴史を揺るがす程の大馬鹿英雄譚だ。
「まぁとにかく、今更後悔しても遅いだろ。取り敢えず戻ろう。迷宮で闇雲に彷徨えば、それこそ死ぬ」
「ええそうね。迷宮は舐めてかかる場所ではないわ」
俺は重い足に喝を入れ、皆に声をかける。
迷宮において、判断ミスは命取りに直結する。常に迅速に状況理解をこなし、パーティー全員の健康状態及び精神をチェックし、常に最善の選択を行う。
神盟騎士隊にいた頃に、迷宮に関する特別講義を受講していたお陰で、こういう状況での対応策はしっかり頭に入っている。
「おお~、随分と勇ましいねルクシオ。なんか場慣れしてそうな雰囲気だ」
「まぁな。神盟騎士隊にいた頃にも一度だけ、迷宮に挑んだ事があったんだよ」
「ヘェ。じゃあその頃の経験が役立ってるのね。何かトラブルとか起きて克服した感じかしら?」
ネーレが中々鋭い事を問い掛けてきた。
俺は言おうか言うまいか少しの間逡巡し、やがて口を開いた。
「あの時は大変だった。何せ浄化魔法の使い手なしだったからな。しかも、その時のパーティーは皆、英雄や勇者が大好きなロマンチストな奴らだったから、意思だけが先行して体がついてこず、1ヶ月くらい迷宮で過ごしたよ。いや~、まじであの時は死ぬかと思ったよ」
「「「「…………」」」」
何故だろう?
後ろから冷めた視線を感じる。
俺は自然に後ろへと耳を傾ける。
「ねぇ、ルクシオってつまり、今回ので同じ失敗を二度もした訳?」
「……もしかして彼馬鹿なんじゃないの?」
「もしかしなくても大分ダメでしょうね。あれはもう度し難いわ」
「皆さん、流石に言い過ぎですよ。ほら?見て下さい。ルクシオ様が……」
フィアナの妙な気遣いのお陰で、より一層いたたまれなさに苛まれた。
「俺だってな……ッ!俺だってッ!」
「ん?ルクシオ、大丈夫ルクシオ?顔が真っ赤よ?」
「もしかして、泣いてる?」
「あらまぁ、ルクシオ様……可愛いですっ」
「またクレイジーノ食べたの?」
「お前らいい加減弄るのやめろよ!あとまたクレイジーノってなんなんだよいい加減に教えろよ!」
「「「それはルクシオ(様)が自殺するかもしれないから言えない」」」
「マジで何があったんだよぉぉぉぉ~ッ!」
この人達、最近俺の事おざなりな扱いをしてきている気がする。
と、まさに俺が感傷に浸っていた時だった。
「ほう、これはまた珍しい客人だな」
「「「「「ッ!」」」」」
目の前に忽然と、扉が現れた。
その扉は一人でに開き、中からは何者かの声が聞こえてきた。
俺とネーレとレインでさえも、一切の気配を感じる事が出来なかった。
やけに古びた、年月の重なりを感じる重厚な扉。扉が纏う、その先に果てがあるのかさえも知れぬ程の、深淵の如き魔力。
それらからも如実に理解できる。
この扉は、普通じゃない。
「久しぶりの客人だ。歓迎しようッ!」
そうして俺達は、扉の向こう側へと誘われた。
***
ほんの数秒だろうか。
白濁としていた意識を手繰り寄せ、目を開ければ、視界は真っ暗闇だった。
でも、気配で他のみんなも近くにいる事は分かる。
「おいみんな!大丈夫だったら返事してくれッ!」
「「「「私はここだよ~」」」」
うん。今の返事で全員の居場所が分かるならそもそも声かけてないからな。
中々どうしてポンコツな仲間だ。
俺は自分から探しに行くとことにして、少し動いた。
「ちょっと!誰よ私のお尻触ったのは!」
「キャァ!ちょっと急に動かないで!炙るわよッ!」
「そんな物騒なこと言わないで下さいって!」
「おい待てッ!尻と言ったか!一体誰の尻だそして感触はどうだったッ!!」
「まさしくプリケツと形容するに相応しい感触だったわね。小ぶりながら主張の強い反発が中々どうして癖になるわ」
「お前か私の尻触ったやつはッ!!」
どうやら俺達は完全に暗闇に囚われているらしく、陳腐な状況に陥っている。
というより待て。この暗闇に乗じてネーレみたいな事ができるなら、いっそこのままでも……。
「ふむ。やはり人間の慌てふためく姿は癖になる程甘美だな。特に唯一の男の思考は控えめに言っても下劣だな」
「ッ!誰だそこにいるのは!」
「よくぞ聞いた!」
途端、真っ暗闇の底に淡い青い炎が灯り、辺りを照らし始めた。
灯火の中央に浮かび上がる、台座に座る何者かの影。
「ようこそ我が根城へッ!我こそが、貴様らを誘いし者。【八雲】の一角にして地獄の公爵。デビル•アースである」
「「「「「デッ、デビル•アースッ!?」」」」」
それは、俺達の目の前に突如として現れた、古の悪魔デビル•アース。
かつての、古の大戦。神々、人族、悪魔族。
まだ数多の生命に隔たりのなかった神話の時代の、悪魔勢力筆頭格の集団【八雲】の一人であった者だった。
「えぇ、まさかこんな事態になるなんて」
全くだ。
あれから絶叫し続けて全力疾走。
ただ奥へ奥へと逃げ続けた俺達は……迷った。
それはもう取り返しがつかないくらいに迷った。
盛大に啖呵を切っておきながら、迷宮攻略において必須の浄化魔法の使い手を確保せず挑んだ。
これでは世界中に轟く感動的な英雄譚ではなく、むしろ歴史を揺るがす程の大馬鹿英雄譚だ。
「まぁとにかく、今更後悔しても遅いだろ。取り敢えず戻ろう。迷宮で闇雲に彷徨えば、それこそ死ぬ」
「ええそうね。迷宮は舐めてかかる場所ではないわ」
俺は重い足に喝を入れ、皆に声をかける。
迷宮において、判断ミスは命取りに直結する。常に迅速に状況理解をこなし、パーティー全員の健康状態及び精神をチェックし、常に最善の選択を行う。
神盟騎士隊にいた頃に、迷宮に関する特別講義を受講していたお陰で、こういう状況での対応策はしっかり頭に入っている。
「おお~、随分と勇ましいねルクシオ。なんか場慣れしてそうな雰囲気だ」
「まぁな。神盟騎士隊にいた頃にも一度だけ、迷宮に挑んだ事があったんだよ」
「ヘェ。じゃあその頃の経験が役立ってるのね。何かトラブルとか起きて克服した感じかしら?」
ネーレが中々鋭い事を問い掛けてきた。
俺は言おうか言うまいか少しの間逡巡し、やがて口を開いた。
「あの時は大変だった。何せ浄化魔法の使い手なしだったからな。しかも、その時のパーティーは皆、英雄や勇者が大好きなロマンチストな奴らだったから、意思だけが先行して体がついてこず、1ヶ月くらい迷宮で過ごしたよ。いや~、まじであの時は死ぬかと思ったよ」
「「「「…………」」」」
何故だろう?
後ろから冷めた視線を感じる。
俺は自然に後ろへと耳を傾ける。
「ねぇ、ルクシオってつまり、今回ので同じ失敗を二度もした訳?」
「……もしかして彼馬鹿なんじゃないの?」
「もしかしなくても大分ダメでしょうね。あれはもう度し難いわ」
「皆さん、流石に言い過ぎですよ。ほら?見て下さい。ルクシオ様が……」
フィアナの妙な気遣いのお陰で、より一層いたたまれなさに苛まれた。
「俺だってな……ッ!俺だってッ!」
「ん?ルクシオ、大丈夫ルクシオ?顔が真っ赤よ?」
「もしかして、泣いてる?」
「あらまぁ、ルクシオ様……可愛いですっ」
「またクレイジーノ食べたの?」
「お前らいい加減弄るのやめろよ!あとまたクレイジーノってなんなんだよいい加減に教えろよ!」
「「「それはルクシオ(様)が自殺するかもしれないから言えない」」」
「マジで何があったんだよぉぉぉぉ~ッ!」
この人達、最近俺の事おざなりな扱いをしてきている気がする。
と、まさに俺が感傷に浸っていた時だった。
「ほう、これはまた珍しい客人だな」
「「「「「ッ!」」」」」
目の前に忽然と、扉が現れた。
その扉は一人でに開き、中からは何者かの声が聞こえてきた。
俺とネーレとレインでさえも、一切の気配を感じる事が出来なかった。
やけに古びた、年月の重なりを感じる重厚な扉。扉が纏う、その先に果てがあるのかさえも知れぬ程の、深淵の如き魔力。
それらからも如実に理解できる。
この扉は、普通じゃない。
「久しぶりの客人だ。歓迎しようッ!」
そうして俺達は、扉の向こう側へと誘われた。
***
ほんの数秒だろうか。
白濁としていた意識を手繰り寄せ、目を開ければ、視界は真っ暗闇だった。
でも、気配で他のみんなも近くにいる事は分かる。
「おいみんな!大丈夫だったら返事してくれッ!」
「「「「私はここだよ~」」」」
うん。今の返事で全員の居場所が分かるならそもそも声かけてないからな。
中々どうしてポンコツな仲間だ。
俺は自分から探しに行くとことにして、少し動いた。
「ちょっと!誰よ私のお尻触ったのは!」
「キャァ!ちょっと急に動かないで!炙るわよッ!」
「そんな物騒なこと言わないで下さいって!」
「おい待てッ!尻と言ったか!一体誰の尻だそして感触はどうだったッ!!」
「まさしくプリケツと形容するに相応しい感触だったわね。小ぶりながら主張の強い反発が中々どうして癖になるわ」
「お前か私の尻触ったやつはッ!!」
どうやら俺達は完全に暗闇に囚われているらしく、陳腐な状況に陥っている。
というより待て。この暗闇に乗じてネーレみたいな事ができるなら、いっそこのままでも……。
「ふむ。やはり人間の慌てふためく姿は癖になる程甘美だな。特に唯一の男の思考は控えめに言っても下劣だな」
「ッ!誰だそこにいるのは!」
「よくぞ聞いた!」
途端、真っ暗闇の底に淡い青い炎が灯り、辺りを照らし始めた。
灯火の中央に浮かび上がる、台座に座る何者かの影。
「ようこそ我が根城へッ!我こそが、貴様らを誘いし者。【八雲】の一角にして地獄の公爵。デビル•アースである」
「「「「「デッ、デビル•アースッ!?」」」」」
それは、俺達の目の前に突如として現れた、古の悪魔デビル•アース。
かつての、古の大戦。神々、人族、悪魔族。
まだ数多の生命に隔たりのなかった神話の時代の、悪魔勢力筆頭格の集団【八雲】の一人であった者だった。
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